学園の在学中にロベリアとダグラスの婚約は、とんとん拍子で進んでいった。
カマルは、リリーを婚約者にする条件を『姉ロベリアがカマルの腹心ダグラスと婚姻すること』と明示したため、ロベリアの父ディセントラ侯爵も渋々だったがロベリアとダグラスの婚約を認めてくれた。
カマルも卒業後にリリーが正式に婚約者になることを隠さなかったため、カマルを狙っていた令嬢たちにリリーは絡まれたようだ。しかし、絡まれたはずのリリーは令嬢たちに自分が目指す貴族令嬢の未来を熱心に語り、気がつけばカマルの取り巻き令嬢たちは、全てリリーの取り巻きになっていた。
それを見たカマルが「複雑だ」とリリーに言うと「カマルは、ずっと令嬢たちに囲まれていたかったの? ハーレムを作りたいとかクズ発言はやめてよね!」と怒られていた。
「……違う。私のパートナーなのに、リリーが人気すぎて少し妬けるんだよ……。もう少し私と一緒にいてくれても良くないか? ねぇ、ロベリア?」
リリーがいないときに、カマルにサロンに呼び出され相談されたロベリアは嬉しくなって微笑んだ。
「カマル殿下は、リリーを愛してくださっているのですね」
「愛……かどうかは分からないけど、そうだね。私はリリーをとても好ましく思っているよ」
少し照れた様子のカマルは「私は優秀な人材が大好きなんだよ」とため息をつく。
「はぁ、でも優秀なリリーもダグラスも皆、ロベリアのことが大好きなんだから。私も髪を伸ばしてロベリアのドレスでも着ようかな?」
その言葉に反応したのは、カマルの側に控えていたダグラスだった。
「ロベリアのドレスをカマル殿下が着ることは不可能です。サイズが合いませんし、何より私が許しませんから」
「……ダグラス、冗談だ。本気にするな」
カマルは、ダグラスとロベリアにそれぞれ書簡を手渡した。
「君たちの婚約を両家が認めた書類だ。おめでとう、これで君たちは正式に婚約者だ」
サロンの入口でリリーが「あ、いたいた! カマル、今ちょっと良い?」と声をかけた。パッと表情を明るくしたカマルは、咳払いをすると「じゃあ」と言い残してリリーの元へと駆けていく。
取り残されたロベリアは、ダグラスを見つめた。
「私とダグラス様が婚約者に……」
「夢みたいだ」
「はい、本当に」
嬉しくなってロベリアがダグラスの手を握りしめると、ダグラスの頬はボッと赤くなる。いつまでもふれあうことに慣れずに照れてしまうダグラスが可愛くて仕方がない。
「ロベリア」
「はい」
ダグラスの黒い瞳は、いつでもロベリアをまっすぐ見つめてくれている。
「婚約者になったのだから、これからはロベリアも私のことをダグラスと呼んでほしい」
「え……それは……」
「それだけではない。私にもリリー様と話すときのように、もっと砕けた言葉で話してほしい」
今までずっとダグラス様と呼んで丁寧な言葉づかいで話していたので違和感があったが、ダグラスは譲る気はないようだ。
「分かったわ。ダグラス」
ロベリアがニコリと微笑みかけると、ダグラスは「うっ」と左胸を苦しそうに抑えた。
「どうしたの!?」
慌ててダグラスの顔を覗き込むと、ダグラスの瞳にはうっすら涙が滲んでいた。
「信じられないくらい幸せだ。ありがとう、ロベリア」
感極まった声のダグラスに、気がつけばロベリアはギュッと抱きしめられていた。
「ロベリア。一生、貴女だけを愛している。これからの私の全てを貴女に捧げる。だから、ずっと私の側にいてお願いだから、貴女も生涯、私だけを愛してほしい」
この世界は『悠久の檻(おり)』という18禁乙女ゲームの世界にそっくりな世界だった。でも、ロベリアの前にあるのは『檻』ではなく、ダグラスからの愛だ。
(もし、私の人生が乙女ゲームになったら、ゲームタイトルは『悠久の愛』ね)
ロベリアは「もちろん」と返事をすると、幸せそうに微笑んだ。
おわり
***
《あとがき》
最後までお付き合いくださり、ありがとうございました!
このお話は、藤こよみ先生にコミカライズしていただいています。
現在コミックス1~3巻発売中&連載中です♪
素敵にコミカライズしていただいているので、ぜひぜひ読んでみて下さいませ。
そして、だいぶ先の話になってしまうのですが、大幅に書き下ろしを追加した小説の電子書籍も発売予定です。
気になる方は、『来須(くるす)みかんのX』にてご連絡するので、よければのぞいてみて下さい♪
ネオページさんは、どこでこういう宣伝したらいいのかまだ分かっておらず…。
ありがとうございました!