日が暮れて、俺は困ってしまった。
電気がないから明かりがない。
風呂を沸かそうにもそれも出来ない。
というか手元が見えないから危なくて身動きが取れないのだ。
普段の感覚で夜に洗濯して、風呂に入って、明日の朝食と弁当の準備を……なんて考えていたら、何も出来なくなってしまった。
なんということだろうか。
取り敢えず明かりがないと話にならない。
手探りでもやれるとなると、燃料を入れるタイプは危なくて無理だ。
充電式も駄目だ。
電池でいけて、持ち運びが可能な、キャンプで使うようなものがいい。
万が一倒しても安全なやつだ。
以前友人とキャンプに行った際に、最低でも1000ルーメンのものを選ぶといいと言っていたのでそれにすることにした。
ルーメンは明るさを表す数値らしい。
電池式だと、俺の知る限りでは、最低、じゃなく、最大になってしまうが致し方ない。
星あかりで何とか見る限り、なんともスタイリッシュな見た目で、どこから電池を入れたものかが、分からなかった。
例によってむき出しで出てきたのだ。
まあ、説明書があっても星あかりで読むのは難しいが。
色々いじくった結果、底を回すと蓋が外れて単1電池を6個使うことが分かった。
単1が6個ともなると、かなり明るくなりそうな期待が出来た。
単1電池を6個出す。
だが電池を入れる向きが分からなかった。
大体電池をプラスとマイナスを交互に入れることが多いから、向きが違うとスイッチが入らない。
手探りで中を触ると、全部にねじれたリングのようなものが触れ、高さの違いが分からなかった。
蓋側を触ると、出っ張った部分と、細長い平たい部分がある。おそらく出っ張った部分がマイナスなのだろう。
電池を入れている最中、電池を取りそこねて転がってどこかに行ってしまった。
諦めて明るくなったら探すことにして、新しい電池を出した。
蓋から出ている棒の先端が水滴型になっている。
本体側も触ると同じ形になっていた。
これに合わせないとおそらくきちんとしまらないのだ。
手探りでやっていなかったら、気付かずに合わせてしまうところだった。
慎重に合わせて、蓋を軽く回して閉じた。
てっぺんのボタンは押すのではなく、ボタンのようなつまみを回すらしい。
LEDで重さが大体1キロ、明るさが3段階で調節出来て、一番低い明るさでも大分明るいし、最大の明るさだと眩しいくらいだった。
取り敢えずこれでどうにかなったが、寝るにはまだ大分早い時間帯だ。
風呂に入りたいが、浴槽に湯をためる方法がない。
外は満天の星空。
いっそ外で入ろうかと思った。
だが、ドラム缶風呂を作るにも、ドラム缶の蓋が空いているものがなければ意味がない。
こんな真っ暗な中で蓋を切り離す作業は無理だ。
持ち運び可能な投げ込み式ヒーターでもあればいいんだが、電気がいるからなあ。
ちなみに投げ込み式ヒーターは、職場に来ていた清掃会社さんが使っていたもので、真冬にワックスの剥離作業をする時なんかに、温水で洗剤の力を引き出すのに使うものだそうだが、風呂を沸かすのにも実は使えるんですよね、と言っていたものだ。
電気を用意するか、ドラム缶風呂にするか。
どちらにするのか考えつつ、明日洗濯物もしないとなあ、と思いながら、今日は早めに寝ることにした。
明日はもっと色々夜に向けて準備をしよう。
日が昇る前に目が覚めた。なにせ寝たのが早かったのだ。無理もない。
枕元のタンスの上に置いてるLEDランタンを手探りで探すと、スイッチを入れて明かりをつけた。
もう1つ準備してもいいかも知れない。
突然電池が切れた時に、また暗闇で作業をするのはしんどすぎる。
俺はもう1つ同じものを出して、電池を入れただけの状態にして、タンスの上に起き、明かりをつけたものを持って1階に降りた。
まずは腹が減っているので朝食にする。
ちなみにテーブルと椅子だけは、木で出来たものが備え付けられていた。
木枠で出来た風呂桶とトイレもあったし、木で出来ているから一緒に出て来たのだろうか。
それならマットレスはともかく、木のベッドも一緒に出て来てもよさそうなものだが、基準がよくわからない。
俺は昨日のうちに準備しておいたお握りを、クーラーボックスから取り出した。