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第28話 昆布茶と白ネギの中華スープと、デザートの焼きバナナのハチミツとマスカルポーネチーズ乗せ③

 木皿に適当な量をスプーンで切り取って、各自に渡していく。

「あったかくて美味しい……!

 こんなお菓子があるのね!」

「美味いもの、温かいもの、甘いもの、どれも心が安らぐな……。

 本当にありがとう、ジョージ。」

 みんなの喜ぶ顔が安堵に変わる。俺はにっこりと笑った。


「アシュリーさん、ちなみに、ゴーレムは一度出したら、どのくらい持ちますか?」

「魔力を使い果たすか、出した人が消さない限りは、3日は出たままになるわよ?」

「じゃあ、今日はゴーレムに見張らせて、全員ゆっくり休みましょう。まだゴーレムの魔宝石はありますから。」


「いったいいくつ買ったんだい?」

「君には本当に驚かされるな、ジョージ。」

 ザキさん、インダーさんが、驚いて俺を見てくる。

「せっかくのジョージの提案だ、明日に備えてゆっくり休もう。」

 アスターさんの一言で、全員寝袋を用意して休むことにした。


 全員で空を見上げる。光がないから、とてもきれいに星が見える。

「おっ、流れ星だ。」

「明日になったら、無事に森を抜けれますように。」

 マジオさんが流れ星に願いをかける。この世界でもその習慣があるんだな。


「魔物が近付いてきたら起こしてくれ。」

 俺はゴーレムにそう命令して、寝袋に入って目を閉じた。

 疲れていたのだろう、横になった瞬間寝てしまったらしい。気が付いたら朝になっていて、少し肌寒かった。


「見て!普通の森の入口よ!」

 アシュリーさんが指差す先には、確かに昨日薄暗い森に入る前の、普通の木の少ない森が見える。こんなに入り口のすぐ近くで寝ていたのに、出口が分からなかったのか。やはり森に惑わされていたらしい。


 急いで寝袋をしまい、森を抜けて、コボルトの集落へと向かった。

「やった……!助かった……!」

 集落の入り口が見えて、マジオさんが思わず、バンザイのようなポーズをする。

 みんなホッとした表情になった。


「私はこのまま冒険者ギルドに行って、ことの詳細を報告するわ。」

 アシュリーさんがコボルトの集落の入り口の前で言う。

「俺たちは事前調査の依頼をしてきた、冒険者ギルドに報告に行くよ。」

 アスターさんがそう言った。


「じゃあ、ここでお別れね。」

「色々とありがとうございました。」

「とんでもないわジョージ、こちらこそよ。

 本当に色々とありがとう。」

 アシュリーさんに御礼を言うと、アシュリーさんがそう言った。


 俺たちは再び乗り合い馬車に揺られて、元来た道を戻った。

「冒険者ギルドへの報告は、俺たちがしておくから、ジョージは先に帰ってくれ。

 色々やってくれて疲れたろう。」

 アスターさんがそう言ってくれ、他のみんなもそれにうなずいた。


「そうさせてもらおうかな。」

 カイアのことも心配だしな。

「弁当うまかったぜ。」

「本当に助かったよ、またよろしくな。」

「あんなに怖い思いをしたのに、心が折れなかったのは、ジョージのおかげだよ。」

 ザキさん、インダーさん、マジオさんがそう言ってくれる。


 乗合馬車を降りたところで、俺たちは手を振って別れた。

 俺はすぐさま家へと向かった。

 ドアを開けた途端、俺は突然飛び出して来た何かにぶつかられた。

「──!?」


 それは飛びついてきたカイアだった。

 ボロボロに泣いている。

 弁当はしっかり食べてあったが、俺を探して家中歩き回ったのか、床にも階段にも、あちこちにしずくがたれている。この分だと恐らく2階にもあるのだろう。


 1人のお泊りが怖かったのだろうか。それとも俺に捨てられたとでも思ったのか。

 カイアはまだ小さい子どもなのだ。魔物だけれど、──とても純粋な。

 俺がいなければひとりぼっちなのだ。

 俺は胸が締め付けられた。


「──ごめんなカイア、怖かったな。

 もう1人になんて、絶対しないから。」

 俺はカイアを抱き上げて、俺にしがみついてくる細い木の枝を、折ってしまわないように、そっと抱きしめてやると、はじめてカイアが小さく、ピョル……と鳴いた。

 その小さな小さな鳴き声が、俺は愛おしくてたまらなくなった。

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