「決まりね。ちなみにうちでも作ってるから持ってくるわ、少し待ってて。」
そう言ってアシュリーさんが持ってきたのは、どう見てもソーセージとハムとベーコンだった。ソーセージはこの地域でしか採れない香草を練り込んでいるらしい。
「私たちはあまり生肉にお目にかかる機会がないから、こうして保存する料理法が発展したのよ。たくさん手に入っても、そのままじゃあ保管出来ないしね。」
ちなみにコボルトの間では、ソーセージはテッセ、ハムはペシといい、ベーコンはラカンと言うらしい。
試しに焼いたものを持ってきてくれたのだが、ソーセージがまるでタイ料理のようだった。レモングラスとレッドカレー入りのソーセージを食べたことがあるが、それに似た感じだ。これは女性に人気が出そうだな。そこまで辛くもないし。
ヤバい、ビールが飲みたくなってきた。
「ふむ、これを使うなら、まずこれかな。」
俺はむきエビ12尾、玉ねぎ、にんにく、ネギ、卵、きゅうり、ライム、ナンプラー、シーズニングソース、ウェイパー、炊きたてのタイ米、サラダ油を出し、アシュリーさんからテッセを分けて貰った。
玉ねぎ1個とにんにく4つをみじん切りにし、油で中火で炒める。香りがしてきたら、一口大に切ったテッセ(ソーセージ)とむきエビを入れて炒め、むきエビに火が通ったら一度取り出して、強火にして溶き卵8個を入れ、すぐにご飯を入れて炒める。
ネギを適当な量みじん切りにし、加えて更に炒めたら、ナンプラーを大さじ4、シーズニングソース大さじ1と小さじ1、ウェイパーを小さじ2入れ、手早く炒めて、ご飯に卵が絡んできたら、むきエビを再度投入して炒める。
最後に皿に盛り付けて、むきエビは上に乗せ直し、スライスしたキュウリと、カットしたライムを添えて、カオパットネーム(ソーセージ入りタイ風チャーハン)の完成だ。
ちなみに分量は4人前の計算である。
豚肉の代わりにテッセ(ソーセージ)を使ったが、もちろん豚肉でもいいし、ご飯はタイ米を使ったが、本格的にしなくてもいいのなら日本の米でもいいし、お好みでパクチーを入れてもいい。ちなみに俺はパクチーはあったほうが絶対うまいと思う。
パクチーを加えるなら、ネギを加えたタイミングで、刻んだものを加えて炒めるのとは別に、飾りに盛り付けると見た目も綺麗だ。
俺は加熱しすぎていないパクチーが好きなので、普段は最後に山盛り乗せるが、人によって好き嫌いがあるので今回は省いた。
「どうぞ、食べてみてくれ。」
俺は皿に取り分けた、カオパットネームをテーブルに乗せた。
「初めて食べる料理ね……。
美味しそう!」
オンスリーさんもアシュリーさんを見習って、恐る恐るスプーンで口に運ぶ。
「……美味い!!」
「テッセはそのまま食べても美味しいけど、料理に使うとこんな風に変わるのね!
程よい辛味が癖になるわ!」
「カイアにはまだ辛いかな?
子どもでも食べられる味にしたつもりではあるんだが……。」
俺が食べさせるのを逡巡していると、カイアがしょんぼりした表情で俺を見てくる。
「食べてみるか?辛いかも知れないぞ?」
俺はカイアの年齢を学齢前くらいに感じているので、さすがに食べられないかなと思っていたのだが。
少しびっくりしたようだったが、時間をかければ食べられるようだったので良かった。
「いいわね、これ、店にも出したいわ。」
「おい、まだ決まったわけじゃ……。」
オンスリーさんが戸惑ったようにアシュリーさんを見る。
「みんなを呼んで一緒に作りましょう。
そして食べながら話をするのよ。
これを食べると食べないとでは、答えはきっと変わってくるわ。」
アシュリーさんはカオパットネームを食べ終わると、勢いよく椅子から立ち上がった。
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。