今日は朝からワイバーン狩りだ。
空をとび、群れをなしているというから、今までのようにはいかないだろう。
前回だって檻を壊すほどの力があり、魔法を放たれて苦戦したのだ。
木ですら簡単に倒すとなると、何か防壁になるものが必要だ。
俺は周囲を散策し、森の中にそうしたものがないかを探した。だが洞窟などもなければ、巨大な石のようなものもない。
森というよりも林という感じだった。
まいったな……。
警察や軍隊が使うライオットシールドは知っているが、ポリカーボネート製で、凄く重たい上に銃相手に殆ど効果を持たない。
ライオットは暴動という意味で、鈍器や投石程度から防ぐ為のものなのだ。木を切り倒す魔法に意味があるとは思えない。
銃弾を防げるタイプもあるが、それに見合った重さで、素早く動く相手に攻撃を同時にするには向いていない。
拳銃に対抗出来るバリスティックシールドなんてのもあるが、大口径弾や、一箇所に集中的に銃撃されれば普通に穴が開く。
ワイバーンの魔法の威力を目の当たりにしている俺としては、心もとなく感じてしまう。
この世界の盾ならどうだろうか?普通に狩られているようだし、魔法に耐える盾なんてのもありそうだよな。
俺はそれをイメージして、全身を覆えそうな盾を出してみた。すると見たことのない金属で出来た盾が出てくる。
少なくとも鉄でもオリハルコンでもないようだ。魔法防御を付与出来るとなると、魔法と相性がいいと聞いていたミスリルだろうか?
持ち上げてみたが驚く程に軽い。なのに叩いてみると硬さを感じさせる音がする。
こいつはいいな!
剣士が使うようなものではないだろう。
盾職がいるというからそれ用だろうか。
のぞき穴がないのは残念だが仕方がない。
俺は掴みかかられないよう、木と木の間に盾を構えて、慎重に待った。
ワイバーンは村の牧場に向かう際に、必ずこのルートを通ると言われている。
そこを狙い撃ちする為だ。
程なくしてワイバーンが鶴翼の陣形で飛んで来る。鳥が群れをなして飛ぶ時のあれだ。
この状態で1度に貫けるのはせいぜい2体まで。あとはこちらめがけて襲ってくるだろう。俺はワイバーンが重なる瞬間を狙ってオリハルコン弾を放った。
飛ぶスピードを早めた1体が偶然巻き込まれて、3体のワイバーンが脳天を貫かれて地面に真っ逆さまに落ちてゆく。
それを見た他のワイバーンたちが一斉にこちらを向いた。俺は生唾を飲み込む。
滑空してくるワイバーンに狙いを定めて次々撃ち落とすが、早い!早すぎる!
4体撃ち落としたところでワイバーンが木の間から狙う俺を足で掴もうとして来る。
木に阻まれたが少し盾を引っ掻いた。
盾はびくともせず、表面にうっすらとした傷もなかった。通常攻撃は防げそうだ。だが問題は魔法攻撃だ。
俺に掴みかかったワイバーンを撃ち落とすと、残ったワイバーンが次々と風魔法を放ち、あっという間に木が切り倒され、俺はそれに巻き込まれないよう後ろに下がった。
丸見えになった俺に風魔法が飛んで来る。俺は身を縮めて盾の後ろに隠れた。
何かを弾くような音がしたが、盾は壊れてはいなかった。──いける!
風魔法は空気を切り裂くような音がするので、放った瞬間が分かる。俺は音のしない時に盾から顔を出してワイバーンを狙った。
ギャッギャッと鳴きながら俺に攻撃を仕掛けるも、次々にワイバーンはオリハルコン弾の餌食となった。
しめて25体。これだけの数に一気に襲われたらひとたまりもなかったろうな。
俺は仕留めたワイバーンと盾をアイテムバッグに入れて冒険者ギルドへと向かった。
討伐報告をすると、予定よりも10体以上多く発生していたらしく、非常に驚かれた。何より1人で倒したのだ。俺は再びギルド長の部屋に呼び出されてしまった。
「用件はお分かりかと思いますが……。
あなたの冒険者ランクを引き上げたく。」
Aランク以上ともなると、Sランククエストに参加出来ることになるが、果たしてあの盾がSランク以上に通じるものか分からない。しかも年に1度は必ずSランククエストに参加しなくてはならないらしい。
さすがにパーティーを組むしかないだろうか?
そもそもオリハルコン弾だって通じるか分からないのだ。Sランクの魔物は等しく特殊攻撃をしてきて、巨大な体躯のものが多いのだとギルド長は言った。
そんなもの倒したことがないので、倒せるイメージが出来ない。
────────────────────
X(旧Twitter)始めてみました。
よろしければアカウントフォローお願いします。
@YinYang2145675
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
ランキングには反映しませんが、作者のモチベーションが上がります。