……それじゃ意味がないな。
「例えばどんな魔物だと防げないですか?
マンドラゴラ、ミノタウロス、クラーケンだと、何が必要になるでしょう。」
俺はもう1度食べたいと思っていた魔物の名前を上げた。
「Sランクでも、マンドラゴラなんかは魔法攻撃しかしてこねえんで、ミスリルで事足りますがね。
Aランクでもミノタウロスだけは、物理中心かつ強化魔法を使うんで、アダマンタイト以上がないとちょっと危ないんでさ。」
「クラーケンはどうですか?」
「あれこそ魔法と物理の両方ですぜ。オリハルコンじゃなきゃ、まあ無理でしょうな。
パーティーに耐性付与や防具の防御力を上げられる魔法使いでもいれば、別に関係ねえですがね。」
近接職だけのパーティー、または俺1人なら耐性付与の防具が必須ということか。
「武器も同じでしょうか?」
「マンドラゴラは魔法さえ防げれば、時間はかかっても普通の武器でも倒せますがね。その魔法が問題なんで。」
「というと?」
「1体でいることがないのと、混乱と発狂と暗黒の魔法を使いますんで、目が見えない状態で、いきなりパーティーメンバーに襲われたりします。解除出来る魔法使い必須でさあね。」
なんと。それは俺にはどうしようもないな……。ミノタウロスは問題なさそうだが……。
こればっかりは、どこかのパーティに入れて貰うしかないかも知れない。
「クラーケンはどんな魔法を?」
「水の広域魔法ですがね、それより属性耐性が高くて物理攻撃が効きにくくて、倒しにくいんで。雷属性付与のオリハルコン武器がないとキツイでしょうな。」
同じSランクでも、色々と違うんだな。相手について詳しく知らずに立ち向かうのは相当危険というわけだ。
「ところで、盾にのぞき穴のあるものはありませんか?それと、立てておけるような支えが底についてるとなおいいんですが。」
前回のワイバーン退治の際は、大きな盾を肩で支えながらライフルを使っていたから、非常に狩りづらかったのだ。覗き穴がないから音しか頼りになるものもない。出来れば立てておけて、覗き穴からライフルを出して待ち伏せが出来れば最高なんだが。
「そんなものを求める人は聞いたことがありやせんが、まあ、注文すればどんなものでも作れるとは思いますよ。
店頭に置いてある防具には、まず存在しませんがね。」
やはりそうなのか。あるのであれば出せばいいだけだが、ないとなると、これもオリハルコンに魔法耐性を付与したものを、ヴァッシュさんの工房で作って貰うしかないだろうな。オリハルコン銃よりも当然オリハルコンの使用量が多くなるから、果たして幾らになるやら……。
「わかりました。少し検討したいと思います、ありがとうございました。」
俺は武器防具屋の主人に別れを告げて、冒険者ギルドに立ち寄った。メンバー募集がどの程度出ているものか確認したかったのだ。
だが、クエストの数に対し、Sランクのメンバー募集はかなり少ないものだった。冒険者ギルドの職員に尋ねると、Sランクともなると、一緒にパーティを組んだ仲間と挑戦することが殆どで、新規に募集することがほぼないのだと言う。
まいったな……。
「Aランクですが、ミノタウロスであれば、現時点で1人募集しているところがありますよ。」
なんだって?
「その方たちはいずれSランクに挑戦するでしょうから、今から実力を確認しておいて、一緒にSランクに挑まれてはいかがですか?」
冒険者ギルドの受付嬢がそうすすめてくれる。
確かにそうだな。初対面の相手とSランクでいきなり戦うんじゃ、立ち回りが分からなくて混乱する気がする。
それなら事前に何度か狩りをしておいたほうがいいだろう。
「ちなみにその方たちは、どうすれば会えますか?」
「今隣の店で食事を取りながら、応募があるのを待っている筈ですから、行けばすぐに会えると思いますよ。」
ツイてるな。これは会ってみるしかないだろう。
「男性2人、女性1人で、近距離が2人の魔法使いが1人です。
女性はかなりお綺麗な方でしたから、見ればすぐに分かると思いますよ。」
俺はさっそく隣の店に入ってみた。中を見渡すと、冒険者や町の人たちで溢れかえっていたが、大半が男ばかりだ。女性を入れた3人組は、その中で1組だけだったので、遠くからでもすぐに分かった。
だが、俺は近づくに連れ、すぐに回れ右することに決めた。お綺麗な女性というのが、ナナリーさんの店で会った下品な女だったからだ。防具を身に着けていたから冒険者だとは思ったが、まさかコイツだったとは。