「ちょっと確認したいんだが……。
姿隠しの魔宝石は、1人ひとつずつしか使えないのか?
というか、使ったらお互いの姿が見えなくなったりだとか、他の人と会話は出来なくなるのかな?」
「もちろん出来るわ。魔法の有効範囲内で、誰か1人が魔宝石を使えばいいのよ。
そうすれば、お互いの姿が見えるわ。
さっきの店員は説明しなかったけど、姿隠しの魔宝石にかかっている精霊魔法は、コンシール・セルフと言って、隠匿魔法よ。
姿、音、匂いが消せるの。ただし存在してるから、触れられたら気付かれるわ。」
「じゃあ、とりあえずそれを使って、作戦会議をしよう。話はそれからだ。」
「よし。俺が使おう。」
俺の言葉に、アスターさんが魔宝石を取り出す。
「対象者を頭に思い浮かべてね、そうしないと近くに魔物が居た場合、巻き込まれて一緒に魔法がかかってしまうわ。」
「了解だ。」
アスターさんの発動させた魔宝石が光る。
「……これで本当に気付かれないのか?」
こちらを見ている魔物たちに恐怖を感じたインダーさんが、アシュリーさんに尋ねる。
「ちゃんとかかっているわ、大丈夫よ。
それで、どうするの?」
「姿隠しの魔法は、触れると気付かれるのであれば、このままじゃ、あの密集している魔物の間を抜けるのは難しいだろう。
俺はさっき、ゴーレムの魔宝石を買ったんだ。そいつに気を引かせて、集まっている隙に間を抜けるのはどうだろう?
万が一追ってきたら、めくらましの魔宝石もあることだし。」
「買ったのか!?あの高っかいやつを?」
「普段1人だから、万が一に備えてな……。
俺のアイデアはこうだが、他にアイデアのある人はいるかな?」
みんなシンとしてしまう。
「私は良いと思うわ、ジョージの案。
ゴーレムは命令をきくし、うまくやってくれる筈。」
「そうだな……。いくらそこまで強くない魔物ばかりとはいえ、数が多すぎる。
デバフで防御を下げないと、攻撃の通らない魔物も多い。
全部倒す前にマジオの魔力が尽きる可能性が高い。戦闘は避けたほうが良いと思う。」
インダーさんが魔法使いならではの意見を言ってくる。
「よし。ジョージの案を採用しよう。
このまま姿を隠して、ゴーレムに気を引いてもらい、その隙に俺たちが魔物の間をぬって逃げる。万が一体が触れて気付かれたら、めくらましの魔宝石を使う。しんがりは俺がつとめる。──いこう。」
俺たちはこっくりとうなずいた。
「投げるぞ。」
俺はゴーレムの魔宝石を中央に向かって投げた。地面に触れた魔宝石が、モコモコと膨らんだかと思うと、一気に人型の石のゴーレムへと変化する。
それに気付いた魔物たちが、一斉にゴーレムへと集まりだした。
「今だ!逃げるぞ!」
アスターさんの掛け声で、全員一斉に走り出す。
「あっ!!」
つまづいたアシュリーさんを、倒れる前に駆け寄り、慌てて後ろから抱き起こす。
「あ、ありがとう。」
「気を付けて。急ごう。」
アシュリーさんが倒れた隙にぶつかったのか、何体かの魔物がこちらに向かってくる。
「くらえ!」
アスターさんがめくらましの魔宝石を、走りながら後ろに向かって投げつける。
まっすぐな道で良かった。俺たちはひたすら走り、ようやく洞窟の外に出た。
俺はもう1つ、ゴーレムの魔宝石を地面に投げた。
「入り口を塞いでくれ!」
俺の命令に、ゴーレムが、洞窟の近くにあった巨大な岩を持ち上げて、入り口の前に置いて入り口を塞ぐ。
「お前さん、いったいいくつ買ったんだ、ゴーレムの魔宝石。」
「まあ、ちょっとな。」
「いや、おかげで助かった。」
アスターさんが御礼を言ってくる。それでも少しでも早く、洞窟から遠ざかりたかった俺たちは、急いで森の中を走った。
「ダメ……、もう走れないわ……。」
「俺もだ……。」
「ちょっと休ませてくれ……。」
アシュリーさんとマジオさんとインダーさんがへばってしまった。近距離職と違って、体力があまりないのだろう。
「そうだな、ここまでくれば、もう大丈夫だろう。ゆっくり進もう。」
ザキさんがそう言い、水を飲んで少し休憩してから、再びコボルトの集落へ向かって歩き出した。