確かに、確かにだ。流石に悪いことをしたとは思う。
調査隊に属するということが一種のステータスとして捉えられていたなら猶更だ。
「50人がどうしたら5人になるんですか……」
調査隊のブリーフィングへやってきてみれば思わず耳を疑ってしまった。
そうとも、悪いことをしたかな、顔に泥塗ってしまったなとは思う。
だが、勝手に戦うまでもなく腰を抜かしたのはそっちだし、何ならビビった程度で捨て去れるステータスなんてあってもなくても同じだろうに。どうしてここまで減った。
「そう言うな。量は質で補えばいい話だ」
「あ、あたし……せ、先生の期待に応えられる、かなぁ?」
「はっはっはっ! こうっては何だが! 無駄死にの可能性を減らせたと思えば悪いものではないね!」
俺、ルルさん、クルスを含めての5人だ。
量は質で補えばいいと先生は言うが、補える質を持っているとはまだ言えないだろう。
何より物量は正義でもある。
人間を資源として捉えた場合、必要な数というものはあるのだ。
「微力を尽くします。それで、残っているお二人はどちらに?」
「これを機に調査隊を分隊制にしようということになってな。残りの二人はいずれも三年生だが、今は各自で自分の調査隊員を集めてもらっている」
「分隊制ですか。班分けのようなものと考えても?」
「ああ。今行っている森の調査に限らず、今後は班の総合的な力量に応じて担当を振り分ける形になる」
良い落としどころだと思う。
正直なところ、実際の力量差は別にしてああいう実力の示し方をしてしまったんだ、お互いのチーム間に協調性だ連帯感は生まれにくいだろう。
残った二人がどういう人なのかはわからないけど、少なくともアレを見て残ると決めた人たちだ。
いずれ最低限の連携ができればいいんだけどな。
「では本題に入りたいがその前に、キサマ達の班のリーダーを決めてもらおうか」
「そりゃもう」
「リーダーはルージュ以外にいないだろうとも」
「……まぁ、気持ちはわかるけれど」
順当な形ではあるが、いろいろな意味であまりよろしくはない。
リーダーという立場にいることで余計な仕事が増えて、回復魔法を学ぶ時間が削られるかもしれない懸念っていうのはもちろんあるけど、そんな個人的な理由だけではなく。
「わかるけど? え? やってくれないの? あたし、ルージュ君がリーダーだと安心できる――あっ! ううん!? クルス君が頼りないって意味じゃなくてね!?」
「気遣われた方が反応に困るというものだね。僕もそうだ、実力一つとってもルージュがすべきだと思うし。キミの指示になら従える」
「信頼してくれるのは嬉しい。けど、そういう風に思ってもらえているならこそ言うが。この班のリーダーはルルさんであるべきだ」
「えぁっ!? あたしっ!?」
自惚れではなく俺じゃあ皆を完璧に使ってしまう。
これでも宮廷魔法使いの中から選抜された極魔、更に炎魔法を得意とする部隊、獄炎隊を配下に置く人間だ。当たり前にそいつの能力を見極めて使うなんてことはやってきた。
得意だ苦手だなんて言える立場でもなければ、言ってる場合でもなかった中で、否応なしに身についてしまうことは多い。
適性を見極め育てて導くこともできるさ。
けどそれは戦いに適した人間へという前提あってのことで、平和の中に生きて欲しい人たちを導いていい場所じゃない。
「これから新しい班員が増えるかは置いておくにしても、この班の力はルルさんという存在に大きく左右されることになる」
「……そう、だね。ルルさんをパラレル・キャストを介してこそあの威力になるんだ。術者が僕である必要はないんだし。ルルさんがどこにいるかは極めて重要だ」
「け、けどっ!」
「つまりは決する力を持つのはルルさんであり、核と言える存在だ。そういう人間こそがリーダーになるべきだと思う。……責任逃れをするつもりはないけど、サポートはきっちりする。凄い魔法使いになるついでに、凄い人間ってやつも目指してみたらどうだろう?」
言葉を詰まらせるルルさんには少し申し訳ないとは思う。
それでも、戦い以外の未来が開けた今だから。
ルルさんも、もしかしたらクルスも。自分で未来を選んでいい、選ぶ力を身に着けるべきだ。
「……やっぱり、そういうことを言えちゃうルージュ君がリーダーになるべき、だと思う、けど」
「うん」
「すーはー……こ、後悔してもしらないよ! も、文句も受け付けないからね!」
その場の勢い任せ、精神的な未熟さ。
そういうものがルルさんを突き動かしているなんて百も承知だけれど。
虚も貫けば実となる。
成長とは少し昇るのに苦労する階段に足をかけること。
「覚悟しとくよ」
「あぁ、もちろん僕もだ」
「~~っ!! な、なら早速リーダー命令! ルージュ君もクルス君もあたしを呼び捨てにするように! あ、あたしもそうするから!」
……なんともまぁ、可愛らしい命令にクルスと二人で笑って。
「「かしこまりました、お嬢様」」
「呼び捨てにしてって言ってるの!!」
わざとらしく、片膝を着いてみた。