目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第31話 コボルト自家製ソーセージのカオパットネーム(ソーセージ入りタイ風チャーハン)①

「そういえば、先程集落の様子がおかしかったのですが、ひょっとして、俺が1人で尋ねて来たからなのでしょうか?」

 俺は気になっていたことをオンスリーさんに尋ねた。オンスリーさんはハッとした表情になったあとでうつむいた。


「はい……。アスターさんたちは、何度もこちらにいらしていますし、討伐した魔物を分けてくださることも多く、我々も信用していますが、それ以外の人間は、我らに害をなすものも多いのです。」

 そうだったのか。


「魔物の集落から金品を奪っても、罪に問われることはありません。

 我らは既に魔物ではありませんが、まだまだ偏見が根深く、集落を襲った人間に対し、役人がおめこぼしをするのです。

 それであのように……。

 大変申し訳ありませんでした。」


「いえ、そうした事情も知らず、1人で来てしまったこちらが悪いのです。

 気になさらないで下さい。」

 頭を下げるオンスリーさんに、頭をあげるよう促す。

 色々な事情のある場所なのだ、もう少し事前に調べておけば良かった。


 申し訳無さそうな俺を見て、オンスリーさんが恐縮する。

「ジョージ様は我らと同じく、ドライアド様の守護を持つお方。ドライアド様は純粋で心優しく、他人に危害を加えるつもりのない存在にしか、味方をしないものと言われております。今後ジョージ様を敵視するものは、この集落にはいないと言っていいでしょう。」


「そうなのか?カイア。」

 そう尋ねる俺に、不思議そうに首をかしげたあと、ニコーッとするカイア。

「名付けをされたのですね。」

 オンスリーさんが驚いた表情で俺を見る。

「何かまずかったですか?」


「──いえ、逆です。

 精霊や妖精は、生涯付き従うと決めた存在以外からの名付けを受け入れません。

 カイア様が名付けを受け入れていらっしゃるということは、ジョージ様を守護しつつ、ジョージ様の庇護下に入ったということにほかなりません。」


「ええと?つまりどういう……。」

「簡単に申しますと、ジョージ様の命ある限り、カイア様はジョージ様とともにあるということです。

 また、ジョージ様が生まれ変わったとしても、その魂を探して目の前に現れることでしょう。よほど気に入られたのですね。」


 オンスリーさんがニッコリする。

「精霊は古来より、信仰心と愛情を元に力を得ると言われております。この大きさでカイア様は既に力を使われた。

 ジョージ様がカイア様を大切にされているのが伝わっているのでしょう。」


「カイア……。」

 言葉が通じているのか、不安に思っていたが、気持ちはしっかり伝わっていたらしい。

 泣きそうになりながら微笑む俺に、キャッキャッと無邪気に笑うカイア。


「そういえば、人間がこちらに来るのが珍しく、来る場合、集落を襲撃する目的の人間の可能性が高いということは、みなさんあまり人間と交流されていらっしゃらないのでしょうか?冒険者ギルドからは、友好的な種族であると伺っていたのですが……。」


「はい、冒険者ギルドの方々とは、友好的に対応させていただいておりますが、それ以外の人間となりますと……。

 基本的にこの集落の中ですべてを完結しておりますので、人間の世界に買い出しに行くようなこともありませんで……。

 まれに冒険者組は、外で人間と交流がありますが。」


「そうなんですね……。」

 交流がないとなると、双方に誤解があるまま、それを解決する手段もないわけか。

「例えばなんですが、もし交流する機会があるとすれば、してみたいと思いますか?」

「と言いますと?」


 オンスリーさんは首をかしげる。

「人間と交流する第一歩を、踏み出してみるお気持ちはありますか?」

 オンスリーさんは明らかに逡巡した。

「若いものはそうした考えのものもいるようですが、我々はこの歳になりますと……。」


 まあ、そうだろうな。人間も、長年培った価値観を変えるのは難しい。

「もちろん、時間はかかると思います。

 ですが、集落を襲われても、役人が犯罪者の味方をするという状況は異常です。

 俺はそれに我慢がなりません。」


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?