「え!!!そうだったの?」
早苗は驚いて顔を鈴木の方に向けようとすると、唇を重ねられてしまいそれ以上喋れなかった。
「ん……。」
「今は見ちゃダメ。」
意地悪く微笑んで鈴木がまた唇を重ねる。
今、早苗はソファで鈴木の足の間に座り、後ろから鈴木に抱きしめられている。
包み込まれるように抱くので、早苗は手を鈴木の太ももに置き身動きが取れない。
30分前、食事が終わりソファでくつろいでいたがもっとお互いのことを知っていきたいと早苗は真剣な面持ちで鈴木に伝えた。
『私、浩太の事もっと知りたい。楽しさだけを共有するんじゃなくて、浩太の価値観や嫌だったことや悔しかったことも聞きたい。一緒に悔しがったり受け止めたい。』
最初は無言で手を組んで聞いていた鈴木だったが、早苗の言葉を聞き優しい声で言った。
「な、こっち来て。」
隣同士で座っていたが、手をひいて自分の足の間に座るよう促し、後ろからやさしく抱きしめた。首元を唇で触れるか触れないかくらいの絶妙なバランスで撫でてくる。くすぐったさと背中越しに鈴木の温かさが伝わってくる。
「なんかさ、今まで自分の弱みやかっこ悪い部分は見せたくないから思っても避けてきたんだ。だけど、早苗が一緒に受け止めたいと言ってくれて嬉しかった。気を張っていたわけではないんだけど、肩の荷が下りたというか少し楽になった気分。」
「うん。」
「滝さん、滝さん、って言うから最初はあまりおもしろくなかったけど、今こうして過ごせているのが滝さんのおかげなら感謝しなくちゃな」
「え!!!そうだったの?」
おもしろくないと思っていたなんて知らずに、早苗は驚いて顔を鈴木の方に向けようとすると、唇を重ねられてしまいそれ以上喋れなかった。
「ん……。」
「今は見ちゃダメ。」
ゆっくりと舌をいれて絡め合わせる。二人はしばらくの間キスを交わし、互いの温もりを感じていた。
「前に帰ってきたとき、早苗が滝さんと親しげに話しているのを見てちょっと嫉妬した。待たせるのは悪いから他の男と……って一時は考えていたのに、いざ自分が知らない男と早苗が楽しそうに話しているの見たら悔しかったんだ」
「そうだったの……?」
昨年末に鈴木が帰国した際に、社内で滝と話している時に偶然すれ違った。
その時、滝から『鈴木さん、僕のこと少し威嚇している感じがありましたよ。嫉妬したんじゃないですか。』と指摘された。
日頃から社内に敵を作らないように謙虚な姿勢で、常に感謝の言葉を口にすることを意識している浩太に限って嫉妬なんてないだろう。まして威嚇なんてありえないと思っていた。
『相変わらず、滝さんはするどいな……。』
そう思ったが口にするのはやめた。思ったことを言うと約束したがこのタイミングではない気がした。
「浩太も嫉妬とかするの?」
「……する。束縛とか男の連絡先全部消してほしいとかは思わないけどいい気はしない」
先ほどまで早苗の首に唇を這わせていたが、嫉妬していることを言うのは照れ臭かったのか顔を逸らしボソッと呟いている。
早苗は指を絡ませてから振り向き鈴木の顔を見た。鈴木は窓の方に顔を向けており横顔しか見えない。
「浩太?」
両手で鈴木の頬を包み込み、膝の上に乗りキスをした。
「……浩太、好き」
早苗は、もう一度名前を囁き微笑んでから深く口づけた。 普段は受け身な早苗が自分から膝にまたがりキスをしてくるので鈴木はドキッとしたが、甘美な響きにそのまま身を任せた。
早苗は、唇をゆっくりと離すと鈴木の首筋に顔を埋めた。 首筋から肩へとゆっくりとキスを落としていく。 早苗の体温が鈴木の肌をじんわりと温める。
「んん……」
鈴木が声をもらすと早苗は上目づかいで見つめて微笑んでいる。視線の先が目ではなく唇をみているところがなまめかしい。
鈴木は、早苗の髪を撫でてから再び唇を重ねた。 今度はさっきよりも深く情熱的なねっとりとしたキスだった。早苗の服に手をかけゆっくりと脱がせていく。 二人は舌や指や足を絡めあわせ甘い時間が始まった。