朝、食パンの上にからしマヨソースを塗ってレタスとハムを載せてホットサンドメーカーでホットサンドを作ったので食べていた。アイスコーヒーも飲む。いつもと同じ、休日の爽やかなグッドモーニングだ。モグモグと咀嚼しているときにそれは起こった。
ゴロン。
口の中に違和感を感じる。
硬い物が口の中にある。
ん?
石?
ホットサンドに石入ってた?
ゴロンゴロンと石が舌の真ん中に移動してきた。
サーッと血の気が引いた。
あ、これ歯だわ。
気づいた途端食欲は一気に消え失せて、冷や汗が出た。
手のひらにペッと吐き出す。
お、お、お、奥歯やないかーい!
皮肉にも、以前ガチャガチャを回したら出た金の奥歯モチーフのおもちゃ(土台の歯茎から取り外し可能)がテーブルの上でキンキラキンと存在を主張していた。
洗面所にいき、恐る恐る鏡の前で口を開けて確認する。
…
奥歯があったであろう場所にぽっかり空いた、穴。
わたしは歯医者さんの診察券を取り出した。
受付時間は9時から…
現在8時20分。
よし。9時になったら即予約入れよ…。
[歯が抜けた人 どうなる]
[歯が抜けた人 末路]
[入れ歯]
[20代で歯が抜ける 総入れ歯になる確率]
[歯がない 切ない]
わたしは9時になるまで涙目で歯について検索していた。
そして
9時…いや、きもち8時59分に歯医者に電話を掛けた。
「あの、診察の予約を取りたいのですが」
「最短でのご予約は3週間後の×月×日木曜日となります」
「あっあの、奥歯が抜けたんですが、そんなに放置しても大丈夫ですか?」
「しばらくお待ちください」
無機質で淡々とした受付のお姉さんの対応。
冷たっ!
こっちは奥歯が抜け落ちてんだよお!?
3週間後って…歯茎が腐ったらどうすんだ!!!(?)
とわたしは内心焦りに焦っていた。
「カルテを参照した結果、特に問題ありませんね。噛んだりしにくいとは思いますが…3週間後の×月×日木曜日の午後4時20分からのご予約が最短です」
「あっわかりました、よろしくお願いします」
問題ないのか?
カルテ参照ってワードに若干心が安らぐ。
わたしは開き直った。
2日経ったら違和感はあまりかんじなくなった。しかし食事は食べづらい、柔らかなものしか受け付けなかったが無事な奥歯側で噛みなんとかしのいだ。
そして診察日。
歯科医の先生にペーパーで包んだ抜けた歯を渡して見せた。
あー…なるほどなるほど、と頷きながら歯を色んな角度で隅々まで眺めまわす先生。
まるでルービックキューブしてる人とかプラモデル組み立ててる人とかハンバーガーどこから食べるか考えてる人のようだ。
なめらかに再起不能だと告げてきそうな、その軽やかさがおっかない。
「これ被せ物だからね、ちとゴツめだから抜けた歯に見えんことはないけけどね」
…
あの…
それをはやく言わんかい…
3週間に渡って抱え寄り添い続けた不安に、あっかんべーおしりぺんぺん!とされた気分だ…
医療の力を借り、治療後わたしの奥歯は復活した。
ごはんが快適に食べれるのって、有り難い!ごはんがおいしい!わたしは2キロ太りました。
健康な歯ありきの美味しいごはんです。
これからは歯とのコミュニケーション(歯磨き)をより丁寧に行おう。
歯にはとびきり優しくあろう。口に入れた瞬間飴をバリバリ噛み砕くのとかもうやめにしよう。
一本一本の歯…全てがわたしの相棒だ!
わたしたちの冒険はまだまだこれからだ!