目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第28話 フリースタイルダンジョン

 それは……まだ魔族と人とが憎しみ合い、血で血を洗うdisり合いに明け暮れていた時代の話っス。



……………………。



ボスのフロア前にて


勇者「ついにオレ達辿り着いたボスのフロアに」


魔術師「Yeah……」


勇者「この場所からついに手をかける最後のドアに」


僧侶「Wow…………」


勇者「オレ達三人!でいれば安心!それが肝心!覆す慢心!キレるガンジー!!」


魔術師「Yeah!!!!!」


勇者「さあ見せるぜ俺たちの集大成!エビバディセイ!!HOー!」


僧侶「HOー!!!」


勇者「セイYeahー!」


魔術師「Yeahー!!!」



勇者「yeah!!よし気合いも入ったし!いこーぜマイメンども!!!」


僧侶「ついにラストバトルね!!」


魔術師「Wow!ワシもやるんじゃああああああ!」


僧侶「魔術師!あなたもうおじいちゃんなんだから無理しちゃだめよ!」


魔術師「ガハハハハ!たしかに!!今日は勇者に任せようかのう!!」


勇者「任せてくれ!俺のリリックでボスをdisり倒してやるぜ!!さあ開くぜ!!!」



……………………。



ボスのフロア内


ズンズンズン♪ズンズンズンズン♪


オーディエンス「Yeahーーー!!!!!!!!!」


勇者「Wow……ハンパねえ重低音だぜ……これがボスのフロアか……」


僧侶「なんて凶悪なビート!!鼓膜が破れそう!!」


魔術師「なんの!ワシは平気じゃぞ!!!耳が遠いのでな!!」


ボス「Hey!よく来たな勇者のパーティ!!さあ始めようぜ俺とお前らの最後のパーティ!!」


オーディエンス「Yeahーーー!!!!」


勇者「wow……お前がボスか……教えてくれこのフロアのルールを」


ボス「バトルは勿論フリースタイル!俺とお前で交互に二回のラップ!勝敗はオーディエンスの盛り上がり!」


勇者「OK!見せてやるぜ勇者のライム!今から始まる討伐タイム!伝説になるぜ今夜のゲーム!!」


ボス「フッ……かかってこい勇者!この俺様のボスラップでお前を破壊!これが魔界!逃げたきゃ今のうちにGo To下界!!」


オーディエンス「Yeahーーー!!!!!!」


僧侶「ついに始まるわ……勇者とボスとのラストバトル……」


魔術師「wow……人間と魔族のプライドをかけたラップバトルじゃな…………」



……………………。



ボス「OK DJ!ビートカモン!!!」


ズンズンズンズン♪


僧侶「先攻はボスからね」


ボス「ここは俺達魔物の最後の楽園!みなで作り上げたラストパラダイス!種族問わないベストプレイス!脅かすヤツは俺が許さねえ!ボスの名に賭けてここは通さねえ!!!!!」


オーディエンス「Yeahーーー!!!!!!」


魔術師「流石はボスのフロウといったところじゃな…………」


僧侶「あっという間にオーディエンスの心を掴んだわね」


魔術師「オーディエンスは全員魔物……フェアにジャッジをするとは言っても自分たちを肯定するリリックを聞かされては一瞬で虜になってしまうのも致し方ない」


勇者「……………」


ボス「ここ乗り込んだ勇者パーティ!勇者僧侶にご老人!てめえらに大して恨みはねえ!てめえらの勇気はマジパネェ!だが向かってくるなら容赦はねえ!!テメエの本気を聴かせろ勇者!!!!!」


オーディエンス「Yeahーーー!!!!!!Wowー!!!!!!!」


僧侶「すごい………!」


魔術師「これがボスのラップじゃ……オーディエンスを味方につけるだけではなく対戦相手をもリスペクトしたラップ……disって相手を否定するラップではなく敵も含めたこの世の全てを肯定してフロアにいる全員の地点を高めていく伝説のラップじゃ……」


僧侶「なるほど。まさにボスに相応しい……リスペクトに値するラップだわ……」


魔術師「勇者には少し分が悪いかもしれんのう……」


僧侶「そ……そんなことないわ勇者だって!!」


魔術師「シッ……!始まるぞ、我らが勇者のラップが……!」



……………………。



ズンズンズンズン♪


僧侶「勇者……お願い……!」


勇者「YO!!!待たせたな愚かな劣等種ども!今宵お前らは絶望を知るぜ!俺の奏でる戦慄の調べ!最後に届くボス死亡のお知らせ!俺は人間界からやってきた勇者!神が使わす正義の使者!お前ら悪を滅ぼす使命!死神は今宵ボスをご指名!!!」


オーディエンス「…………」


僧侶「うわぁ最低」


魔術師「勇者のラップは口喧嘩じゃからな……リスペクトのかけらもない相手をdisりまくる勇者のラップはボスとの相性が悪すぎる……」


僧侶「オーディエンスまでdisってどうすんのよあのバカ……!」


勇者「てめえら魔物は人間の奴隷!黙って差し出せ汚れたその首!世界平和の為にレッツゴーヘル!てめえら消えれば仕事減る!!雑魚に囲まれた裸の王様!それがてめえだ終わったボスキャラ!!」


オーディエンス「BOOOOOOOOOOOO!!!!!」


勇者「クソ……こいつら…………!」


僧侶「完全にオーディエンスを敵に回したわね……なんであんなに排他的なのよあいつ」


魔術師「とはいえ勇者は口の悪さだけでここまで戦ってきたからのう……相手をdisり続けることしかできんのじゃ」


僧侶「なんで勇者やってんのかしらあいつ」



……………………。



ズンズンズンズン♪


魔術師「ボスの2回目のラップじゃ……」


ボス「ヘイヘイヘイ熱いな勇者!だがそのラップじゃ俺は倒せねえ!お前のラップには何かが足りねえ!それがお前にわかるか勇者!disとライムだけがラップじゃねえんだ!」


オーディエンス「Yeahーーー!!!!!!」


ボス「俺はこいつらと積み上げた今日まで!一人じゃないからこれたここまで!これが俺が賭けるプライド!この地下フロアを照らすbright!お前はどうだ孤独な勇者よ!!お前の全てをここに残せよ!!!」


オーディエンス「Yeahーーー!!!!!!」


魔術師「Wowーーーーーー!!!!!!!」


僧侶「ちょっとなにあんたまでノッてんのよ!」


魔術師「ああすまぬ……ボスのラップに感動してしまって…………」


僧侶「このままじゃ勇者負けちゃうわよ!!」


魔術師「うむ……勇者に残されたチャンスはあと一回……これで覆すことはかなり厳しい…………」


僧侶「覆してもらわないと困るのよ……せっかくここまで来たのに…………」


魔術師「ボスのラップへ良いアンサーを返せるといいんじゃが……」



……………………。



ズンズンズンズン♪


僧侶「頼んだわよ勇者!最高のラップを見せて!」


勇者「あああああうるせえうるせえ魔物のくせに!!!!!」


僧侶「最悪だわあいつ」


勇者「魔物が一丁前に語んなプライド!てめえら俺にかかればチキンザフライド!美味しく食ってやるから覚悟しな!!」


オーディエンス「BOOOOOOOOOO!!!」


勇者「俺は自分の力と才能でここまできた!てめえら魔物とはレベルが違う!俺一人の力でてめえを倒す!!それが勇者のやり方!!今から俺が……てめえを…………えっと………」


魔術師「詰まった……!」


僧侶「勇者!!!!!!」


勇者「俺は高貴な勇者だ……てめえらみたいな陰気な魔物に…………えっと……クソ……」


オーディエンス「BOOOOOOO!!!!!!!!!!!」


勇者「クソ……もう…………」


僧侶「…………」ダッ!


魔術師「僧侶!?」


僧侶「私は僧侶!勇者パーティの紅一点!!でも私もボスとは同意見!!私も聴きたい勇者のラップ!!魂込めた本気のリリック!!」


オーディエンス「…………wow……」


勇者「僧侶…………」


魔術師「やれやれ……全く仕方がないのう…………」ザッ


勇者「魔術師!?お前まで……!」


魔術師「ワシ、か弱い魔術師!齢、七十四よわいしちじゅうし!ガチで高齢!マジの老眼!それでも何も怖いもん無し!三人でいるからずっとマシ!全員で渡ろう夢の橋!見せてくれ勇者このワシに!!いつか託した夢の続き!!」


オーディエンス「Yeahーーーーーーー!!!!!!!!!!」


勇者「オーディエンスの心が……戻ってきている…………?」


魔術師「ゲホッ!!ゲッホ……!!」


僧侶「魔術師!!大丈夫!?」


魔術師「ハァ……ハァ……勇者……ワシらにできるのはここまでじゃ……後はお前さんにしかできん……魂を込めたお前さんの本気のリリックをぶつけてくるのじゃ…………」


僧侶「そうよ勇者!!後期高齢者に無理させてんだからさっきみたいな無様なラップで負けたら承知しないわよ!!!」


魔術師「まだギリ前期……」


勇者「二人とも……ありがとう……俺の姿見ていてくれ…………ヘイカモンDJ!!」


ボス「何か掴んだようだな……よかろう……勇者!!もう一度最後のラップをぶつけてみろ!!」



……………………。



ズンズンズンズン♪


勇者「YO!ボス!待たせたな最後にして最強のライバル!ここに本物の勇者がアライバル!幕開けようぜ俺たちのカーニバル!!」


オーディエンス「Yeahーーーー!!!!Wowーーー!!!!!!」


 そうだ……この感覚だ……俺はいつからこれを忘れてしまっていたんだろう…………。


勇者「お前はマジで最強のエネミー!でも負けてねえぜ俺の最高の仲間ホーミー!!」


 最初はただ歌うだけで楽しかった…………俺の存在価値をステージに感じるだけで幸せだった……。


勇者「彼女は僧侶!最高のヒーラー!金髪美女で惚れちまうぜウィーアー!」


僧侶「勇者………」


 でもいつしかラップは魔物を攻撃するための手段になり……段々とただ敵をdisることだけを考えるようになってしまった…………。


勇者「最後は魔術師!最高齢にして最高メン!豪気で高貴で後期なホーミー!」


魔術師「だから前期じゃって…………」


 disるたびに相手を見下し……魔物を蔑み……自分を特別だと思い込み仲間すらもおざなりにして…………でもそれは間違っていた……俺は何も成し遂げてなんていない…………魔物をぶっ倒すことが勇者の役割じゃない……俺は……俺は…………!


勇者「これが俺たち勇者パーティ!永遠とわに続けと願うWish a Story!!ついてきたい奴らは手を挙げな!!!魔物も人間もカンケーねえ!!ボスも勇者もカンケーねえ!!!今この瞬間から始まる伝説!!これが俺の魂の演説!!手を叩け!!!手を叩け!!!!新たな世界始めようぜホーミー!!!!!」


 俺は勇者!!!

 魔物と人間の架け橋となり世界を平和にするために生まれた勇者だ!!!!!


オーディエンス「Yeahーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!Wowーーーーーーー!!!!!!!!!!」



……………………。



勇者「ハァ………ハァ…………ハァ……………」


僧侶「勇者!!!」ガバッ


勇者「うおっとっとっ」


魔術師「よくやったのう勇者!!!!」


勇者「ハハハ……二人のおかげだよ…………」


ボス「ヘイ勇者!悔しいが最高のラップだったぜ…………お前の勝ちだ!」


勇者「ボス……どうかな……俺は一回多く歌っちゃったしな…………」


ボス「関係ねえよ!オーディエンスの歓声がお前の勝ちだと言ってるんだ」


勇者「…………なあボス。もう一度だけ歌わないか?できれば一緒に……魔族と人間の……種族を超えたラップを」


ボス「OK!!望むところだぜ!!構わねえかみんな!?」


オーディエンス「Yeahーーーー!!!」


魔術師&僧侶「「Wowーーーー!!!!!!」」


勇者「よしいくぜメーン!!!」


ボス「Yeah!!」


勇者&ボス「「Come on DJ!!!!!」」




……………………。





勇者「これがオレ達、HIPHOPグループ『勇者パーティwith ボス』の始まりっスね………………」


記者「…………流石に無理ありません?」



この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?