「調理時間は1時間。
素材や調理道具は各自自由です。
私たちを楽しませてくれた方を勝ちとします。いいですね?」
中央の女性が審査員長らしかった。
俺たちは早速厨房に入って料理に取り掛かる。1時間となるとすべてを同時にこなさなくてはならないし、普通に火を使っていてはスープを取るにも時間がかかる。電気がないから作れるものにも限りがある。
俺はまずサラマンダーを解体することにした。喉を切って腹に沿って切り開き、内臓を取り除いたら、熱湯をかけながらぬめりをとり、冷水でさらにぬめりや汚れを落としていく。
熱湯で一気に茹でてこそいでやってもいいが、スープを取るつもりなのでこのやり方だ。
手足は切り落として、骨ごとぶつ切りにして、まずは鍋で煮てスープを取る。オオサンショウウオは、すっぽんのような肌と白身魚のような身、特にアンコウに似た尻尾の部分が美味く、中国では高級食材だ。
半分に切ったにんにく、包丁の背で叩いて潰して千切りにしたしょうが、斜め切りの長ネギ、四つ切りのしいたけ、輪切りのオクラ、輪切りの鷹の爪を、高温の油で一気に1度熱を通したら、1度取り出し、再度鍋に戻して、生姜とにんにくを炒め、鷹の爪を加えて炒めたら、しいたけを加えて炒める。
ぶつ切りにしたサラマンダーの身と、スープを少し加えて炒め煮にしてやり、最後に長ネギを加えてざっと火を通して、サラマンダーの旨辛炒めの完成だ。
残ったスープは溶き卵を加えて塩コショウで味付けして、そのまま飲むスープにする。
ロンメルさんの様子を伺うと、ロンメルさんが使い終わった調理器具を、大きな箱の中に入れ、取手を上げた瞬間、調理器具が洗われた状態で出てきた。
まさかそれは……。
「食器洗浄機ですか?」
「はい、そうですよ。
初めてご覧になりますか?」
食器洗浄機!!
俺は機械は出せるし電気配線も行えるが、食器洗浄機に使う大量の水を一度に流すことが出来ない。だから諦めていたのだが。
「水はどうしているのですか?」
「これは勢いよく温水の出る魔道具なんですよ。ここに魔石がはまっています。
これが中にお湯を噴出してるんです。」
「排水はどのように?」
「ここから外に流しています。
樽に貯めて専門業者が定期的に回収に来てるのだと思いますよ。
うちもそうですし。」
なるほど……。コイツを手に入れれば、我が家にも食器洗浄機がやってくるわけだ。
「──おや?」
「どうしました?」
「どうやら魔石の力が切れたようですね。
残念ですが、新しいのを購入するまで使えなくなってしまいました。」
「……?
魔石を入れ替えればよいのでは?」
「魔道具は、魔石を入れる部分を始めとして、釘で打ち付けられているか、接着されていますから、外すとなると解体するしかないんですよ。」
なんと。
「古いものを下取りに出して、代わりに新しいものを手に入れる感じですね。
まあ、下取りの差額を払うだけで、大した金額でもないですから、新しいのが来るまで少し不便という程度ですね。」
「ネジを使わないんですか?」
蓋にして外せばよいだけの話ではないか。
「ネジ……?
なんですか?それは。」
ロンメルさんは初めて聞いた、という風に首を傾げた。