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第39話 魔法の基礎








「初めまして、ルナのバディーのルカと申します。よろしくお願いします」


「フーン、仲々可愛いし、いいバティが見つかって良かったじゃん」


 超イケメン弟・メイの相変わらずの厳しいチェックが頭から足の爪先まで入る。


「ルナとは昼夜を問わずいつも一緒なんです!」

 ルカは物怖じもせず声高にカノジョ宣言的な一言で切り返す。冷やかすようにニヤリとしたメイは、


「妙に仲良さそうだし、ルナもやるね~。てっきり兄さん狙いかと」


 だから最初から違うって言ってます! と否定するルナ。

 呆れつつも柔らかな笑顔で嘆息する。


「フン、それにしてもノンケかと思ったらアンタもこっちの人か」


 と見下ろすような目つきのメイにルナは、


「モ~、勝手に決めないで下さいっ!」

 ルカとは逆の態度で取り繕う。


「じゃ、単なる仲良しゴッコ? ま、兄さんに悪い虫がつかないならどっちでもいいけど」


 この日はレイの営むデザインオフィスへ魔法を教わりに来た二人。別に遊びに来た訳ではない。訳あって魔法を上達させる必要にかられての事だった。


 そこへトレイを持った高身長の男の姿。


 ようやくイケメン紳士の兄、レイが割って入る。お茶を用意してくれていたのだ。カップを渡しつつ、


「ゴメンネ~、メイはいっつも一言多くて。後でキビシクお仕置きしとくからさ」


 急に顔を赤らめるメイ。

「兄さん、お仕置きしてくれるのかい? 」

 と流し目で問い返す。


「何か誤解受けるから変な言い方するなっ! 教育的指導をするって事だよ!」


えっ?! な?!……調教的しどっ……と最後まで言わせず、ゴキッ ドゴンッ!!


 床に頭がささって大人しくさせられるメイ。

 黙ってろ! 全く……と、冷静なレイが若干取り乱している様子。


「……コホン、えっと、ところで飛行魔法を覚えたいって事だよね。飛んで逃げる魔物を取り逃したとか。確かにこれからは必要になるだろうね。

 だから基礎がしっかり身に付くようこれを用意しといた。先ずはこの首飾りを付けて」


「わぁ、キレイ!」


 魔方陣のような紋様に興味津々な二人。流石デザイナー。

 可愛く作ってくれてある。


「魔法は呪文や魔方陣を使って魔や精といった超越的存在から力を取り次ぐもの」


 その首飾りは簡易的ではあるがその媒体としての役割を十分果たせるよう、きちんと魔力へと通じるチャネルを開通させてあると言う。お礼と共に早速身につける。


「先ずはこれにアクセスして力を引出すんだ。で早速適正テスト。この紙を小さな風で揺らす。念力だとたったこれだけでも大変だけど、その魔力チャネルから念を送ってごらん」


「首飾りを通してお願いしてみます!…………お? あ! ゆ、揺れた! スゴい……一から自分で引き出せるようにするよりも、やっぱりこうして師事した方が全然会得し易いんですね。武道とかがそうであるように……ありがたいです!」


「うん。じゃあ本題、飛行魔術は絶対身につけよう。この世界、空中で戦えないと不利すぎるからね。飛び方はよく魔女がホウキって感じで、つまり何かに載せて貰ってるっていう『イメージ』が大事なんだ。で、お勧めの方法。この飛行雲に二人で乗ってみて」


ホワリ、と部屋に出現したテーブル3台分程の魔法の雲。片足ずつ静かに載せて、


「うわっ、乗れる! 浮いてる~!」


 はしゃぐ二人。しばらく浮いて遊んでるように指示するレイ。



「面白いねルカ、子供の頃、こんな空想しなかった?」

「したした! フフ……こんな魔法が使えたら空で昼寝とかして超気持ち良さそ~!」


 微笑ましく見守るレイ。慣れてきたのを見計らい、茶を飲み干して、次はちょっと念じて左右に移動してみるよう指示。二人の念を合わせれば出来るはず、とアドバイス。


「…………ぬぬっ……あ、ちょっと動いた……スゴっ」


「次に雲を少しずつ小さくするよ。沈んで行かないように浮くイメージを持って!」


 落ちないどころか、少しだけ浮きあがった。これには少しレイも感心した。


「さすがスジがいいね! じゃ、もっと小さくするよ。さっきの要領で浮いたり移動したり」



「……だんだん出来て来ました!」



「じゃ、ちょっと、ふたつに分けるよ!……お、維持出来てるね。じゃ雲をクッション位の大きさにするから、それでも沈まないように浮き続けてごらん」


「う……なんとか出来た!……コレ、楽しいですね!」


 飲み込みの早さに、ホント才能あるよと言われ、「そうですか~、照れるなぁ」とルナ。


「だってさっきから雲は見せかけだけなんだよ」


 え!!………抜け落ちてズドッ、っと床に尻もちつく二人。


「これならいつでももう飛べるよ! 自転車と同じで補助してくれてると思うと乗れてるってヤツ。だってキミたちのステータスは可能なレベルだったんだから。

 そして周りがやれてると自分も普通に出来る事なんだって思える。二人でやって貰ったのはそのため」


「でもいつから見せかけに?」

「最初に小さくした所から。にしても随分カンが良いけど何か運動とかの選手だった?」


「ボクたち武道でそれなりに……でもお陰でキッカケ掴めた気がします!」


「うん。あといずれ転移も練習を。。亜空間の経由で物質の重なりが起きずに自分や物体の瞬間移動が出来て役に立つ。対してサイ瞬間移動は自分や触れながらでしか出来ない」


 なぜそうなのかと問うルナに、物質の重なり……神の意思かな、と答えるレイ。


「摂理の発動である魔法に対し、サイは個人の精神。好き勝手に物体を命あるものに瞬間移動のオーバーラップが出来たら悪意ある術者なら大殺戮が出来てしまう。何せ物質が重なれば大爆発する。

 でも神はそんな存続不能な世界にはしないさ……」



 超能力の場合、触れてないものは瞬間移動出来ない……。好き勝手にオーバーラップさせない神の意志……。そっか、だからあの最強戦士は触れるギリ手前から出現して攻撃してたのか……


 そう。それに比べ魔法転移は元々オーバーラップ出来ない代わりに物体だけでも瞬間移動せさられる。


「そうそう、魔法転移は難しいから第一段階として異空間から物の出し入れから始めて魔法ストレージを使える様になろう。それに慣れてからその内教えてあげるよ。そんな訳で今日は魔法ストレージと魔法飛行をしっかりやっておこう」


「はいっっ !! お願いしゃっすっっ!」



 うはっ……さすが元体育会系だね、とタジロぎながらも成長を喜ぶレイ。


 その後、BROSの方が音を上げるほど修練に取り組み習得した二人だった。







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