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第26話 たまには料理しないこともある。③

「もちろん安全第一だ。アシュリーもいることだしな。美人に怪我はさせられん。」

 そういうアスターさんに、皆がウンウンとうなずき、アシュリーさんとララさんがクスッと笑った。

 獣人と人だということを忘れてしまうくらい、和やかな関係を築いているらしい。


 というか、いいな、魔宝石。これがあれば俺も魔法が使えるようになるのか。

 万が一の時に幾つか用意しておきたい。今度調べてみるか。

「ちなみにこれは、どこかで買えたりするのか?」


「魔法雑貨屋で売ってるぜ。レベルの高いものは注文になるがな。冒険者ギルドでも一部取り扱いがある。」

「属性付与魔法の魔宝石なんかは、剣士が使ってることが多いよね。ただ消耗品だから、長い目で見たら、結局武器に直接属性付与したほうが安いんだけどさ。」

 ザキさんとマジオさんが教えてくれる。


「大半の冒険者は、この目くらましの魔宝石か、足止めの攻撃魔法が込められた魔宝石くらいかな。使ってるの。」

 インダーさんがそう言う。

 確かにそれは俺も欲しいな……。


「この集落にもあるなら、買っていきたいんですが、魔法雑貨店はありますか?」

 俺はララさんに訪ねた。

「ここは精霊魔法使いしかいないので、人間の町のような魔法雑貨店はないんですよね。精霊魔法が込められたものならあるんですけど。」


「ちなみにどんなものですか?」

「行ってみたほうが早いんじゃない?

 案内するわ。」

 アシュリーさんの言葉に、みんなが付き合ってくれることになり、俺はコボルトの集落の魔法雑貨店に立ち寄ることにした。


「はい、いらっしゃい……。」

 コボルトの町の魔法雑貨店の従業員は、犬(?)の良さそうな、シュナウザーのような見た目のコボルトだった。

「魔法石を見せて欲しいんですが、どのようなものがありますか?冒険者が使うものがいいんですが……。」


「ああ……。それなら……。

 これなんかどうです。

 姿隠しの魔宝石です。姿と匂いを隠してくれる精霊魔法が込められています。

 こちらは照明の魔宝石です。1時間の間、半径10メートルを照らしてくれます。

 あとこれなんか……。

 ちょっと値ははりますがね。代わりに戦ってくれるゴーレムが出てきます。」


「おいくらですか?」

「姿隠しが銀貨50枚、照明が銀貨10枚、ゴーレムが中金貨1枚です。」

 ゴーレムは10万か……。

 お高いけど、それなりに仕事をしてくれるということだろうか。

 1人で戦うことが多いから、万が一を考えると、持っていたほうがいいかも知れない。


「いいな、姿隠しと照明をもらおう。」

「俺もだ。」

「俺も。10個ずつくれ。」

 みんなが次々に姿隠しと照明の魔宝石を求める中、俺は姿隠しと照明の魔宝石の他に、こっそりと、ゴーレムの魔宝石も5つ購入した。まあ、お金はあるし。


「まいど。」

 そう言って笑ったのは、店員ではなくアシュリーさんだった。

「アシュリーさんがこれを?」

「一部卸してるわ。」

 なるほど。それでか。


 だがそれを魔宝石に込められるということは、アシュリーさんはかなり強い精霊魔法使いということになる。

 一緒に来てくれるのは頼もしいな。

 俺たちは買い物を済ませると、早速森の奥へと事前調査に向かった。


「このあたりはまだ普通なのよね……。

 問題はここから先なの。」

 急にトレントが現れた時のように、木々が重なり合うように生えて、森が薄暗くなる。更にその奥へと進んでいくと、突如として切り立った崖の真下に、洞穴のような場所が口を開けているのが見えた。


「以前はこんな場所、なかったのよ……。

 なのに、こんなものが出来ていて……。

 まだ誰も入ったことはないけど、おそらくここから魔物が現れているんじゃないかと思うの。」

 周囲の光という光が、すべて吸い込まれるかのような暗闇が、俺たちを待ち構えていたのだった。


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