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つかわしめ戦記ゆめ語り
つかわしめ戦記ゆめ語り
りほこ
異世界恋愛和風・中華
2025年01月07日
公開日
3.4万字
連載中
ある満月の夜、眠りにつこうとしていた美月睡蓮は不思議な声を聞く。その声に導かれ睡蓮がやって来たのは、幼馴染みの社家である稲荷大社だった。そこで出会った一匹の八咫烏・太秦に陽の巫女であることを告げられた睡蓮は、幼馴染みの昂と一緒にヤマトとハヤトの思想が二分する、使婢に護られた世界・倭に顕現した。
元の世界へと戻る条件でもある、太陽の化身の大御神を再び降臨させるため、怨霊の浄化をすることになった睡蓮だが…

プロローグ

 涼やかな音に誘われ、美月睡蓮みつきすいれんは目を覚ます。

 仰向けのまま、ぼぉっと眺めた。

 カーテンも窓も開けっ放し。

 窓際に吊るした風鈴が、抜けるような青空を背景に小さく揺れていた。


「どんな夢を見ていましたっけ……」


 そう呟いて額に乗せた手が触れたのは、汗ばんで濡れる前髪だ。ここが豊富な木々に囲まれている場所とはいえ、扇風機だけでは到底暑さを凌げない。


 睡蓮は布団から上体を起こしてタオルケットを剥ぎ、肩から落ちたキャミソールの紐を直すと、胸元を摘まんでパタパタと風を送った。


「ふぅ……とても暑いです。ですが素晴らしいお天気のお陰で、たくさんお洗濯が出来ちゃいますねっ」


 気怠い暑さを吹き飛ばすように、睡蓮はぴょんと畳の上へ立ち上がる。

 壁に寄せた低い机の前まで進むと、祖母が手縫いをしたという、色彩豊かなパッチワークの座布団の上に睡蓮は座った。

 睡蓮は机を飾る雑貨の一つ。手毬柄の和紙が貼られた小物入れへと視線を移し、引き出しの中にある髪ゴムを取ると、うなじに張り付く肩までの黒髪を、漆塗りの櫛を使って高い位置で結ぶ。

 それから窓へ向かい、両腕をぐーんと伸ばして草木や太陽の匂いを睡蓮は胸いっぱいに取り込んだ。


「お父さんお母さん、おはようございます。私は元気ですよ」


 すると二回。

 太陽の光が睡蓮の笑顔に応えるように、きらっと輝いたのだった。

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