「それで、詳しく説明してくださるかしら?」
腕を組んで至近距離からじっと見つめていると、クロードはライラの視線から逃れるように、天を仰いで頭を抱えてしまった。
「勘弁してくれ。私だって反省しているのだ」
「もうあなたとは家族でも何でもないから、こんなことを聞く資格はないし、理由を知ってもしょうもないことを言われるだけなのだろうなっていうのはわかっているのよ」
ライラはこちらを見ようとしないクロードの頬を両手で挟み込んで、無理やり視線を自分に向けさせる。首を痛めるのではないかというくらい、勢いよく頭を動かしてやった。
「でもね、今でも私のことを愛している、とかね。そんなふざけたことを言われてしまったら、じゃあどうして私以外の女に手を出したのって思うじゃない?」
もちろん説明してくれるのよね、と言ってから、頬を力の限り抓ってやった。
クロードが痛みに顔を歪める。その表情ですら、いちいち憎たらしく思えてならなかった。
「……あー、ライラ。ちょっといいか?」
ライラが、はらわたが煮えくり返ってどうにかなりそうになっているところに、ヴィリの遠慮がちな声が届いた。
「お前がそんなことをすると、そいつは喜ぶだけだからな。話し合うなら冷静にな、冷静に!」
落ち着いてから話をしろよ、と念を押すようにヴィリが言う。
ライラは慌ててクロードから手を離すと、ヴィリに向かってにこりと微笑んだ。
「まあ、殿下。私は落ち着いておりましてよ」
「まったく、あいかわらずお前はすぐに手が出る奴だな。落ち着いていないから、いつもそうなるのだろうが」
目の前の男をちゃんと見てみろ、と呆れた様子でヴィリに言われてしまい、ライラはクロードの顔をまじまじと覗き込む。すると、彼は頬を赤く染めてうつむいてしまった。
「ちょっと嫌だ。どうしてそんな反応をするのよ」
「……ようやく、ようやくお前が、こうして私に向かって食ってかかってくるようになったのだなと、そう思うとな。感慨深いというか、元気が出て良かったと……」
「うう、本当に何よ。気持ち悪いわね」
クロードは安堵したように深く息をはいてから両手で顔を覆った。頬を隠そうとしているらしいが、赤く染まっているのは頬だけではない。耳まで真っ赤なので、あまり意味がなかった。
ライラはそのクロードの仕草を見て、背筋が凍りついてしまった。
私が落ち込んでいたのはお前のせいでもあるのだからな、と言ってやりたいが、そんな言葉すら出てこなくなるほど気味が悪かった。
「もう、そういうのはいいからさっさと説明しなさいよ!」
ライラはクロードから離れるように後ずさりながら叫んだ。
ライラが自分の身体を抱きかかえるようにして震えていると、クロードがぽつりぽつりと語りだした。