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第2話 神官の憂鬱

『おお勇者よ死んでしまうとは情けない……!』


『君達の新たな旅の始まりに神のご加護があらんことを…………』


…………。


 はぁー…………

 だいぶ溜まってきたなあ、棺桶。

 次のゴミの日に出すかあ。

 てかなんでこれうちが処分しなきゃいけないの。絶対おかしいでしょ。

 王国側が回収しに来いよ。処分費用もバカになんねえんだよ。

 しかも短時間とはいえ死体が入ってたから夏場とか溜めすぎると臭いわなんか湧くわでほんと……


 そもそも、これどういうシステムでできてんの?

 冒険者たちはこんなの持ち歩かないのに、死んだらこれに入ってうちに来るの意味わかんない。死と同時に勝手に出来上がるようにプログラムされてんのかな?

 だったら生き返ったと同時に消えろよふざけんなよ。なに粗大ゴミになってんだよ。

 てかあいつら死んだ記念に持って帰れよ。部屋の隅にでも飾っとけ。


 あーこの仕事辞めたい。

 でも辞められないんだよなあ……。


 そもそも暗いんだよこの仕事。

 毎日100体以上死体が職場に来るとか頭おかしなるわほんとに。

 そら蘇生魔法唱えるだけだし仕事は簡単だけどさあ。

 死体マジでグロいし……臭いし……。

 てか死にすぎだろあいつら。殺しまくるわ死にまくるわで死生観おかしくなってんよ絶対。

 バカの一つ覚えみたいに攻撃系にばっかステ振ってるからこういうことになんだよ。

 もっとリスクマネジメントとか覚えろバカども。学べ。本とか読め。


 あー本当やめたいこの仕事。

 でも辞められないしなあ……。


ピンポーン


 あぁ……またか……。


 『はーいご苦労様ですー。あっ、ここですね。印鑑でいいです?はいどうもー』



 またきたよ死体……。

 ええと……?勇者パーティ四体か。

 平均レベル30であのダンジョン行ったのかよこいつらアホだろ。


 うわぁ…エグ……。

 てか装備軽すぎだろそら死ぬわ。剣ばっか上等なもん持ちやがって。


 てか勇者以外全員女かよ。

 人がこんな暗いとこでせっせせっせと死体に呪文かけてる間にこいつはハーレムパーティでイチャコライチャコラしとったわけか。

 ふざけんなよマジ死ねよ。

 あぁ死んでんのか。


 まあいいや、とりあえず蘇生魔法……っとあぶねえあぶねえ、大事なこと忘れるとこだったわ。


 えぇと…多分勇者の腰のあたりに……あった!

 ひーふーみーと………チッしけてんな。

 えー全財産14562Gだから……キリのいいところで15000。いや、16000てことでいいな。どうせわかんねえだろ。バカだから。

 じゃあ8000G貰ってと……よし、準備OK。


…………。



『君達に神のご加護があらんことを……!』


 はーいじゃあねー。

 もう死ぬなよー。


 ふーよし、今日の仕事終わり!

 ええと今日の利益は57万Gと……。

 魔法唱えるだけで1日57万か……。


 ……やっぱやめられねえよなあこの仕事。

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