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第7話

 サクラは両手に握っているパタの刃を合わせる。


「とりあえず、大魔法のぶつけ合いで泥沼化しているからね。ひとまずはあれを止めましょう」


「なにか手段がおありですか? 正直、あなたとは相性の悪い戦い方をする二人だと思うのですが……」


「そういうときのための対策はあるのよね。だけど、誰か少しだけ時間を稼いでくれると嬉しいな」


 サクラはそう言いながら辺りを見回し、近くにいる警備兵二人に声をかけた。


「そこのお二人さん、ちょっと手伝ってほしいのだけど……」


「はい、喜んで!」


「ご用命をいただきありがとうございます!」


 サクラの声かけに、警備兵の二人はすぐに元気よく返事をした。

 居酒屋か、それともどこぞの営業か。

 そんな風に突っ込みたくなる気持ちを、サクラはぐっと堪える。


「これ以上、争いが長引くと城にも街にも被害がでそうだから、一発で止めたいの。だけど、それには少しだけ時間がかかるから、あの魔法使いの注意をあなたたちに向けておいてほしいの」


 サクラの頼みに、さきほどの元気のよい返事はどこへいったのか。

 途端に警備兵の二人はおとなしくなってしまった。


「あの男はアリエノールさまの雷撃にも持ちこたえています」


「……さすがに我々だけでは、荷が重いです」


 不安そうに顔を曇らせる二人に、サクラは冷静に言葉を続けた。


「60秒でいいのよ。一分だけで終わらせるから。それに、あなたたち二人だけじゃないわ。クロビスだって手伝ってくれるわよね?」


「……私の本職は医師なので、戦闘要員に数えていただかないでくださると助かります」


「別に戦えって言ってないわよ。あなた、わたしが思っていたよりも信仰系魔法を極めているみたいだから。どうせ物理カット率、魔法カット率を高める補助魔法くらい使えるでしょう?」


 サクラの問いかけに、クロビスはすぐに意図を察したらしい。


「私は魔力が空になったと言いましたが?」


「ほぼ空って言ったのよ。本当に空っぽなら倒れているでしょ」


「あのですね。私は軍医としての責務のあるので、その分しか魔力を残していないってことなんですよ」


「いいから、二人に補助魔法をかけて! 二人は魔法使いの注意を60秒だけひきつけてね」


 サクラはクロビスの言葉を無視して、パタの刃の部分をこすり合わせた。

 すると、今度は左手に持っているパタに変化があらわれる。


 刃の周囲が黄金に光り輝く。

 二つの大きな円が交差しながら、刃の周りに浮かんでいる。


 サクラが両手に持つ武器。

 左右それぞれで別の派生強化を施している。


 サクラは刃が光に包まれると同時に、勢いよく走り出した。

 背後では補助魔法の詠唱を唱えているクロビスの声が聞こえる。


「アリエノールさま! いますぐわたしに雷を落としてください」


 サクラは奏多と戦っているアリエノールに向かって叫んだ。

 サクラの叫び声とほとんど同時に、警備兵の二人が奏多へ向かって剣を構えたまま突っ込んでいく。


「……はあ、そんなことをしてよいのか?」


「──っいいから、早くしてください!」


 サクラの必死の訴えに、アリエノールがハルバードを高く掲げる。

 その直後、サクラの頭上に赤い光を帯びた雷が落ちてきた。

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