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第15話 ワイバーン(鳥肉)のキリタンポ鍋②

 村の収穫の半分を持っていかれてしまったら、特に裕福でもないこの村は、当然日々の暮らしがたちいかなくなってしまうだろう。それは分かるが、本人を抜きにして勝手に話をすすめないで欲しい。


 とりあえず、冒険者ギルドで目ぼしい食材の情報を聞いてきますよ、と俺は腕組みしながらため息をついた。

 ラグナス村長は飛び上がって喜んでくれたが、こちらに勝てる要素なんてないことを、どうやったら理解させられるだろう。


 カツ丼と豚汁と角煮を村人たちが器を籠に入れて取りに来てくれ、お裾分けを済ませた後で、俺は冒険者ギルドに向かうと、宮廷で人気の食材や、珍しい食材が手に入るクエストがないか聞いてみた。

「ありますけど……。今の冒険者ランクでは受けられないですよ?」


 それでもいいから情報が欲しいと頼んだ。

 現時点の冒険者ギルドで募集しているクエストの中で宮廷で人気で、肉が高く取り引きされる魔物は3種類だった。

 他にもいるが、単に討伐依頼があるものがその3つということだ。


 サラマンダーというBランククエストの火蜥蜴。

 ワイバーンというAランククエストの前足のない翼竜タイプのドラゴン。

 ケルピーというBランククエストの上半身が馬で下半身が魚の魔物だ。


 蜥蜴は爬虫類だとして、……翼竜は爬虫類なのか?ケルピーが1番レシピを想像しやすいが、他の2つはどう料理したものか。

 俺には知らないレシピを知ることの出来るスキルがあるが、この世界の料理を作って宮廷料理人と勝負になる気がしない。


 せめて俺の世界の料理法と調味料で、未体験の味に興味を持って貰うしかないと思えた。

 別にクエストが受けられなくても、能力で出せばいいだけだから、現地に行く必要もない。食材が欲しいだけだしな。


 俺は山に登ってアイテムボックスから猛獣用の檻を出し、まずはサラマンダーを檻の中に出した。

 確かに火をはくので驚きはしたが、蜥蜴というよりも……オオサンショウウオじゃないのか?これ。


 これなら調理したことがあるからなんとなく分かるな。難なくオリハルコン弾で仕留めてアイテムバッグにしまう。

 これは解体からやることにして、冒険者ギルドには頼まないことにした。


 続いてケルピーを出した。

 本当に上半身が馬で下半身が魚だ。肉を食べてみてからだが、馬の部分と魚の部分どちらも使えるかも知れないな。

 ……というかうまそうだな。

 これも難なく仕留めてアイテムバッグにしまう。


 だが問題は最後のワイバーンだった。

 猛獣の檻にギッチギチに詰まって現れたかと思うと、猛獣の檻を破壊して飛び上がったのだ。

 さすがはAランククエストというところか。デカい上に力が物凄い。


 まずいな、逃げられちまう。

 俺はすかさずライフルを構えると、よく狙いを定めて翼を撃ち抜いた。

 グラリ、とワイバーンの体が真横に向いて地面に叩きつけられる。


 だがすぐに起き上がると、口から何か放って来た。俺はライフルの銃身を体でガードしながら、横に転げるようにして避け、すぐさま体勢を立て直し、片膝を立てて狙いを定めると、ワイバーンを撃ち抜いた。


 頭を狙ったつもりだったが、少しそれて肩にあたり、キュエエェェ!と悲鳴をあげる。

 すぐ後ろでミリミリミリミリ、と音がしたかと思うと、ドーンという音とともに、振り返ると太い幹の木が倒れていた。


 魔法か?恐らく強風のカマイタチのようなものだ。冗談じゃない、あんなものくらったら、体が一瞬で真っ二つだ!

 連続で3発頭めがけて発射する。1発がワイバーンが身を捩ったことによってそれたが、2発命中してそのまま絶命した。

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