吸血鬼領に連れてこられた俺。
連れてきた吸血鬼は、
「報告を領主様にしないといけないからついてくるんだ」
といった。
すでにここは吸血鬼領の中。拒否権などあるはずない俺は素直についていくほかなかった。他の吸血鬼よりもまだこの吸血鬼のほうが俺を殺す確率は低いと考えてはいるが、一体俺をどうするのかはわからない。
「俺を、なんて報告するんだ?」
「安心しろ。悪いようにはしないさ」
吸血鬼はそんなことを言い俺を中心部へと連れた。
その間多くの吸血鬼とすれ違ってきたが、襲われることはなかった。
吸血鬼領の中心には巨大な塔のようなものがたっていた。
その塔は以前、リエと名乗った吸血鬼が自身の血で窓をふさいだ時と同じように、血で隙間が埋められた、まがまがしいものだった。
(こんなこともできるのか…)
吸血鬼について新しく知れたところで俺は吸血鬼の長と名乗る女の吸血鬼の前にいた。
ただ座っているその吸血鬼には、有無を言わせぬ迫力があった。
「その人間は?眷属の子?」
椅子に座っていた吸血鬼は、いつの間にか眼前まで移動していた。
燃え上がるような赤い瞳。
そして、どことなくリエに似た雰囲気を感じる。
「お前は…」
俺が口を開いた瞬間。俺の視界から吸血鬼が消えた。
正確には俺の視界が天井をとらえた。
「いっ!」
吸血鬼が俺を床にたたきつけたという事実を理解する。
「誰にものを言っている」
その言葉の瞬間、首筋が痛む。
吸血されているのだ。
「お前ら吸血鬼はそうやって人を食糧にする!」
俺は痛みに耐えながらそう叫ぶ。
首筋から血を吸われてる感覚がどんどんと小さくなる。
だんだんと…全身に力が入らなくなる。
吸血鬼が吸い付く音だけが俺の耳を刺激する。
もがけるわけもなく俺の視界はだんだんとぼやけてくる。
「お前ら人間はそうやって我らを化け物にする」
そんな声が聞こえた気がした。