結論から言うと、俺が新しく与えられた体は、酷く美しい青年だった。
神様はこの体を与える予定だった人物に何をさせるつもりだったのだろう。
こんなの目立ってしょうがないだろ。
娘くらいの年齢の女性を交際相手候補として見ることの出来ない俺にとっては、彼女たちと同年代の若いハンサムの体など、面倒以外の何者でもない。言い寄って来られても困るのだ。
スパイク村長の村の女性たちが、俺に話しかけたそうにソワソワしていたが、俺はそそくさとティファさんのところに逃げた。
「すみません、ちょっと面倒なことになりそうなので、しばらく一緒にいていただけないでしょうか?」
同年代の若い女性と一緒にいれば、勝手にパートナーだと勘違いしてくれるだろうと思ったのだ。
「はい。別に構いませんよ?」
ティファさんは笑顔でそう言ってくれた。
ティファさんを恨みがましそうに、スパイク村長の村の女性たちが見ていたが、今後関わる予定もないのだし、ここさえ切り抜けられれば問題はない。ティファさんが危害を加えられるようなこともないだろう。
俺は恋愛沙汰に巻き込まれることが非常に苦手だ。それなりに清潔さを意識したり、体を鍛えていたこともあってか、実年齢より若く見えたらしく、前世でもたまに言い寄ってくる女性はいた。
だが、俺自身がそういうことを求めていない。職場のランチ弁当交換会でも、若い女性と一緒にいたら、互いにそんなつもりはないのに、勝手に周囲に勘違いされてうっとうしかったので、仲間を増やしたくらいだ。
俺をそういうことに、特に職場では巻き込まないで欲しいのである。
みんながみんな、そういうことばかり考えているわけではないのだ。
俺は色より食の人間なのだから。
帰り道、俺は早速ヴァッシュさんの工房に立ち寄った。魔石の取り外しが可能な食器洗浄機を作って貰う為だ。
「おお、ジョージ、よく来たな。」
ヴァッシュさんは笑顔で俺を迎えてくれた。
「食器洗浄機を改良したいのですが、こちらの工房で作ることは可能ですか?」
「ワシは作っとらんが、あっちで若い奴らが作っているから、作ること自体は可能だが、どんなものを作りたいんだ?」
「魔石を取り外して入れ替え可能にしたいのです。
魔石のはまっている部分は完全に接着されていると伺いましたが、何か意味があってのことなのですか?」
「魔力を放出している魔石は、魔力が魔道具の中にだけ行き渡るようにしないと、力を失うのが早いからな。
それで魔力が外に逃げないように、接着したり、溶接したりするんだ。」
「なるほど、意味があってやってることなんですね。
魔石を取り外して入れ替える時に、蓋が外せるタイプだとまずいですか?
例えば、隙間から魔力が逃げるだとか。」
「接地面に隙間が出来ないようにすればそこまで問題はないが、蓋が簡単にあく仕組みだと、魔力が逃げやすくなって、早く切れてしまうぞ。」
取り外しが簡単過ぎると駄目というわけか。
「では、釘の代わりにこれを使うのはどうでしょうか?
ネジといいます。
頭の部分をしめてやることで、隙間から漏れることは少なくなると思いますし、蓋の取り外しが簡単になります。」
俺が見せたネジを手に取ったヴァッシュさんは、
「これはどうやって使うんだ?」
と聞いた。
俺はアイテムバッグから電池式の目覚まし時計とプラスドライバーを出した。
「こんな風に使います。
この頭の部分を回してやると──このように外れます。反対に回すとしまります。」
「ふむ、かなり隙間なく、本体同士がくっつくんだな。」
「ネジの幅に合わせて、本体側にこうして穴をあけておくことで、本体が割れるのを防ぎます。
ここが、エネルギーを入れる部分なのですが、このように蓋になっています。
ここをネジ式に変えて、魔石を代わりにはめ込めるようにしたいのです。」
俺は目覚まし時計の電池を入れる蓋をあけて、電池を取り出して見せる。
ヴァッシュさんは蓋の中の構造と、電池を珍しそうに手にとって見ていたが、
「これなら簡単に作れそうだな。
魔石の交換も簡単になる。ジョージ、これは凄いぞ。」