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目を覚ますと、戦時中とは思えないほど豪華なベッドの上に寝かされていた。


(この状況…見たことがある。)


「起きたのね」


「!」


声のするほうへ顔を向けると俺をこうさせた吸血鬼がいた。

だが、さっきみたいな迫力は感じられない。むしろしおらしかった。


「なんで俺を…殺さなかった」


「殺さなかったんじゃない。殺せなかったの」


俺の言葉にそう否定する吸血鬼。


「あなたの血を全部吸うはずだった。なのに、あなたの中には私の血が流れていた…いや。正確には私に似たもう一つの血。その血があなたを殺すことを拒否したの」


不思議なことを言う吸血鬼。だが、思い当たる節があった。


「リエの血…」


「あら?リエってあの子は名乗ったの?」


吸血鬼は不思議そうに、そして楽しそうに言った。


「あの子が自らをリエと名乗った…私と血を分けた姉妹が面白いことしてくれるじゃない」


(姉妹…)


違和感の答えを知らされる。

どおりで雰囲気が似ているわけだ。


「私の片割れがあなたを殺すことを拒否してる…面白いと思うのは当然でしょう?」


不敵な笑みを浮かべる吸血鬼。


「私たちはあなたが思う化けモノ。人を食料としか見ていない化け物よ」


せいぜいあがいてみなさいと言い残し、吸血鬼は眼前から消えるのだった。

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