大森みさき
恋愛現代恋愛
2025年01月08日
公開日
5.8万字
連載中
戸倉灯里(とくらあかり)、24歳。大学卒業後に2年勤めた会社を人員削減でやめ、失業中に豊宮一輝(とよみやかずき)と出会う。圧倒的なオーラを放つ彼は8歳年上で、世界に名を轟かせる豊宮グループの御曹司。灯里を気に入った様子で、秘書として採用する。強引でろくに説明もしないのに、灯里のことをよく見ていて優しい。出会ったその日に甘い雰囲気になり、身を任せてしまう。だが一輝が灯里を必要としたのは、婚約者を装わせるためだった。
嘘をつくことに罪悪感を抱きながらも、一輝との日々は甘くて楽しい。灯里はそれまで、元々の性格や弟の失踪などもあって、物事にのめり込まないようにして生きてきた。激しい恋も知らない。しかし一輝との時間の中で、心が生き生きと動き始める。
バレンタイン、ホワイトデー、お互いの誕生日など、イベントを通して仲が深まっていく二人。そこに忍び寄る影。有能すぎる一輝は命を狙われることが多く、灯里もその渦に否応なしに巻き込まれていく―ー。
月水金の零時更新。
プロローグ
「灯里!」
一輝さんの声が聞こえる。あわててる。自分の体が引き裂かれる苦しみに悲鳴を上げているかのよう。おかしいな……撃たれたのは私、なのにね……。
「灯里、目を開けろ、開けてくれっ」
無理……意識が遠くなっていく。あなたは無事? よかった……。
「俺を置いていくな!」
泣いているの? 大丈夫、あなたは何もなくさない。妻も家族も、何一つ。
この結婚は、嘘だったのだから――。