カイアが俺の真似をしてカニを掴もうとしたが、上手にカニを掴むことが出来ず、ハサミに枝を挟まれて、びっくりして泣いて逃げてくる。枝は切れてはいなかった。
まあ枝だからなあ、あんな小さいものを挟んで持ち上げるのは難しいかも知れない。俺は笑いながらカイアをなぐさめた。
「よしよし、痛かったな。もう大丈夫だからな。カイアをいじめるような、悪いことするカニさんは、後で食っちまおう。」
ひとしきりカイアと遊んだので、昼飯にすることにした。昼飯はバーベキューにするつもりだ。
アスターさんたちとキャンプ料理を楽しんでいる最中、カイアにも食べさせたいなあ、とずっと思っていたのだ。
バーベキューセットを出して準備をする。
やっぱり海だからな。海の幸は欲しいな。
俺は炭火を網の片側だけに置き、高温ゾーンと低温ゾーンを作った。
こうすると、食材に火が通り過ぎそうになった時に、急いで低温ゾーンに逃がすことが出来、初心者でもバーベキューで上手に食材を焼くことが出来る。
中級者以上になると、真ん中だけ間をあけたりと、様々な炭の組み方があり、バーベキューはなかなか奥の深い料理法だ。
水を出して手を洗い、カイアにも手を洗わせ、切った野菜や肉を金串に刺していく。
カイアも真似して刺していくが、力が弱いのか、なかなか串一本を作るのが難しいようだった。
ようやく一本作れて、嬉しそうに俺に見せてくるので、俺も嬉しくなって笑った。
新鮮なホタテをと牡蠣を出す。牡蠣はそのまま焼く。ホタテは新鮮なもの程しっかり身を閉じて焼いても開かなくなるので、ホタテを焼きすぎて固くしない為に、まずは上下ともにナイフで殻から外してやる。
食べられないので、ウロと呼ばれる黒い部分を取り外して捨てる。
ふふふ、楽しみだ。
「カイア、あんまり近付かないほうがいいぞ、熱いのが弾けて飛んでくることがあるからな。ほら、こっちに来なさい。」
俺が手招きすると、椅子に座る俺の隣の椅子の上に、チョコンと素直に座った。
殻付きのまま焼いた牡蠣にまず火が通る。
耐熱グローブを出して手にはめ、牡蠣にナイフを入れ、刃をくるっと回して牡蠣の蓋をこじ開ける。
刃の分厚いものを使うのがコツだ。
貝柱をナイフで切断し、殻に入れたまま、牡蠣にポン酢を出して垂らしてやる。
俺はそのまま食べるが、カイアには小さく食べやすい大きさに切ってやった。
「ほら、熱いからフーフーしてから食べるんだぞ。」
俺は息を吹きかけて、少し冷ましてやってから、カイアの口に牡蠣を近付ける。
牡蠣を食べると、パアアッと笑顔になる。
「うんうん、美味しいな。
生もいいけど焼きもいいな。」
2人してニコニコ焼き牡蠣を食べる。
ホタテをひっくり返しながら、貝殻の上で焼いてやる。エラは加熱したのでそのまま食べることにした。生の場合俺は捨てるが、食べる人もいる。
調味料は入れると焦げるので、加熱中は入れない。そもそもホタテから旨味がしっかり出るので、調味料はおまけ程度だ。
手早く皿に取り、バターを出して一欠片乗せ、醤油を垂らして余熱で温める。
中に火が通りすぎず、生なくらいが新鮮なホタテを焼く場合は丁度いい。肉厚でプリップリ。ああ……既によだれが……。
ガブリと噛みつく。歯に熱が伝わり少し熱い気もするが、うまい!たまらん!
カイアにも切ったものを渡してやり、一口目をフーフーして食べさせる。
カイアは安心して食べられるのが分かり、出してやったフォークで、残りをつついて口に運んでいた。
カイアが俺の取った、砂の上に置かれたバケツに入った、たくさんの小さなカニを見ると、俺の顔と見比べる。
「ん?これは今日は食べないぞ。一晩綺麗な水につけて、体内の排泄物を取り除いてからじゃないと、美味しくないからな。
なんだ、食べたくなっちゃったのか?」
俺は笑った。
ビールを出して流し込む。
やっぱりビールは、暑っつい中!昼間!外で!汗をダラダラ流しながら飲むのが、一番最高だよなあ!
まだ夏本番という気温ではないが、じゅうぶんに汗をかく程度には海は暑かった。
串に刺した肉と野菜にも火が通ったので、串から外しながら食べていく。