植物に水をやり終えた希石は、どうせいつものことだとすでに諦めていた。いつものことだから、月伽の話を聞き終えた後も極めて冷静だった。
「了解した。伝えとく」
「お願いします。でも残念ですね」
「なにが」
「希石先輩、泣いてくれないんですもの」
「うるさい」
「泣いた先輩も好きなのに」
くすくす笑う月伽。ひとしきり笑って、くるりと背を向ける。女から泣いているところも好きだと言われて何が嬉しいものか。希石からしたら理解不能である。
「帰ったら、またここで会いましょう」
「――月伽。必ず帰ってこいよ、しょうがねぇから待っててやる」
「変な先輩。しょうがないから、帰ってさしあげます」
これが月伽と交わした最後の言葉だった。
これが彼女との日常会話。
いつも彼女特有の雰囲気、ペースに狂わされて終わる。
――あまりにもいつも通りだから理解できなかったかもしれない、真実を。