年が明け、鈴木は部屋を正式に契約し、2月末の引っ越しに向け準備を始めた。
海外の部屋は、鈴木と入れ替わりで行く人が使用するため、家具家電は新たに買い直しにとなり準備する物も多い。
持って帰ってくる荷物や衣類や個人PCなど必要最低限の私物のみだ。
早めに新居の鍵を預かり、海外からの荷物や新生活で必要な荷物を置くことにした。早苗も週末は新居に足を運び掃除をしたりできる限りのサポートをした。
「浩太、この箱はどこに置けばいい?」
「クローゼットの中に入れてくれるかな」
「分かった」
ネットでも注文したため、週末には各社宅配便の人が荷物を届けてくれた。二人は協力しながら荷物を整理していく。
こうして2月末、簡単な荷物の搬入を終わらせ鈴木は無事に新しい部屋での生活をスタートさせた。まだ何もないガランとした部屋をこれから鈴木の部屋へと作り上げていく。
3月、鈴木は日本と海外を行ったり来たりの生活だ。週末は家具を見に行き少しずつ人が住む部屋へと変わっていった。
「浩太、このソファーの色、すごく素敵じゃない?部屋にも合いそうだし」
「ああ、いいね。座り心地も悪くないし、これにしようか」
早苗と鈴木はリビングに置くソファーを選んでいた。二人が選んだのはシンプルで機能的なものばかりだ。
鈴木は、今後のことを考えて一人向けではなくベッドはセミダブル、ソファーは2人用の大きめ、家電はファミリー用を選んでいた。
「ねえ、浩太。この棚キッチンの隅に置いたらどうかな?収納も増えるし使いやすそうじゃない?」
「うん、いいね。」
早苗はキッチンのレイアウトを考え、鈴木は嬉しそうに答えた。
ガランとしていた部屋は、ライトベージュとアイボリーを基調とした温かく優しい居心地の良い空間へと変わっていく。窓辺には早苗が育てている観葉植物が置かれた。
「浩太、このラグすごく肌触りがいいよ。リビングに敷いたら裸足で過ごせるね」
「ああ、いいね。色合いも部屋に合ってるしこれにしよう」
リビングの床に敷くラグも選ぶ。高価な物ではなくても、選んだものたちはどれも温かみがあり、二人の生活を豊かにするものばかりだ。
週末の度に、家具店や雑貨店を巡り少しずつ部屋を彩っていった。
「浩太、このカーテン素敵じゃない?レースが綺麗。部屋全体が明るくなるね」
「ああ、いいね。カーテンでだいぶ雰囲気変わるね、本当にすごいな」
鈴木は、早苗が選んだカーテンを窓辺にかけ部屋全体を見渡した。
何もなく味気のなかった新しい部屋は、お気に入りの家具家電で少しずつ二人の色に染まっていった。
それは、まるで二人の未来を象徴しているかのようだった。 二人はこの部屋でたくさんの思い出を重ねていくのだろう。
熱のない部屋は、これから二人の手で温かみのある熱にあふれた部屋を作っていくのだろう。そんな未来を思い描きながら二人は幸せな時間を過ごしていた。