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第22話 オーク肉(豚肉)の冷しゃぶと温しゃぶ②

「はい、ぜひお願いします。」

「お前さんならすぐに引き取りに来るだろうと思ってな。既に準備してあるよ。」

 そう言って、ヴァッシュさんは工房の奥からオリハルコン銃と、属性付与済みのオリハルコン弾を出して来た。

 オリハルコン銃があるので、今までのものよりオリハルコンの使用量が多い。


「ありがとうございます。」

 俺はカウンターでオリハルコン銃の残金と弾の代金、そして盾の内金として中白金貨10枚を支払った。会計を担当してくれたのは最初に会った職人だったが、俺がオリハルコンの盾を依頼することに、もう違和感はないようだった。


「昼飯は食ったか?」

「いえ、まだです。」

「ちょっと早いが、銃を手に入れたお祝いをかねてナナリーの店で食わんかね。」

「いいですね。」

 俺たちはそろってナナリーさんの店へと向かった。


「おや……?おかしいな。まだ準備中になっているぞ?」

 普段ならもう営業しとる時間なんだが、と言って、ヴァッシュさんは首をかしげる。

 ドアを押すと鍵があいていた。

「おーい、ナナリー?」


 ヴァッシュさんが店に入っていく。

「おい、どうしたナナリー!?」

 慌てたようなヴァッシュさんの声が店内から響いて、俺も慌てて店内に入った。

 ナナリーさんはカウンターに突っ伏してぐったりしていた。


「体温が少し高いようですね……。高熱というほどではないですが。」

 俺は額に手をあてて熱を測った。おまけにこの暑いのに汗をかいていない。

「熱中症かも知れませんね。」

「熱中症?なんだそれは。」


 この世界の人は熱中症を知らないのか。

「暑かったり、気温がそこまででなくとも湿度が高かったりすると、室内でもなることのある病気です。

 汗をかき過ぎたり、逆にかけなくなることがあるんですよ。」


 俺がそう言うと、ヴァッシュさんは心配そうにナナリーさんの背中をさすった。

「どこかで横にならせることは出来ますか?俺はその間に、症状を軽く出来る飲み物を作ります。

 それを飲んで駄目そうなら、お医者様に見せましょう。」


「2階が住居になっとる。

 そこに運ぼう。」

 ヴァッシュさんはそう言って、店の奥の扉を開けた。奥が2階に上がる階段になっている。

 ヴァッシュさんがナナリーさんを抱えて2階に上がっていった。


「ちょうどいい、湯冷ましがある。」

 俺はナナリーさんが火にかけていて、止めたらしき鍋を見た。常温の水でもいいが、この方が溶けやすい。

 俺は水1リットルに対し、砂糖30グラム、塩3グラム、市販のレモン果汁を出して、レモン汁を大さじ1入れて混ぜ合わせた。


 砂糖は水や塩を吸収しやすくするためのもので、1リットルに対し、20~40グラムほど入れる。

 レモンやグレープフルーツを入れると飲みやすくなり、カリウムの補給にもなるので入れているが、なくてもいい。


 氷を張ったボウルに、別のボウルを置いて鍋の中身を移し、少し冷やして簡易経口補水液の完成だ。

 給仕用の水差しに経口補水液を移し、グラスと共にお盆にのせて、俺は2階へと上がった。


 ナナリーさんはベッドでぐったりしていた。

「これを飲ませてあげて下さい。」

 ヴァッシュさんがナナリーさんの体をおこす。

「ナナリー、飲めるか?」

 俺が口元にグラスに注いだ経口補水液をあてがうと、少しずつだが飲み始めた。


 そしてだんだん勢いよく、ゴッゴッゴッと飲み始める。おかわりを要求されて渡す。

「美味しい……なにこれ。」

「ナナリー!」

「それが美味しく感じるということは、体調が悪いということですよ。」


 俺が部屋にいることにようやく気がついたらしい。ナナリーさんがハッとして真っ赤になる。

 そういえば緊急事態かつ、お身内がそばにいたとはいえ、女性の部屋に気軽に入ってしまったのだ。申し訳なかったな。


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