大和はいつも、彼女が欲しいとばかり言っている。
晴翔と同じで今まで彼女がいたことはなくて、可愛い子と付き合ったらやれデートだのイチャイチャだのをするのが夢なんだとか。
「ねえ、大和はさ……」
今は晴翔もまだ同じ非リア同士だし、お互いの傷を慰め合うことができる。いやまあ、あれを非リアと呼んでいいのかはだいぶ怪しいけども。
しかしそろそろそんな状況も終わりを告げることだろう。近いうち晴翔は葵に想いを告げる。そうなったら二人は晴れてカップルとなり、私と大和は置いて行かれてしまうわけだ。
「やっぱり彼女、欲しいの?」
「? なんだよ急に。そりゃ欲しいに決まってるだろ」
「ふぅん。理想のタイプは?」
「おっぱいが大きくて包容力があって、黒髪ロングで清楚な女の子」
「うわぁ理想の高さえっぐぃ……」
繰り返すが、大和には彼女がいたことはない。
しかし何かそれに明確な理由があるかと言われれば多分……無い。
顔はーーーー特別イケメンではないけれど、かと言ってブサイクかと言われれば全くそんなこともなく。太ってもいないし、臭くもないし。男としてマイナスなポイントを挙げるなら唯一、晴翔同様にド変態なことだろうか。
正直、一人くらいいつかできそうだなとは思うのだ。今はまだ大和のことを好きな子も、大和が好きになる子も現れてはいないけれど。もし、現れたらーーーー
「ふふっ、安心した。その様子じゃあまだ当分彼女なんてできなそうだね〜♪ まあ私もまだ当分作るつもりないし? 晴翔と葵が付き合っても私が構ってあげるよ〜」
「なっ……おま、まだ分かんねえだろ。あのお尻狂いにだってできそうなんだぞ? 俺だって……」
「無理無理♡ 大和にはこんなに可愛くてプリチーな女友達がいるんだから、それだけでもう一生の運使ってるって。なんなら彼女のフリ、してあげよっか? こんな光栄なことないよ〜?」
「いらねぇ。クソギャルは俺のタイプじゃねぇっ!!」
黒髪ロングで、おっぱいも大きくて清楚な女の子。そんな子と大和が一緒にいる光景を想像して……少しだけ。ほんの少しだけだけど、胸がモヤっとして。そのことが悔しくて、小悪魔な笑顔を取り繕う。
(結局聞きたいこと聞けてないし。ほんと私、何がしたいんだか……)
あれだけ散々葵と晴翔のことを揶揄っておいて、結局私は自分の感情に答えを出せないでいる。
「けど、まあ……」
「?」
「その……なんだ。お前に彼氏ができたら、それはそれでへこむかもだけどな」
「……へ?」
そ、それってどういう……?
私は他の女の子に大和を取られるのが、あまり面白くは感じなかった。けど、それは大和も同じで、私が他の男に取られるのは……ってこと?
「もしかして今、告白した?」
「はああ!? ちっげえよ馬鹿!! 俺が非リア環境に一人取り残されるのが嫌だっつう話!!」
「ええ〜? 本当かなあ。ま、安心しなよ。寂しがりな大和ちゃんがそこまで云うなら、そばに居てあげるからさっ」
「ちゃん付けやめろ……だあっ! てかチーズケーキいつになったら食えんだよ!!」
「へへ、私もそろそろパフェ食べたいかも。もう写真はいいから食べよっ!」
少しクリームが溶け始め、柔らかくなったパフェにスプーンを通して、一口。
(今はまだ、このままでいいや……)
マンゴーの甘い感触が口いっぱいに広がるのを感じながら、パフェとチーズケーキ、そして大和の服がチラッと映った写真を簡易編集し、投稿する。
『#友達とデートなう♡』