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第38話 ギャルと変態2

「お待たせしました。マンゴー果実パフェとチーズケーキになります」


「わ〜っ! 見て大和、めちゃくちゃ美味しそうじゃない!?」


「おま、そんなの食べてこの後動けんのか……?」


「そんなこと言って、ちゃっかりチーズケーキ頼んでるじゃん」


「ぱ、パフェよりは軽いだろ!」


 結局、大和もあの二人が甘味を堪能しているのを見て我慢できなくなっていたのだろう。若干気恥ずかしそうに店員さんにチーズケーキを頼んでるところは正直ちょっと可愛かった。


 パシャッ、とスマホでパフェとチーズケーキが一緒に映った写真を撮り、イノスタ用にサイズを調整していく。せっかくの美味しそうなパフェなんだから、みんなに共有しないと。


「……って、よく考えたら二つ一緒に載せたらまずいかな」


「? なんでだよ」


「いや、だってさ……なんか匂わせてるみたいじゃない?」


 匂わせというのは、簡単に言うと「彼氏•彼女がいないのにさもいるかのような写真を載せること」である。具体例を挙げるなら誰かと二人で食事してるところとか、デートしてる風に出かけてるところとか。


 つまりこの写真は、まさしくそれに該当するのだ。この量を私一人で食べているとは誰も思わないから、必ず誰かと行ったことは推測する。そしてその相手の顔が映っていないということは即ち、男と行ったのではないか……と。


 いやまあ、そこに関してはその通りで嘘偽りないけども。


「ならパフェだけで撮ればいいのに。そしたら一人で行った感出るだろ?」


「う〜ん……それは思ったんだけど、みんなクラス遊びしてる中一人でスイーツ食べに行ってる子ってなんか可哀想じゃない? 一緒に行く友達いないんだ〜、的な」


「なら投稿しなきゃいいのに」


「は? 大和やっぱり馬鹿なの? こんなに可愛いパフェを載せないなんて勿体無いでしょ!!」


「うっわ、面倒臭ぇ……これだからギャルは」


「あ、ちょっと! まだチーズケーキ食べないでよぉ!!」


 まずい、このままだと大和が我慢しきれずチーズケーキに口を付けてしまう。


 写真を撮るならまだ一切手をつけていない状態が理想的だ。正直あのチーズケーキもプレートに絵が描かれてるのとかめちゃくちゃ可愛いしやっぱり一緒に撮りたい。まだ食べられちゃ困る。


「あのなぁ。そもそも論、匂わせって意味だともう俺たち手遅れじゃね?」


「へ? どういうこと……?」


「いや、俺はもう付き合い長いから気にしてないけどさ。クラスの遊び抜けて男女で消えたとか、俺ならもう″そういうこと″なんだろうなって感じるけどな。二人きりなら尚更」


「……はあぁっ!?」


 そ、そういうことって……そういう、こと?


 しまった、ついいつもの感じで大和を誘ってしまったけれど、そうだ。これって葵と晴翔がやったことと全く同じなんだ。


 当然私たちの間柄とあの二人の間柄は違うわけだから当人同士ではそうは思わないだろうけど、何も知らない第三者目線からすると扱いは同等。私たちもあの二人みたいに付き合いかけ……もしかしたら既に付き合ってるかも、って。そう思われててもおかしくない。大和が言った手遅れっていうのはそういう意味か。


(というか、さらっと言ってるけど大和はそのこと、どう思ってるんだろ……)


 別に他意はない。ただ純粋な興味本位だけども。



 大和は私と付き合ってるかもって周りから誤解されたら……なんて答えるのだろう。

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