アシュリーさんが集落のコボルトを集めてきて、親睦会を行うことになった。既にカイアがドライアドであることを知っている為、老人たちは一様に笑顔だった。
知らない人たちに囲まれて、カイアは少し不安げに俺に抱きついている。
それを興味深げに見上げているコボルトの子どもがいた。服装からして男の子かな?
「一緒に遊ぼう!」
男の子が手を差し伸べる。カイアはコボルトの子どもの顔と、俺の顔を見比べた。
「遊びたかったら行っておいで。」
カイアは俺の腕からおりると、コボルトの子どもと手をつないで遊びに行った。
「今日は親睦も目的だけれど、私とジョージから提案があるのよ。
まずはみんなで料理をしましよう。私たちコボルトの料理と、ジョージの料理を一緒に作って楽しみましょう。
話はその後にするわ。」
アシュリーさんの言葉に、広場に集まってみんなで料理をすることになった。
カオパットネームの作り方を俺が教え、みんなで料理を始める。
アシュリーさんがコボルトの料理を俺に教えてくれる番になった。
「まずはキュプラスープを作りましょう。
これがなくては始まらないものね。」
大鍋に豆を大量に、小さく切ったその他の野菜を調味料を入れて、切ったベーコン(ラカン)と切らないソーセージ(テッセ)をそのまま入れて煮て、中身を潰している。
「ふむ、エルテンスープと、作り方が似ているな。」
「ジョージのところにも、似たような料理があるの?」
「材料と味付けが違うが、作り方はほぼ同じだな。」
「いいわね!
両方作って食べ比べしましょう!」
「構わんよ。」
俺はアシュリーの提案にうなずいた。
エルテンスープはオランダ料理だ。
普段はあまり作らないが、スープをオカズの1つに加えたい時に作る。
俺はこっそりと、冷凍のグリーンピース、じゃがいも、玉ねぎ、セロリ、にんじん、ローリエ、塩、コショウ、マッシャー、出汁こし布を出し、ベーコン(ラカン)の塊とソーセージ(テッセ)を分けて貰った。
じゃがいも、玉ねぎ、セロリ、にんじんとベーコン(ラカン)を1センチ角に切り、ベーコン(ラカン)と切らないままのソーセージ(テッセ)を出汁こし布に入れ、冷凍のグリーンピースと一緒に鍋に入れて、水とローリエと塩、コショウを加えて中火にかけ、沸騰したら弱火にして20分程煮込む。
一度出汁こし布ごと、ベーコン(ラカン)と切らないままのソーセージ(テッセ)を取り出して、ソーセージ(テッセ)を2センチ幅に切る。
本来そのまま入れるのだが、取り出す過程があるので、鰹節を入れる時に使う、出汁こし布に入れて出すようにしている。
鍋の中身をグリーンピースの粒が、ほぼなくなる程にマッシャーで潰し、出汁こし布から出したベーコン(ラカン)と、切ったソーセージ(テッセ)を戻し入れて、弱火にかけながら、よく混ざるように混ぜながら10分程煮込む。味をみて薄ければ塩コショウで整えて完成だ。
グリーンピースとじゃがいもが3に対し、玉ねぎとセロリとにんじんとベーコンとソーセージが1の割合の分量だ。ローリエは1枚程度、塩、コショウは適量。ドロっとしていて腹にたまる、優しい味わいのオカズになるスープだ。俺はグリーンピースそのままは嫌いだが、こうすれば食べられるのだ。
「なにそれ、便利ね!」
俺の出汁こし布を見てアシュリーが言う。
「キュプラスープも、料理の最中に取り出す過程があるから、これがあったほうが楽だろう。少し分けようか?」
「ええ!ぜひそうしてちょうだい!
これも売ったら良いと思うわ。」
俺は出汁こし布をアシュリーに分けた。
急に離れたところで子どもが大声で泣き出す声がして、ハッとして振り返ると、ほっぺから血が出ているコボルトの男の子が泣いていて、その横でカイアが泣いている。
「どうしたんだ?」
俺は慌てて駆け寄ると、泣いているカイアを抱き上げた。恐らくコボルトの男の子の母親と思わしき親御さんも駆け寄り、泣いているコボルトの男の子を抱き上げる。
「2人とも泣いてちゃ分からないぞ?」
泣いてなくてもカイアは話せないから、事情は分からないのだが。
それをさっきカイアを連れて行った、別のコボルトの男の子が、何か言いたそうにこちらを見上げていた。
「ええと……。君は……。」
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