その後も数ヶ所のアジト潰しをこなし、人拐いの救助も次々と達成するルナ達。
行政からの表彰と補助金を沢山もらい、それを被害者たちにも分ける。
すると登録者も更に増えて益々評判も上がってゆく。ルカは千里眼で次の計画を立てつつ、
「この調子で行けばすぐに平和を取り戻せるんじゃない?」
「いや、レイさんは地上にも数万の敵が潜んでるって。このペースじゃ何年かかる?」
「ンー、でも次のアジトはこの一帯の本営。そこを潰せればこの辺りはしばらく平和になるかも」
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―――到着と共にサイキック視で確認するルカ。
敵の数と種類、7名の女子監禁、そして警戒が薄い事等が判明。早速突入する二人。
かつての大病院の廃墟をアジト化したその中心部へと踏み込むと、床一面が水溜まりになっていた。
ジャプン、ジャプン……と慎重に歩み進んで行く。
と、そこへ突如ルナに予期しない内臓潰しのパワーが加わる。
『ぐはっ』
っと血を吐くルナ。だが千倍活動の備えによる物理耐性上昇のお陰で何とか持ちこたえた。
慌ててサイキックバリアを張るルカ。急いで自己治癒するルナ。と同時に四ツ足の魔獣10体の猛襲、更に粘液状の生命体に飛びかかられ飛び退く二人。全方位透視で索敵するルカ。
《さっきのはお前か!》
と、ルカの千里眼でも気配が見えなかったサイ魔人を物陰に見つけ、精神破壊攻撃を仕掛けるも、やり返され互角。念力の潰し合いもまた阻止し合う。
「
その間、ルナの見えないムチの一閃が一気に四ツ足の魔獣10体をバラバラにした刹那、ここぞとばかりに足元から液状怪物がルナの全身を粘液で包む。
藻掻いてもそのフィジカルパワーを受け流し、全身を捉えて離さない。次第に皮膚が溶かされてあちこちから血が滲み出る。苦痛に顔を歪め息も出来ず失神しそうになるルナ。
一方、サイ魔人はルカと念力合戦しながら火焔放射してルカにサイキックバリアをさせ、生じた隙に粘液に苦戦するルナの心臓を念力で潰しにかかる。
ギャアア――――ッ
その悲鳴にルカは自身へのバリアを解いてルナを襲う念力から念バリアでガード。そのバリアの楯は更に増大し、あたかも千手観音の如きサイキック合気・ファントムアームズとなって流れるように〈
『ルナは私が絶対に守る――っ! 』
ルナと粘液の間に滑り込むサイの手が見事弾き去ってゆく。
だが防御ガラ空きとなったルカ。敵の念力をマトモに喰らうと
バグァッ……
胸部が爆裂、そこから心臓が飛び出し白目を剥いて卒倒。
あまりの光景に呆然のルナ。
―――やっぱりボクの大事なものは!―――
怒髪天を衝き、
「ルカァ――――ッ!!、……キサマよくも――――っ!!」
あちこち血だらけにタダレ、めくれた皮膚のまま千倍速でルカを抱いて飛び退き、多量の治癒カプセルを握り割る。
しこたまその胸部に投げ込むと、同時に脇に挟んだロッドヌンチャクに憤怒の
『シュンッッ……………ドガアアアアアアアアァァァァァァァァァ―――ン……』
大型レ―ザー砲の如き瞬撃で魔人と病院の全ての壁を貫通、一瞬で遥か上空まで往来するロッドヌンチャク。
追って巨大衝撃波が発生し跡形もなく消し飛ぶサイ魔人。
「大丈夫かあっ、ルカァ!!」
カプセルに託した想い。振り返るといつものルカの姿が目に入り涙が出そうになる。
「治癒は有効っ! ルナッ、後ろっ! 気を抜いちゃダメ!」
振り返ると間近まで迫る粘液怪物。どこ迄逃げても、ルナのとんでもないスピ一ドで移動しても全ての床が水溜まりゆえ、何処からでも液体生物が現れ予測が付かず、気付けばもうまとわり付いている。
再び捨て身の飛び込みの流体払い術で庇うルカ。
今度は何度もルカへ襲いかかる。千倍速ファントムアームズで払うも、ルナの超高速ヌンチャクで散らすも直ぐまた戻ってくる。液体に打撃は無効だった。
「ルナッ! コイツは今までの私達の技では勝てない! でもパワーもスピードもこっちが上! 少しならタメを作る時間を稼げるから練習したあのワザを使って!」
無言のダブルヌンチャクで万倍力を全開放、超々高速回しの空気摩擦で周囲の空気さえ燃え揺らぎ火の玉状になる。
〈バーン、アウト……〉―――
その間、ルカがファントムアームズで敵を練り束ね、全サイパワーで球状シールド内に液体怪物を留めて脇へ掲げた。
〈メテオ―――――――ッッ!!〉
――――瞬時に突き抜ける流星の尾の如き煌めき。
その通過した軌道上の全てが大気圏に突入して消えた隕石の如く熱蒸発していた。
一時の静寂と虚脱状態。顔を見合わせ安堵のため息をつく二人。
無言でルカを
ルカも治癒魔法カプセルをルナに振りかける。妙に顔色が悪いルナは、やがて何かに思い当たった様に
「危なかった。あんなのが多勢いたら……ボクだけなら完全にやられてた。ありがとう」
そんな蒼い顔の囁きが院内に虚ろに響く。言葉を詰まらせ、時間さえ止まる。
「でももう二度と命を盾にしないで……あんな事するなら……バディーは解消する」
異様に凍りつく絶対零度のルナの声。余程嫌な事なのか、震えが止まりそうもない。
え……う、うん……と、その余りに病んだ瞳にゾッとして否定すら出来ないルカ。