明かりも寝袋も火を付ける道具も、この世界のものを用意しないとだよなあ……。
みんなと違うものを1人持っていては目立ち過ぎる。
1人離れたところに行かれればいいが、魔物の脅威を考えると、そんなわけにもいかないしな。
夜は特に魔物が凶暴化するという。
まあおそらくは、交代で火の番をすることになるだろうから、そもそもまともに寝られるか分からないが……。
虫除けだけは、現代のをこっそりふりかけよう。
「へい、らっしゃい。」
八百屋のような威勢のいい掛け声で、雑貨屋の店員が出迎えてくれる。
冒険者ギルドに近く、荒くれ者を相手にしているからなんだろうか。
雑貨屋の店員にしては、妙にガタイがいいうえに強面だ。
「冒険者をやっているのですが、泊まりでクエストに向かう人用のセットなんてありますか?泊まりが初めてでして……。」
ものは試しに聞いてみる。
「ああ、ございますよ、最近需要が多くて、あちらにひとまとめにしてあります。」
なるほど、冒険者ギルドから依頼された人たちが、買い求めに来ているらしい。
寝袋、ランタン、ランタンオイルの入った革袋、火打ち石と火打金、火口、付け木、水を入れる革袋がセットになっている。
残りは自前を持っていくか。鉄のフライパンと、木と陶器の食器は、そこまでこの世界のものと違わないしな。
「小金貨1枚になります。」
多分大半はランタンと寝袋の金額なんだろうな。普段はマグネシウムタイプを使っているから、うまく火がつくか不安だが。
寝袋は別途防水仕様のカバーがついていて簡単に折り畳める。現代の価格で言っても、そんなに高くない。
何よりカバーが別にあるところがいい。
寝袋自体を防水にしても、縫い目の穴からだとか、結構浸水してくるし、朝起きると濡れていることがある。
そこでカバーだ。防水のカバーをつけることで、寝袋が濡れるのを防いでくれるし、寝袋自体が重くなるのも防いでくれる。
これがあるということは、きっと冒険者だけでなく、旅人が使うことも多いのだろう。俺はそれを買い求めて家に戻ることにした。
とりあえず、今日の食事と弁当の準備だな。それと、家にいない間のカイアの食事をどうしようか。
動けるから用意しておけば食べると思うし、最悪樹木なのだから、土と水と光合成でも生きられる筈ではあるが……。
冷蔵庫を開けて取り出すとか、そんなことがあの細い枝の腕で出来るとも思えないし、外に出しておいても平気なものにする必要があるが、保冷剤を使っても、せいぜいもって一日。
保存食料そのままならいざしらず、調理したものが次の日までもつとは思えない。
2食分だけ俺と同じ食事にして、あとは携帯食料にするしかないか……。
俺はそう考えて、弁当のメニューを考えることにした。
まずは常備菜にしてる、切り干し大根の煮物は必須だな。長持ちするし。
同じく常備菜にしてる、しぐれ煮は入れるとして、唐揚げは絶対に欲しい。
とんかつでカツサンドを作るのもいいな。
温かいものが食べたいけれど、この世界のものを使って、温かな汁物を運ぶ手段がないから、今回は諦めよう。
根菜が欲しいから長芋と蓮根にチーズを乗せて焼くか。
色合いが茶色くなるから、赤と緑が欲しいな……。菜の花の辛子和えと、ピーマンのおかか白ごま和えでも作るか。
エノキとアスパラと人参の豚肉巻きも入れて、あとはプチトマトだな。卵焼きの黄色も欲しいけど、流石に昼飯が限界だよな……。夜の分はかぼちゃのサラダにでもするかな。それだけ食っちまう可能性があるから、作る量に気をつけないとだが。
揚げ物と揚げ物になるし、パンが油を吸うから、昼をカツサンドにして、夜を唐揚げにして……。
夜は見た目がきれいな炊き込みご飯を、おにぎりにでもするか。
以前作った料理以外の材料は、蓮根、長芋、ピーマン、かぼちゃ、ドライパセリを出して、玉ねぎ、白いりごま、鰹節、マヨネーズ、塩、コショウ、オリーブオイル、ごま油、スライスチーズを用意した。
蓮根を1cm弱の幅に切って、5分ほど水にさらしておく。