ルカの出現により大いに実力アップしたルナ。今すぐにでもその力を試したいとワクワクしていた。
……ああ、こんな
これからはもっと明るく強く前を向いて生きるんだ! そう、この『人助け同盟』で!!
「ボクらの特訓の成果をすぐにも活かそう。この力で一日も早く地上の救済を急ごうよ」
*
その行動を起こした二人の目にそれは飛び込んで来た。
『戦士急募!』
先日買い出しに行った隣国モイラでのとある集会場の貼り紙。
娘を拐われた親達が資金を募り、疑われた密売所に潜入して取り戻す、その任務に早速ルナ達も名乗りを上げた。
だが戦士としては幼な過ぎるし、かと言って有名魔法使いでもない。
精一杯アピールしたが相手にされず。
「もう少女イコール魔法なんてイメージ、オカシクナイ?! 今はやっぱり鉄腕でしょ!」
「いや、そっちが異常。私達お金をせびりに来た子供の様にしか見えてないと思うよ」
そこへ如何にも胡散臭そうな輩がやって来て、受付で自己アピールする。
―――いいカモ連中じゃ~ん。集まった金、いただき~っ
直ぐ様サイキック読心で見抜いたルカが、変なヤツが来た事をルナに伝える。
《こんなのサイパワーでやっちゃいなよ》
とルカへテレパスすると、身の丈程を超える巨大な頭の蛇が受付の背後からこちらを
勿論それはサイキック幻術。
『ヒイイッ』と喚いて速攻で逃げ出す男。
だがその後もルナ達は取り合われず仕方なくその日は撤収。
結局白羽の矢が立ったのは誠実そうな青年兵士。だが既に敵に寝返っていた。
アジトを突き止めたかの様に見せかけ『すでに誰も居なかった』として家族に諦めるよう促す男。
再訪したルナ達は兵士の置き忘れた品からルカのサイ・千里眼の力で男の現況を読み取る。それを受けて矢も盾もたまらず声を張り上げるルナ。
「あの兵士、すべてウソです! 今〈遠隔視〉で見たら隣町のとある場所でノウノウとやってるって!
疑うなら今すぐ軍に聞いて! この子、有能なサイキッカーなんです!」
慌てて軍へ問い合わる家族達。とうに除隊済だった。更に成果報酬にしていなかったため費用は支払いアジトも調査対象外となる。
無駄に金だけ失って失意のどん底に。もう戦士を雇う金もない、としょげ返る親達を前に拳を握り締めるルナ。
「金など要らないからボクらを任命して欲しい! 噂じゃこの国の警察はヤバいらしいから女の子を取り戻して来ても下手したら奴らグルでボクらが誘拐した事になりかねない!」
しかし意外な答えが返ってきた。
「―――こんな美少女のキミらが行ったらそれこそ自分が売り飛ばされるだけでしょ!」
家族を大事にする親御達はこれが理由で任命しなかったのだ。
そう言われ互いを見る。
儚げで優しそうな美少女に、快活なアイドルの様な乙女。見つめ合って顔を赤らめると、
《ハッキリ言って自分が拐《さら》いたい》
―――とテレパスを漏れ交わしてニガ笑いの二人。
『やっぱりいい人ばかりが損をするなんて』
と苛立つ。
だがそこへ家族に連れられ集会に来ていた少年が、唐突にかん高い声で、
「あ、その人! この前国境で大活躍してた話題の超人お姉ちゃんだぁ! そうでしょ?」
「え、キミ、その時いたの? その通り! ボクがそれだよ、話題になってた?!」
『国境戦のチート超人』
――途端に手の平を返す親達。激しくすがり付かれて交渉成立。
「ルカ、早速仕事だ!! レベルアップした腕が試せる。先ずは超音速で今のアジトへ!」
千倍速の二人の疾走。それは航空機の10倍もの速さ。瞬く間にアジトへ。
***
―――――アジトの外から
「ルカ、透視と心眼で何か掴める? ボクのサイでは力不足」
「……次の計画地の打ち合わせをしている……元兵士と……オーク? っぽい地底人、そしてそれをまとめる魔族のリーダー風のヤツもいる。
こいつら種族を越えてグルに……奥の間に拐われた女子20人くらいも見えた」
危険性を問うルナに、ステータスならこちらが大きく
それを耳に「よし、突入だ!」と、即座に向きを変えて踏み込もうとするルナに、
「待ってルナ! これからは二人での行動が大事。 やみくもに動く前に必ず方針を決めよう。実力でまされば勝てるとは限らない」
ズキン。――――
あの事故の情景がフラッシュバックして瞳を曇らせる。兄を救えなかった最大の理由、速さへの慢心。
心に
「…………う、うん。分かった……で、今回はどうする?」
「拐われた全員が人質だと考えた方がいい。例えば人質全員に同時に銃突きつけられて動くな、ってやられたらキツイでしょ。それとか彼女等を盾にされたら……」
「確かに。ならどうする?」
「リーダー以外のステータスは小さいから先ず私のサイ精神攻撃で全員互いに不信にさせて大混乱させる。
その間にルナはリーダーをやっつけて。場所と見た目はこんなカンジ」
「うわっ、脳内でダイレクトに顔見れた! 持つべきはサイキック上級者! 便利過ぎ~」
「ホメるの早いよ。もう下級のヤツら、相討ちと錯乱して逃げ初めてる。どう? 私の実力」
「スゴイよ、ルカ!」
「フフン……行っていいよ、ここからはテレパスで交信ね」
自分に殆ど無いサイの力。思ったより何倍もルカの頼もしさを痛感したルナだった。