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第1話 土鍋ご飯蟹チャーハンとモヤシと卵の中華スープ②

「こいつはいいや。」

 中に入ると、本当に家だけで、調理器具もベッドも何もなかった。

 まあ、そんなもんか。

 俺はフライパンとカセットコンロを出した。


 やはり簡単に食べられるものといったらチャーハンだよな。

 しかし、電子レンジは出したところで使えない。米をどうしたものか。

 俺は思案の結果、無洗米と土鍋とプラスチックのボウルとペットボトルの水を出した。


 直接料理名を言えばそれも出てくるんだろうが、俺が料理をするのは、自分好みの味付けにしたいからだ。

 せっかくどんな食材でも手に入るのに、それじゃ味気ない。


 米2合に対して500ミリの水に30分ひたす。米が透明から真っ白になり、全体が白濁するのを待つ。

 この時土鍋で直接ひたすと、土鍋が割れやすくなるので、ボウルの中でやるのだ。


 土鍋ご飯を使うのなら、せっかくだし贅沢にいこう。

 茹で蟹、蟹バサミ、万能ねぎ、卵、鶏ガラスープの元、ごま油、塩コショウ、まな板、包丁、小皿、皿、スプーン、しゃもじ、フライ返し、お椀を出す。

 卵をといて鶏ガラスープの素を少々加え、蟹の身を取り出してあらくほぐす。

 万能ねぎを切って小皿に入れておく。


 水の量は土鍋の大きさの、半分より少し上くらいをこえると、吹きこぼれやすくなるので、量には注意が必要だ。

 土鍋に蓋をして中火で沸騰するまで火にかける。


 土鍋で米を炊く間に、別のカセットコンロと鍋を出して、もやし、醤油、片栗粉、大さじ小さじを追加で出す。

 もったいないがペットボトルの水でもやしを水洗いして、鍋で茹でる。


 鶏ガラスープのもとを10グラムほど。

 醤油と塩コショウをお好みで味を整えたら、片栗粉大さじ1を大さじ2の水で溶いたものを、そっと混ぜながらくわえる。

 最後に溶き卵を流し入れた。


 土鍋が沸騰したら、更に弱火で15分炊く。時間が分からないので、クッキングタイマーを出してセットした。

 最後に蓋を開けて水分が残っていなければ完成だ。


 鍋から水や泡がブクブク出ているなら、水気を飛ばし足りていないので、1分ごとに様子を見ながら火にかける。

 炊きあがったら10分蒸らすのだが、蓋を開けたことで温度が下がっているので、ここで蓋をしめて中火で10秒程再加熱する。


 俺はしゃもじで完成した米をほっくりかえした。炊きたての米のいい香りがする。

 こう考えると、揃えるものが本当に多いことに気付く。何より電気が使えないから冷蔵庫が使えないのだ。

 日持ちしない食材を使い切ることや、保存方法を検討しなくちゃならないな、と思った。


 フライパンにごま油を少し入れて、熱したところに鶏ガラスープの素を少々加えておいた溶き卵を流し込む。

 半熟になったところで1度、フライ返しで取り出し、皿に移した。


 再度フライパンにごま油を入れ、ご飯とほぐしておいた蟹の身をフライ返しで炒める。

 鶏ガラスープの素と塩コショウを適当に加えて味を見たら、卵を戻し入れて、切っておいた万能ねぎを加えてざっくりと混ぜ合わせる。

 皿に移して完成だ。

 作っておいたもやしと卵の中華スープをお椀に注ぐ。


「──いただきます。」

 手を合わせてさっそくいただく。

 土鍋で炊いた米がほっくりして最高だ。残った米はまた夜に食べるつもりでいる。

 俺はチャーハンはパラパラよりもモチモチ派なのだが、あまり市販品や中華料理店にそれがないのだ。


 スープもスプーンで食べる。

 洗い物が少ない方がいいので、いつもあまり食器を色々使わない。

 大満足で腹いっぱいになったところで、ふと、洗い物と、出たゴミをどうしようということに気が付いた。

 カセットコンロのボンベを使い切っても捨てられないんじゃないか?

 特に蟹の殻だ。放っておいたらすぐに臭くなる。


 村からは追い出されてしまったし、そもそもゴミの回収の日なんてものが、この世界にあるのだろうか?

 何でも出来そうに見えて不便な能力を貰ってしまったことに、俺は今更ながらに気が付いたのだった。

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