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第8話 戦士の憂鬱〜魔王はじめました〜

 はぁ ー疲れた……今日は久しぶりにあそこで呑んで帰るか。

 お、やってるやってる。ん……?へーこんなのやってんのか今。


 こんちわーす。あー大将ご無沙汰してますー。いやー仕事忙しくて……あ、じゃあ正面のカウンター座っちゃっていいっすかね。特等席。


 ふぅ……あっ、いやもう初っ端からお酒もらっちゃおうかな?

 いやー僕ももう若くないんで、ちびちびといきますよ。うん。あっ、じゃあその魔王殺しを、そうだな……人肌で。


 いーやー、もう全然っすよ。最近は無駄に忙しいばっかりで全然儲かってないですよホント……。

 ほら、僕らの仕事クエストこなしてナンボでしょ?そもそもクエストが減ってるんでそこ探すとこからですもん最近はもっぱら。


 昔はこんなこと……おおっ、ヤーゴの味噌漬けっすか。いただきます。

 うんま……で、魔王殺しを……ふぅーホッとするなあ。


 そうすねえ……とりあえずナリの煮込みとクーンの酢の物ください。


 そうそう、それで最近クエスト減ってて。なんかそもそもの魔物の量がこの数年でガクッと落ちてきてるんですよねえ。

 幹部も年々減少傾向だし最近じゃ四天王も……あっ、いただきまーす。


 美味い!俺大将の作る煮込み大好きなんですよー!いや、俺もナリ狩ったとき作ってみたりするんすけど、こんな美味くならないですもん!


 えっ、今日イクレアス入ってんすか!わーまじですか!じゃあ頂いちゃおうかな!んーじゃあ塩で!


 いやーイクレアス食べられるなんてラッキーだなあ。今日きてよかったわホント。

 俺やっぱこの店好きっすわー。大将の腕ももちろんなんだけどなんたって鮮度が他とは段違いですもんね。


 なんかルートとかあるんすか?……えっ?ここの食材って大将が朝に獲ってきてんすかマジっすか。いやそりゃ美味しいはずだわー新鮮だもの。


 ……ふぅー。あー沁みるわ。魔王殺し。


 あっ、いやそれでね、クエスト無いと稼ぎになんないからって最近なにやってると思います……?僕ら。 営業っすよ営業。

 そう、マジで。色んなお家回ってクエスト無いっすかーって……ざけんなっつの。

 でしょでしょでしょ?こんなことやるために冒険者やってんじゃねえよって話っすよマジで。


 で!うちの勇者が!『お前らクエスト取ってくるまで帰ってくんな』って毎日毎日怒鳴り散らしてもう……。


 ふざけんなよじゃあテメエが取ってこいや!こちとら戦士やぞセールスマンちゃうねんぞボケ!カスが!

 ……はあマジ死なねーかな勇者。死んでも復活してくるけど。


 あっいや、ホントすいません!また大将に愚痴ばっかりこぼして……!

 マジ、この店俺の唯一の安らぎの場なんすよ。いやいやいや、ホントマジ感謝っす。


 そうっすねえー。まあ確かにそこはおっしゃる通りで、魔王がいてくれてる限りは魔物は生まれてくるんすよね。

 今なんで減ってるかよくわかんないっすけど、ここ耐えればまた冒険者の時代が来るかなあってのは僕もあるんで、なんとか我慢できてるって言うか。


 いやホント魔王さまさまっすよ。俺らが食いっぱぐれないよう長生きしてくれよって感じっす。


 おぉー!イクレアスだ!!いやー、久しぶに食うわ。新人の頃勇者に連れてってもらった店で食って以来かなあ。

 うっま……やばいこれすすむわ……。


 ん?大将なんすかあのギガンダルスって。そうそう……あの黒板の……本日のおすすめの……え!?マジッすか!ギガン……ってあの?幹部の!?


 いやー俺はいいっすいいっす。イクレアスで十分なんで。いやホント、懐がガチで最近寂しいので流石に幹部は厳しいっすわ。出世したら頼みますわ。


 はぁー……あっ、なんか気づいたら客俺だけっすね。すいません大丈夫っすか?なんか長居しちゃってて……。

 いやあ、そう言ってもらえるとマジありがたいっす。最近家帰っても寂しいんすもん。一人だし。


 うーんそっちは無理そうっすね……まず出会いがない!この仕事思ったより全然出会いが無い!野郎ばっか!!


 はぁー泣きそ……え?なんすかとっておきって……え!?四種の四天王の活け造り!?!?!?ちょっ、こんな高級なもの……


 いやいやいや、さっきも言った通り俺そんなお金……え!?タダでいいんすか!?

 頑張ってる俺へのここだけのサービスって……大将俺ちょっと泣いていいすか……すいません……はい。

 はい……頑張ります…………ありがとうございます…………。


 うわぁ……これが本物の四天王……初めて見ました……すっごいプリプリっすね……まだ少し動いてる……。 

 これ、天然物っすか?あ、これも今朝大将が……新鮮だぁ。


 なんか、凄すぎて逆に大丈夫なんすかこれ。条例とか。いや、四天王ってめっちゃ貴重で獲れないって聞いたことあるんで……。

 はい、世界で四匹しかいないらしいっす。マジっすマジっす。俺も最近知ったんすけど。


 俺こんなん食べちゃっていいんすかねえ……しかもタダで…………そうっすね……せっかく大将がご馳走してくれるんですもんね。うん。今日は何もかも忘れて食べます!


 いただきます!!


 うおっ、この甘み……歯ごたえ……すごい……口の中が四天王の香りだ…………クゥー!またこれが魔王殺しとよく合う……!!やばいっす、溶けるっす。これマジで……。


 はぁーごちそうさまでした……大将……俺明日からまた仕事頑張ります。

 はい、クエストでも営業でも精一杯やってお金稼いで、次はこのお店にちゃんとお金払って高い魔物食べに来ます!!


 え?デザート?

 あー嬉しいっす!僕甘いもの大好きなんで。


 えっ!?魔王プリン!?あっ!表に旗が立ってたあれっすか…………あのーちなみにそれはどういう…………。


 うん……魔王特有ののきめ細やかな舌触りと……もちもちとした食感と……コクのある甘みを…………………?


 イメージして作られたプリン?あ、なるほど!


 ならよかった。


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