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第42話 どうかこの子だけは守ってあげて下さい……







「でももう二度と命を盾にしないで……あんな事するなら……バディーは解消する」


 異様に凍りつく絶対零度のルナの声。余程嫌な事なのか、震えが止まりそうもない。


 え……う、うん……と、その余りに病んだ瞳にゾッとして否定すら出来ないルカ。



 ―――――― しん……



『絶対に……絶対にだよ………。

 人助け同盟の約束……やり直すって……

 ずっとずっと続けたいって……

 言ってくれたはず……

 絶対に……だからね…………』



 寒気すら覚えるルカ。煉獄界の神官が『下手をすれば塞ぎ込んで戻れなくなる程のトラウマがある』と言っていたのを思い出し、身を固くする。一体どれだけの想いが、悲しみがあるのかも計り知れず、このままこの話しはマズイとばかり逸らす。


「うん……分かってる。じゃ、救出に行こうか」


 と、そう言うのが精一杯だった。一方、ルナはギリギリ闇落ちを踏み止め、そしてそうならぬ為にどうあれば良いのか葛藤し続けていた。


 ……やっぱりボクと深く関わる人を不幸に……。


 お兄ちゃんも、セイカちゃんも、そして既にこの子も巻き込んだ。きっとまたボクの為なら命さえ易易と。


 でも二度とそんなのは嫌だ! こんな健気な子、失いたくない!

 だけど独りじゃセイカちゃんを救う自信なんて……。だからバディーは続けたい。


 ああ……


 ――――ヤッパリボクは壊れた身勝手な子。




 このまま一緒にいて良いのか自信を失うルナ。それでもルカへの精一杯の想いを天の兄へと願掛けする。




 それでもお兄ちゃん……

 もしまたあんな事があったら……


 どうかこの子だけは守ってあげて下さい……



 ボクはどうなってもいいから……





  * * *





 ―――ラグール宮殿、執務室。


 碧眼金髪美女のサイキック隊、副隊長が意外そうに問う。


「ファスター様、今回は手を貸さなかったのですね」


「もしもの時にと備えてはいたが何とか頑張ってくれた。二人の連携が良くなれば互いの弱点も補える仲だ。成長すればいずれは強力な戦力にもなるだろう。

 だからあの位は乗り切って欲しいと思ったが何とか乗り越えてくれた……やはり出張らなくて良かった」


「よくこらえましたね」


「フフッ、それを言われると何も言えないよ。……ただ私達のこの後の計画にくみする迄にはまだまだだが、この成長スピード……その日は案外遠くないのかも知れない」


「ですね。その為に動く必要があればいつでも尽力します」


「ありがとう。 だが今は陰からさり気なく手掛かりを与える位にするとしよう」

「了解しました。では次なる計画では、よりさり気なく立ち回るとしましょう」



     ***


 アジト本営からの救出―――


 親達から大層喜ばれ胸を張る二人は後日の感謝会で盛大にモテはやされる事になった。


 それもその筈、救った子達は、[取り返し隊]の非公式ファンクラブを自認する子達だった。 盛大に褒めそやされ気を良くしたルナ。その中のルナ好みの子へと想いが溢れる。


 よりボーイッシュにカッコつけてアプローチ。

  恒例のそれに『バチが当たってしまえ!』とばかりに睨むルカ。


 一層盛り上がる感謝会。

 その中に『あの子より私の方が可愛いのに』 と、ルナに声を掛けられず嫉妬した女子がイキナリ声も高らかに、


「皆さ~ん、このルナって人、ファンの子が可愛いからって手を出してますよ―っ!」

「ええ――っ、立場利用して何それ―っ! フケツ――ッ!」


「ちょ、ちょ、ちょ待って! ち、ちが……」


 サイテー! それが目的~? と場内に一気に広がる侮蔑の嵐。


「だってボク、女の子なんだよ! 手を出すなんてそんな、みんな信じて!」


 確かに女子のままだ。お陰で何とか誤魔化すも逆に落胆のルナ。

『やっぱ男の子になれないんだ……』



   **



―――その後、家に帰るとルカは慰めとも言葉責めともつかぬカラミを開始


「そこまで女子にモテたいの? そもそも昨日も私をじっとり変な目で見てたけど男子になれないじゃん。諦めなよ! それかそこまで私には本気じゃない? 浮ついてばっかだしね!」


「え、男子化しないのは多分相手の人がボクに中性を求めてるんだよ、ボクってそんな感じだし」


「何それ! でもさ、だったら私みたいに一度でも男子に変身出来たことある?」


「え?!……あ、あるもんっ! えっと、確か転生した日! 悪漢相手に激昂した時に……」


 ってアレ?……あの時、悪漢がボクに望むのは、当然男なんかより弱い女子の方……て事はやっぱ逆に?!


「ん? ……ね、何かまた青い顔…… ねぇねぇねぇ! やっぱ逆になるんでしょ! フフフ」


 やり場なくプリッとむくれたルナ。ソソクサとトイレに逃げ込むのであった。







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