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吸血

移動した先は小さな民家だった。

民家につく頃には、吸血鬼の数はさらに減っていた。


(1…2…)


4体しかいない…


頭を貫かれた吸血鬼、移動中に教会の人間に止められたリエ。崩落に巻き込まれつぶれてしまった吸血鬼。

本当にこの戦場では命が軽いことを思い知らされる。


「クソッ…」


先頭でがれきを崩し道を作り続けていた吸血鬼は壁に縋るようにして立っていた。

息をづるのが速く限界といった様子だった。


「……!」


そんな吸血鬼と目が合った。

その瞬間俺は優しい痛みに襲われた。


「っ!」


この感覚は知っている。

吸血されたのだ。

あれだけ力を使っていたのだから当然のことだろう。


「…お前…」


吸血鬼はすぐに俺の首から牙を抜くと俺の顔をじっと見る。


「お前…吸血鬼なのか?」


「は?」


俺はついそんな反応をこぼしてしまった。

吸血鬼?俺が?


「お前の血に、吸血鬼と似たものを感じる」


だからこんなに回復が早いんだ…と吸血鬼は言う。


「俺は人間だ…ただの弱い、人間だ」


「だったら何でこんなに…ってまさかお前」


吸血鬼に何か心当たりがあるのか頭を振り俺をにらむ。


「お前…あの吸血鬼としたのか?」


「血液…交換…」


「したんだな」


血液交換。それは初めて聞く単語だがある程度予想はつく。

つまり俺がリエの血を飲んだこと。それが俺に何らかの変化をもたらしたということなのだろう。

それがいことなのかはわからない。まして血液交換という行為が何を意味しているのかすら分からない。


生き残っている吸血鬼が一斉に俺を見る。

その眼の意図は俺にはわからなかった。

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