俺は空薬莢を拾って弾頭を回収したが、それた1発がどうしても見つからずに諦めた。
これはどうやって調理したもんかなあ、と思いながらアイテムバッグに詰めて山を降りた。
俺はその足で冒険者ギルドに向かうと、ケルピーとワイバーンの解体を有料で頼んだ。
カウンターに魔物を出すと、一気に冒険者ギルドの中がざわつきだす。
……まあ、これはさすがに予想はしていた。
馬やドラゴンなんて、どうやったって俺には解体出来ない。食材を手に入れる為には、どうしたって頼むしかないのだ。
だが今回は少し様子が違っていた。
ギルド長に冒険者ギルドの奥の部屋に呼ばれてしまったのだ。
食材の為とはいえ、1人でAランクを狩ることが特殊なことは、さすがに分かる。というか今までの反応で分かって来た。
クエストも受けていないのに勝手に討伐したと注意されるのだろう。
しかしギルド長の反応は、俺の予想とは少し違っていた。
「ギルド長のオリバー・スコットと申します。」
ギルド長は丁寧に俺に挨拶してくれた。
俺も名乗って挨拶をする。
「毎回お1人でランクの高い魔物を倒されているようですが、あなたは魔法使いなのですか?」
「いえ、俺は銃を使っています。」
「銃?Cランク以上を倒せる銃なんてものはこの世には……。」
「バーグさんという方に作っていただいた特別製を使っています。」
俺はオリハルコンの弾丸を見せた。
さすがにライフルは見せなかったが、弾を見れば威力は伝わる筈だ。
「これは……オリハルコンですか。
確かにこれならAランクでも難なく貫通するでしょうが、何もこんな高い使い捨ての弾を使用しなくても、他の武器をお使いになればよいのに。」
「俺は銃が1番自信がありますので。」
俺はアーチェリーをやっているので、他にすぐに扱える武器があるとしたら弓だろうが、アーチェリーで動く的なんて狙ったことがない。普段狩りで使用しているライフルが最も確実だ。
「あなたの冒険者ランクをどうしようかと思っていたのです。
実力でいうならじゅうぶんだと思いますが、何よりクエストを受けた経験が少ない。冒険者ギルドとしては、Cランク以上は試験を用意しているので、簡単には上げられないのです。」
まあそうだろうな。冒険者ランクはクエスト受注の為の資格のようなものだしな。
「ですが、ランクの高い冒険者が少ないのも事実です。現状の仕組みが冒険者の実力に追い付いてないとも言える。
ですので、特例ですが、あなたの冒険者ランクをBに引き上げることにしました。」
なんと。
「試験は今回のワイバーン討伐として申請を出しますので、別に受けていただかなくても結構です。これでAランクまでのクエストを受けることが可能です。
これからもご協力宜しくお願い致します。」
「こちらこそ、クエストも受けずに勝手に狩ってしまったのに、特例まで設けていただいて、頭が上がらないです。」
実際あれは俺がわざわざ出したわけだから、魔物の頭数は減っていないのだ。逆に申し訳なくなってくる。
……これは料理対決が終わるか、料理対決が大分先なら、それまでにクエストを受けて頭数を減らさないとなあ。
バーグさんに支払うオリハルコン製の銃身のことあるし、Bランク以上のクエストなら稼げてちょうどいいだろう。
俺はスコットギルド長に挨拶し、解体して貰ったケルピーとワイバーンの肉を受け取った。ワイバーンの肉の情報を冒険者ギルドで聞こうと思った瞬間、ワイバーンの肉の情報が表示される。そうか、食材に変われば見れるようになるのだ。
〈ワイバーン肉〉
生食可能な肉。脂肪分が少なく筋肉質で豊かな風味。味は比内鶏に近い。
比内鶏だって!?天然記念物じゃないか!
今は交配種と掛け合わせた物しか食べられないのに、原種の味が食べられるってのか?