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第22話 オーク肉(豚肉)の冷しゃぶと温しゃぶ④

 あまったレタスの芯を自分用に茹でる。お客が来る前に腹ごしらえをしとかないとな。既に茹でてあるオーク肉と一緒に、アツアツのご飯を出して、ツケダレにつけて一気にかき込む。


 やっぱりレタスの温しゃぶは芯の部分が一番ウマイ……!

 俺がたまに発作的に食べたくなる料理の1つがレタスと豚肉の温しゃぶだ。こいつを食べる時は、ついついご飯を400グラムも食べてしまう。


 普段ならレタスを先に茹でるのだが、後茹でも豚の旨味を吸ってまたうまいな。

 ガツガツとかっ食らう。温しゃぶはレタスの割合が多いほうが俺は好きだ。

 レタスが肉より高いことがあるので、たまにしか出来ないが。


 ふう……。大満足だ。

 ふと顔をあげると、店の外から大勢の人が覗いているのが見える。

 しまった、早く店を開けなくては。

 手早く片付けて扉を開けた。


「お待たせしました、いらっしゃいませ。」

 ドヤドヤと大勢のお客が一気になだれ込む。

「あれ?ナナリーさんは?」

「すみません、今日は俺が代わりなんです。それと、今日は料理が一種類のみでして。」


「そうなんだ、じゃあ、それを頼むよ。」「パンとライスどちらにしますか?」

「ライス?」

「穀物の一種ですね、腹にたまりますし美味しいですよ。」


「じゃあ、俺はそれにしてみようかな。」

「俺はパンで頼む。」

「かしこまりました。」

 次々と注文が入り、俺は盛り付けした皿をテーブルに運んでいく。


 米をテーブルに置くと、それを見たお客がウッという表情になる。

「バイルダー……?」

 バイルダー?

 目の前にない食材やレシピは、パッと情報が出てこない。探し方はあるのだが、時間がかかるので普段やらないのだ。


「どうかなさいましたか?」

「いや……、これ、穀物って言ったよな?

 小麦粉とか、……そういうのと同じなんだよな?」

「はい、そうですね?」

「そうか……。」

 なぜそんなに恐れている風なのだろうか?


 意を決して、という表情で、オークの豚しゃぶとともに米を口に運ぶ。

 モソモソと噛んでいたが、

「……うまい!」

 それを見た、同じくライスを注文していた客が、安心したように口に運んだ途端、一斉にガツガツと食べだす。


「ライス、うまそうだな、俺もそれにしてみようかな。」

「こっちもライスに変更してくれ!」

 飛ぶように米が売れる。

 やっぱり豚しゃぶは、パンよりもアツアツの米だよなあ。

 米のうまさを知って貰えて俺も嬉しい。


 外から見える、他の客の食べる勢いの凄さに興味を惹かれたのだろう、あとからあとから店に客が入ってきて、ひっきりなしだ。

 洗い物をしている暇がなく、皿が足りなくなってくる。


「どうかね?店の様子は。」

 そこにヴァッシュさんが降りてきた。

「──目が回りそうです。」

「大変そうだな、皿洗いを手伝おう。」

「助かります!」

 俺たちは2人で必死に店を回した。


「ええ?昼はもうおしまいかい?」

「すみません、今日は材料がなくて……。」

 別に出せばいいのだが、給仕をしながらでは、とても作っている時間が足らない。

 準備中の札にひっくり返して、最後のお客を見送ると、どっと疲れがわいてきた。


「助かりました、ヴァッシュさん。」

「なんの、こちらこそだ。

 孫娘の為に本当にありがとう。

 ナナリーの状態も良さそうだ。

 今日は大事をとらせるが、明日には元気になっとると思うよ。」


「ナナリーさんはこれを毎日お1人でやられてるんですよね、……本当に頭が下がりますよ。」

 そう言って笑う。そこにナナリーさんが2階から降りてきた。

「あの……大丈夫ですか?」


「ナナリーさんこそ、まだ寝てらしたほうがいいですよ。

 無理なさらないで下さい。

 お金の計算は間違ってないと思いますし、損も出てないと思いますが、あとで確認してみてください。」


「本当に、何からなにまで……。」

 ナナリーさんが嬉しそうに微笑む。

「お客様も喜んでくれましたし、問題なかったと思います。」

 そんな俺達を見て、ヴァッシュさんは、ほんにおしいのう……。と言った。

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