翌朝、コーヒーを飲みながらトーストを食べているとおもむろに鈴木が背筋を伸ばし座り直した。
「なあ、早苗。ちょっと相談したいことがあるんだけど」
「うん、どうしたの?」
改まって言うので、何を言われるか緊張していると
「年明けには帰国するから、新しい部屋を探そうと思ってるんだ」
「そうだね。どんな部屋がいいとか希望はあるの?」
「まだ具体的には決めてないんだけど」
鈴木は、少し考え込んでから言った。
「でも、これから早苗が来る機会も増えるだろうから早苗の意見も聞きたいと思って」
「え、私に?」
早苗は、少し驚いたように目を見開いた。
「ああ。早苗も気に入るような部屋にしたいんだ」
鈴木は真剣な眼差しで早苗を見つめた。
「ありがとう」
早苗は、 新しい部屋に早苗も使う前提で考えてくれていることが嬉しかった。
少し考えてから話し始める。
「キッチンは広い方がいいな。二人でも料理できるようにカウンターキッチンとかにも憧れる。あとは、スーパーが近くにあると便利かな」
「ありがとう。俺も見るけど早苗も物件見てくれない?良いところあったら教えて」
「浩太は要望ないの?」
「ん?ユニットバス以外ならOK!(笑)」
「あっさりしてるね。」
「んーー。家で仕事もあるからWifi無料だと助かるかな。」
「それ大事だね。」
「あとクローゼットはウォークインだと収納便利そう。」
「要望、色々出てきた(笑)それなら今日は賃貸探しにいかない?色々見れてイメージ湧くかも!」
「いいね!付き合ってくれる?」
「もちろん。間取りとか見るの面白いし」
支度をして不動産屋に出掛ける。
「今回はお二人で住む物件をお探しですか?」
「あ……いや、一人暮らし用の物件を探しています。今、仕事で海外にいて半年後に戻ってくる予定なのでその時の部屋を探していて……。」
鈴木はどんな物件を探しているか、入居時期や先ほど伝えた要望を一つずつ伝えていく。入居希望までまだ時間があるため、今回は物件情報だけ印刷してもらい、あとはメールでのやり取りとなった。
「二人暮らしって聞かれたね」
近くのカフェでランチをしながら早苗は話を振った。
「ああ、そうだよな。最初は、え?と思ったけど二人で来店したらそう思うよな」
鈴木も苦笑している。
「でも、言われて二人で暮らしたらどうなるんだろうとか考えたなー」
パスタをフォークで巻きながらあっけらかんと鈴木が言う。
「え???」
「あ、その、今すぐ一緒に住もうとかじゃなくてさ、その……将来的にさ……」
鈴木は早苗の反応を見て、自分の言ったことの重みに気づいたらしい。
「そうなったらいいなと思っている。でもその時はちゃんと段階踏んで、こんなフランクな感じじゃなくてしっかりと言うから」
口の周りを拭いてから真剣な顔をして顔で言う鈴木を見て早苗はドキッとした。
「うん、ありがとう。」
「今回は1人暮らし用だけどさ、早苗も頻繁に来るなら1LDKの広い物件にしようと思ったんだけどどうかな?」
「いいね、でも家賃高くない?」
「大丈夫、その分稼ぐから(笑)」
「さすが浩太。仕事出来る人は違うねーー。」
お互い冗談で最後は濁したが、いつかは同じ部屋で毎日を共にする……鈴木も早苗も同じ未来の姿を描いていた。