魂同士が導かれるように惹かれ合うという意味が……このとき、わかった気がする。
夜の帳がおりる頃。愛を誓い合った二人は、視線を絡ませ合った。
「これからもおまえは俺の側にいろ。永遠に……ずっとだ」
尊大かつ高慢な物言いは、【最初】に出会った頃の彼らしい。そのときはまだ彼のことがわからなくて受け入れられなかったけれど、今では彼のそんな態度すら愛おしく思う。
なぜなら、彼の言葉には愛着を込めたやさしさが滲んでいて、彼に深く愛されていることを否応なしに実感してしまうからだ。
本来ならば、祖国と敵対する可能性があった国の、いずれ王になる人なのだ、彼は。
それなのに、惹かれてしまった。
あの日【初恋】の人を追いかけて自国の王太子の一番目の花嫁候補になろうとした自分はどこへ消えてしまったのだろう。
そのときは、こんな未来があるなんて想像もしていなかった。
でも、今は、もう抗えない。
見つめる瞳に捕えられれば、燃えるように胸が熱くなり、どうしても貴方ではないとダメだと、全身が粟立つ。
新たな【運命】はここからはじまる。そんな甘い予感に脳が痺れたようになった。
(ええ。あなたの側にいるわ。永遠に……ずっと)
同じ言葉を返したくて、彼への愛おしさに震える唇を開こうとした――そのとき。
唐突にその運命は終わりを告げた。
「っ……!」
愛しい彼の胸に抱きしめられて顔を上げると、彼が苦悶の表情を浮かべていることに気付く。
何が起こったのか、すぐには理解が及ばなかった。
そうしているうちに、彼はずるりとその場に崩れ落ちていく。
さっきまで熱を帯びていたはずのその瞳は、既に虚空を見つめていた。
「そんな! いやっ!」
わけもわからずに泣き縋っていると、側で嗤う声が響き渡った。
ハッとして背後の闇に目を凝らす。
血を啜るような銀色の刃を携えた、緋色の瞳がこちらに向けられていた。
「残念だったね。君は他の誰のものでもないことを覚えておくといいよ。姫君」
夜闇に浮かぶ赤い月が鈍色の海を照らしているかのような、現実味のない世界で、酷薄な彼のシルエットが映し出される。
警告するように、どこかでチリンと鈴の音が鳴った。
「――貴方は」
「さあ、こちらへおいで」
その先の意識は、足元に広がる血の海に引きずられるように暗黒の【世界】へと転じていったのだった。
そうして、時はまた戻される。
何度も、何度でも、ループを繰り返しながら、あるべき世界を求めて。