「ああ、おはようございます。
昨日はどうも。」
「ごちそう様でした。
これ、お借りしてたどんぶりと、父から預かった食材です。」
ティファさんが籠に入った食材とどんぶりを渡してくれたので、俺はそれを受け取った。
「──籠はどうすれば?」
「何かの機会に渡して下されば結構です。」
ティファさんはそう言って、笑って帰って行った。
何かの機会ねえ。
またラズロさんに何か作る事があれば持って行くか。
今日は俺は狩りをしようと思っているのだ。
昨日の歓迎会でいい狩り場を、村の猟師に教えて貰っていた。
ちなみに俺の趣味特技は、料理、アーチェリー、ボルダリング、水泳、釣り、狩猟、クレー射撃、オンライン麻雀である。
全部1人でもやれるものばかりだが、たまには人ともやる。
好きな役満は大四喜と緑一色だが、得意なのは字一色と清老頭だ。揃えたことのない役満は地和だけ。流し満貫は1度だけ揃えそこねた。
またやりたいが、この世界にはそんなものないんだろうなあ。
狩猟の方はライフルの免許も持っているが、この世界にはそもそも必要ないらしい。
この世界の猟師も銃を使うというのが聞けたのは僥倖だった。
俺が使うような銃を持っている人間は当然いないだろうが、銃声がしても気にされないということだ。
だが俺は今回プリチャージ式の空気銃を出した。
1発撃つ毎に空気を充填する必要がある他の空気銃と違って、威力や命中精度が抜群な上に、ボンベを使って空気を充填できる。
空気銃は温度変化の影響を受けるのが難点だが、何より音が静かで獲物の肉を傷めない。
飛んでいる鳥を狙うのにはあまり向かないと言われるものの、罠にかかった大型の獲物を仕留めるのにも使われるくらい、殺傷能力は高い。
昨日ラグナス村長の家で出してもらった鳥料理が、俺はいたく気に入ったのである。
このあたりで取れるノズエという鳥だ。素材を確認すると、キジバトに似ているというから解体も楽そうだ。
ノズエは水辺のある森の中に生息しているらしい。
俺はそっと教えて貰った森の中へと入ると、さっそくノズエを見つけてプローンでスコープの中に入るのを待つ。
プローンは伏射という、腹ばいで寝転んだような態勢の構え方だ。
構えた銃が地面から離れれば離れるほど、銃の揺れは大きくなり目標にあたりにくくなる。右から左に移動するような獲物を狙う場合は、銃を動かすよりも向こうがこちらの射程に入るのを待つ方が楽だ。
距離が離れているとゆっくりと動いているように見えるので照準は合わせやすいが、実際には獲物が小さいので、スコープに入る瞬間を予測して打たないと間に合わない。
だがキジバトや鴨くらいなら外さない。
俺は無事にノズエを2羽仕留めて回収した。
自宅に戻り、庭にバケツを出して、頭を落としたノズエを逆さに吊るして血抜きをした。
現地で血抜きしようか悩んだのだが、血の匂いで何か集まって来ても困るなと思い家に帰ったのだが、血が固くなる前に戻ってこられて良かった。
鶏は46℃のお湯につけながらでないと羽がむしりにくいが、キジバトは割と関係なくむしりやすい。ノズエも同じなようで、普通にバリバリむしれた。
バーナーを出して細かい産毛を焼く。
たわしを出して体を洗い、家の中に入ると、キッチンで手羽先部分にあたる羽と足を落とした。
お尻の部分から肋骨の部分まで縦に包丁を入れて穴をあけ、指を突っ込んで内蔵を取り出す。
最初に砂肝、腸がくっついてでてくる。
再度指を入れて心臓や中身すべてを掻き出して1度水洗いする。
砂肝のまわりの余計な内蔵を水で洗い落としたら、半分に割って、中にあった消化中と思われる何かも洗い流して、塩水をはったボウルにつけてよけておく。