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第8話 鶏わさ風のササミの胡麻和え刺し身と水晶鳥と砂肝のネギ塩レモンとパリパリ鳥皮ポン酢③

 だがラグナス村長の家を訪ねて俺は拍子抜けした。冒険者ギルドに登録するのに、別に何の保証人も身分証明書もいらないのだという。

 緩いな、異世界。

 なんでそれで、登録しないと魔物が狩れないんだ?


 まあ、せっかく手土産も貰ったことだし、と、ラグナス村長は冒険者ギルドまで案内をかってでてくれた。

 冒険者ギルドで登録を済ませたものの、いきなり魔物狩りは出来ないらしい。


 まずはランクを上げる為に、薬草だのを採取しないとならないらしい。

 面倒だが段階を踏めと言うなら仕方ない。

 たかが薬草取りと言っても、魔物が出るところにはえているから、一応冒険者への依頼となるのだそうだ。


 薬草の形を知らないので、ちょうど納品のあったものを見せて貰った。

〈ナナカイ〉

 薬草。体力回復薬などの原料になる。

 山奥に自生している。


 こいつを10回受けて、ようやく1つランクが上がるらしい。

 山奥に10回だと?いちいち山を登って降りるのか?

 まとめて受けられないのかと聞いたが、そんなに見つかるものでもないらしい。


 他にも同時に受けられるものがないか聞いたら、毒消しの元になる草を集めるクエストもあるらしい。

 村長の口利きで、同時に2つ受けさせて貰うことになったので助かった。


 毒消しの元になる草を見せて貰う。

〈セペック〉

 薬草。毒消しの薬の原料になる。

 とても苦くて食べられない。

 とあった。


 魔物が出るとなると、空気銃じゃ心もとないので、俺はライフルを持って行くことにした。

 石ころが転がっていて、とても草なんて生えていなそうな山道を登る。


 ようやく森のあるところにたどり着き、3本ナナカイを見つけたが、なるほど、これじゃあ確かに、まとめて納品が難しいわけだ。 

 ふと、俺は、これも出せばいいんじゃないのか?と、いうことに思い当たった。


 試しにナナカイとセペックを10回納品分出してみる。ドサドサドサッと空中から大量の草が落ちてくる。

 しまった、山になんて登らずに、冒険者ギルドの近くで出せば良かった。

 こんな大量の草を、どうやって運べと言うんだ。


 この世界には魔法があるという。何か魔法で収納出来たり、収納出来る魔法のかかったアイテムが出せないだろうか。

 俺は無限に収納出来る鞄をイメージして出してみた。すると出て来た鞄はいくらでも物が入るではないか。


「──こいつはいいな。」

 俺は大量のナナカイとセペックを鞄にしまった。

 突如、森の中から逃げるように鳥たちが飛び立った。俺はライフルを構えてスコープを覗いた。


 木の間からやたらとでかいイノシシが突進してくる。

 ──眉間にヘッドショット一発。

 勢いのままよろけてカーブしながら多少走ると、イノシシはその場にバタリと倒れた。

 イノシシはまっすぐ来るから、落ち着いていればどうということはない。


「こいつも持って帰りたいな。」

 なんとか鞄に押し込めないかと試行錯誤していたら、ニュニュニュッと空間が歪んだようにイノシシが変形したかと思うと、スポッと鞄の中におさまった。


「こいつはいいや。」

 俺はゆうゆうと山を降りて冒険者ギルドのカウンターに向かった。

「納品したいんだがどうすればいい?」

「では、あちらの納品カウンターにお願いします。」


 俺は言われてカウンターでナナカイとセペックを出そうとして、間違えてイノシシを出してしまった。

「こ、これは……、ランクDクエストのワイルドボアじゃないか!」

 イノシシじゃなかったのか。


 今日登録したばかりの新人が、ワイルドボアを討伐して来たと、冒険者ギルドの中は大騒ぎになり、早く帰りたかった俺は、ナナカイとセペックをまとめて出したら、更に大騒ぎになってしまった。

 なあ……。早くそれ、持って帰って食いたいんだがな、俺は。

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