ルナの真っ直ぐな視線を避けるようにして、ごめんなさい、と
「な……なに謝ってんの……やめてよ……」
だって……と漏れ聞こえた様な気がした。言葉を失ったまま棒立ちするルカ。
「だって……何?……」
「どうしても……離れられずに……」
「……られ……ずに?
―――いや、言うな……それ以上絶対……」
察した瞬間、鼓動が耳まで伝わりワナワナと手も震え、目から火が出る程逆上し出すルナ。
「…………追ってしまった……」
「…………ふ……
フザケるなああ――――っ!」
ドガッ! バキッ! ズシャァッ……思わず手が出て血飛沫が舞う。
「どうしてっ!……どうしてっ!……どうしてっっ!……」
更に引きずり起こし殴打を続ける。ぐはっと血を吐くルカ。怒りで人相すら変わるルナ。
……どれだけ兄を追いたくても裏切らずにいたあの苦悩は何だった ?! それを
「だったらボクは何のためにっ! 無意味になったじゃないか―――っ!」
更に殴られ瀕死状態となるルカ。合気術でいなそうともしないのは
もちろんルナも手応えでその防御を分かっての攻撃だが。
息も絶え絶えに「気が……済みましたか」とルナに問う。
「済むわけないだろ―――――っ!」
それでも容赦なく殴ってしまうルナ。
けど……
と言ったのか、畏怖と恭順のルカの目が変わり、突然光った。
サイキックステータス8万のルカの精神攻撃が返される。
「だったらこの気持ち、分かるっていうの――っ!」
《うわあああ……》
ルカは自ら味わったその
はぐううう!……
二度と味わいたくないものを注がれて思わず
「最も大切な人さえ守れず失ったこの気持ちがっ!……それどころか護りのプロの自分が守られて全てを失ったふがい無さなんてっ!……分からないクセに―――っ!」
心臓を貫かれた様に刮目し、突如ボロ泣きするルナ。
「……んくうっ……ボクは……ボクはそれでも!……正にその悲しみを………
越えてきた―――っ!!」
再びルナに撃たれて瀕死になりながらルカは
『ルナにもそんな過去が?』と。
「ガフッ……その……悲しみ?……」
「守れなくて……ボクのために犠牲になった……世界一大切な人……残されて、苦しんで……死のうとして……でもだからって………裏切れないじゃないかぁ―――っ!!」
ドゴォオッ、ゲホッ、うぐっ……
……あの日感じた心の傷、そう言う事……
「でも裏切らずに耐えて……乗り越えたんだね……
なのに私はこんな……うっ……情けない……グスッ……」
ルナの厚意を無駄にした後悔に眉根を寄せ項垂れる。だがそれでも、
「でもね……だったらホントに……ホントにそれで割りきれたと……そう、言えるんだね………?……」
はっ……とし、短い
―――ダマし続け……誤魔化し続け……
恨み続け……逃れ続けて――――
割りきれてたはずもない。膝から崩れ落ち、もう何も出来ず地に諸手を付いて泣き叫んだ。
「はぅ……そ……そんなの……出来なかったぁ―――っっ!! うぐううっ………」
「そうだよ……割り切れっこ無いんだょ…………グスッ……」
……残されて……苦しみ抜いて……だからこそ人には悲しませない誓いを……なのに破ってしまった……
「ルカ……ゴメン……それだけ……想ってくれてたん……だよね……」
「そうだよ……一期一会だったんだよ……運命だったんだよ?……でも裏切った事に違いない……だから殺すなら殺して。ルナさん、あなたになら……仕方ない……」
もはや防備もせず体を差し出すルカ。
「ズッ……出来ないよ。こんな思いをさせるくらいなら……助けないで欲しかったと……そう兄を恨み続けてる
「――そんなに大切な人だったんだね……」
んくぅぅ……
と喉を詰まらせ鳴らすルナ。答える事さえ出来ず涙を飲み込んで、想いを再び封印する。
『はぁ……』
と、どうにか息継ぎをして
「ゴメン、こんなに殴って……ボクはこの事には完全に壊れてて……自分を失ってしまう。 今さらだけど……治癒魔法……させて……」
赦されて初めて事の大きさに気付くルカ。
「うっ、ル、ルナさん……私……私は……とんでもない事を……
ぅ、うわあああ―――――――っ」
手かざしで優しく治癒魔法を浴びせながらルカに囁く。
「……わかったよ……ううん、分かってたんだ……ゴメンね、こんなに感情的になっちゃって」
……それだけキミを助けたかった。生きてて欲しかったんだよ。
「それに自分には出来なかったワガママ……怒られる事わかってでも、ここまでやり抜いたキミに……実は嫉妬したのかも知れない……」
「……ごめ……ゆ、許し……く…て…ぁあありが……ふううあああぁぁぁぁぁ……」
「……うん、もういいよ。何も言わなくて……いいんだよ……」
ただ泣き、抱きしめ、