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第12話 ロック鳥(鳥肉)のスパイシー唐揚げ2種類と台湾風唐揚げ③

 つけ置く時間はそれぞれ1時間だ。量が半分以下なら2~30分でいい。夏場で室内の気温が心配なら冷蔵庫でつけ置いてもいいが、冷蔵庫に入れると揚げる際に2度揚げする必要が出てくる。今回は2度揚げしないので常温でプラスチックの蓋を乗せて置いておく。


 つけておいたもも肉を、つけ汁を絞って水気を切り、まんべんなく片栗粉をつけ、もも肉が半分つかる程度のサラダ油で、ひっくり返しながら中火で揚げていく。

 優しい焦げ茶くらいの色に変わったら、キッチンペーパーの上に乗せて、余分な油を吸わせながら予熱で更に火を通して、スパイシー唐揚げ2種類の完成だ。


 続いて卵を3個箸で溶き、胸肉をくぐらせたら、片栗粉とコーンスターチを1:1に振り混ぜたものをまぶして、半分つかる程度の180度の油で裏返しを繰り返しながら、揚げ焼きにしていく。大体8分程繰り返して中まで火が通ったら、台湾風唐揚げの完成だ。


 俺は3種の唐揚げを前に、思わずビールを出した。揚げたてにガブリと噛み付く。

 まだ熱くて思わずビールで流し込む。

 鶏と比べると、柔らかく油がのっているのに、しっかりと歯ごたえがある。


 筋肉がついている個体だと分かる。自然に育てた軍鶏の食感に近い。

 一般的に肉食の鳥類の肉はマズイというのが元の世界では定説だが、この世界の魔物はどうやら違うらしい。

 やっぱり自然に育った鳥肉はいいな。

 スーパーで買う肉には、決して出せない歯ごたえと旨みがある。


 食感が気持ち良すぎて、いつまでも噛んでいたくなるし、そのたびに旨みが染み出してくるのがたまらない。

 唐揚げだけで腹いっぱいになる程にタップリと食べ、俺はすっかり大満足だった。


 まだ夕飯には早い時間だったので、俺はラグナス村長のところに寄って、また肉が取れたのでお裾分けをしたいと伝えた。

 全員分となると夕飯のオカズにちょっと加える程度の量しかないので、欲しい人にだけ村長のところに取りに来て貰おうと思ったのだ。ラグナス村長は大喜びで唐揚げを受け取った。


 そういえば俺はずっと気になっていたことがあったので、それをラグナス村長に聞いてみることにした。この世界の人たちはトイレの始末をどうしているのだろうか?ということだ。

「……すみません、1つお伺いしたいことがあるのですが。」


「なんだね?

 何でも聞いてくれ。

 君の為なら協力を惜しまんよ。」

 ラグナス村長は笑顔でそう言ってくれた。

「トイレなんですが……。

 皆さん排泄物の処分をどうされているのでしょうか?」


 村長は、なんだ、そんなことか、と言いたげな笑顔を浮かべた。

「なんだ、そんなことかね。

 水色のスライムを捕まえてくるのさ。

 そいつをトイレの底に入れておけば、勝手に排泄物を食べてきれいにしてくれるんだ。」


 スライムは俺でも聞いたことがある有名なゲームにも出てくる魔物だ。この世界の魔物は、微生物のような役割を担うことがあるのだろうか?

 ともかくその水色のスライムさえいれば、排泄物の汲み取りなんて必要がないらしい。


 おまけにスライムが排泄したものが、直接農作物の肥料にもなるという。

 なるほど、異世界ならではのやり方というのがあるんだな。なんでも元の世界のやり方で解決しようとしていたが、思いきって聞いてみて良かった。


 スライムは、倒すのは楽だが、捕まえるのは大変で、売っているものの少しお高めだとラグナス村長から言われた。

 俺は、スライムをわざわざ捕まえたり買わなくとも、この能力で出せばいいんじゃないか?と考えた。


 売り物なら商品だ。畑で取れた虫を食わせる為に鳥を出そうとしていたくらいなのだ。排泄物を処分する魔物も出せないだろうか?

 トイレの前で腕組みをしながら首を捻ると、俺は水色のスライムを出してみた。


 ポコポコと妙な音がして、空中に3匹のスライムが現れたかと思うと、ポトリポトリと汲み取り式トイレの中に落ちてゆく。

 そのままうごめいたかと思うと、スライムがゆっくりと排泄物を食べだした。


「──おお、食べる食べる。」

 あとはこいつらに任せておけばいいのだ。

 汲み取り式トイレは深い為に、スライムは上がって来れないので襲われる心配もないとラグナス村長から聞いている。


 ──ふと。

 俺は、魔物も出せるなら、冒険者ギルドのランクが上がるのを待たずに、オークも出せばいいんじゃないか?ということに思い至った。生体のまま売り物になっていないものが出せるのかが分からないが、試す価値はある。

 だがこのことが、ラグナス村長の村と、隣村との対決にかかわってくるだなんて、その時の俺は思いもしなかったのだった。

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