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第28話 若者パーティーとの出会い




 フィジカル併用魔法戦士との共闘。その帰途で魔法の玉蹴り、光の矢の放出等、『魔法の飛び道具』を試すルナ。


「そっか、あれ以来ヌンチャクの魔力ワイヤーの飛距離が伸びないのは無詠唱での魔法とボクの超フィジカル速度のバランスが悪くて上手く連携が出来てないのかも……」


 直ぐ練習に取り入れる。1秒でも早くセイカを迎えに行きたい。その思いで焦ってがむしゃらにやるが今一つ上手くいかない。


 すると頭中に響くテレパスのような幻聴。


《 落ち着いて。 一つ、一つ。……》


 ふと我に返り、昔、兄にカラテを教わっていた頃、よくそうやってさとされたっけ……と自戒する。一度深呼吸して少し落ち着くと、連想的にファスターの残した言葉が耳に蘇った。


〔 さらわれた子も命は取られないから落ち着いて行動を……〕


 多分あの人は何か事情を把握している。時間に猶予が有るなら今はそれを信じて冷静に実力を積み上げてくのみ!


 そうやって遂に感覚を掴んだ。前世でさえ時速100kmを超える脇から放たれるヌンチャクの一閃。


 今はその万倍、時速100万kmで数百メートルの距離を瞬時に往来するそれは摩擦で燃え光り、まるでレーザーのようだった。



 ドゴォォォ―――――――ンッ……



 着弾すると巨岩が瞬時に大破。爆薬が無くてもその運動エネルギーで凄まじい破壊力。


「……なんかレールガンみたい……」


 それもそのはず。実際そのスピードはレールガンの優に100倍の速さ。


 ……小さな一歩。でも今は一つ一つやってくしかない。


 こうした事により物理攻撃の向上と魔法ステータスもまた少し上げたルナであった。




 ***



 後日―――


 アジト地図を頼りにまた別のパーティーに出逢うルナ。


 同じくアジト潰しだ。それはかなりの若人で構成されたパーティーだった。


 転生後、仲間同士で訓練をして来た好印象な10人組で、前世ではボランティア活動で徳を上げた、あどけなささえ残る青少年たちだった。


 当時送迎のバスが崖から転落、惜しくも若い命が絶たれた悲運の境遇だった。それ故この世界に集団召喚された、今も正義の心が行動原理の若者達である。


 ステータスは各種倍率をかけた状態で〈魔力、サイ、物理フィジカル〉の平均が〈三千、四百、十〉といった数値だけ見ればかなり未熟な者達だ。転生してまだ日も浅いと言う。


 にしても得意ステータスが平均三千程度の魔力って……

 こんなので大丈夫かな……


 ルナの心配とは逆に、小さなステータスでも百%使いこなせればかなりの事が出来る。故にこの若者達の力でどこ迄やれるのかもルナにとっては勉強の対象だった。


「初めまして、新参者のルナです! 本日はよろしく!」


「はい。私達も経験がまだまだのパーティーなので、何かあったら助け合って行きましょう……ってその名前、確か国境戦で有名になった凄いフィジカルの人! 心強いです!」


 ウン、ガンバるね、と言って前回同様に最近の危険な魔物召喚の傾向を伝えると、


「うん、ありがとう、十分気を付けます。ただワガママ言わせてもらえれば少しでもステータスを上げたいから、今回は危ない時だけお願い出来るとありがたいのだけど……」


「了解。ボク、こないだも先に色々見れて勉強になったし、必要な時いつでも呼んで!」


 アジト付近へ到着し会話をテレパスに替え、この人数でも意志は余さず共有。先日のグループと違った意味で連携に優れていた。


 突入準備で魔法の蚊を飛ばして偵察すると、その映像は魔法の鏡に映し出される。拐われた者はいなかったが……。


 3M近い異形の魔物が通常サイズの人に化けてゆく姿が。


 今から街へ人拐いに行く所だ。3体のそれと地下側勢力についた邪妖精ゴブリン2体がバッテリーカーに乗ってまさに出ようとする。


《よし、今だ!》


 後部ウィンドウに爆裂魔法で攻撃開始。


『ドゴォォン』


 その穴から車内へ、更にバッテリーにも全員魔法で集中放火。


 小さい魔力も合わせて強化し、引火させ爆発炎上。出発を阻止させて邪妖精2体は即死。


 だが魔物3体はそれに耐え、怒りながら元の異形に戻って襲い掛かって来る。僅かに人型を保った真っ黒なその体はグモグモと部分変形して魔力に溜めを作っている。


《喰らえっ!》


 若き剣士ソードマンが穿つ魔剣も刃が立たず、逆に幾つもの触手を弾丸並みの勢いで体からヤリ状に射出、


〈〈マルチバリアッ!〉〉


 剣士の危機に仲間数人の多重バリアで防御。

 更に後方支援からはジャミングと魔弓で援護。


 それにより隙が生じる。即座に位置を変える魔物。

 無数の槍状触手が再び襲う。

 それから突き飛ばし仲間を庇う少女。


〈〈治癒ヒール!〉〉


 次々刺傷する仲間達を間髪入れず治癒ヒールする後方組。

 援護で数人合わせた火炎攻撃が炸裂。

 更に風魔法で炎を煽ると10倍に勢いを増す。

 高速移動のバリア係りの陰から魔弓で牽制。


 烈しく入れ代わり立ち代わり縦横無尽に攻撃。

 間断なく仲間を気遣い合う攻と守。


 ――――それは見事な連携。


 スゴイ……皆が皆を見てる!……

 こんな小さな力でもあんなにも戦えてる!


 凝望のルナ。鳥肌が立ち、心が震える。


 ……ボクには無い力……



 そのせめぎ合いは一進一退だが油断もなく士気が衰える様子もない。心を動かされるも、気を揉むルナは身を乗り出して出動体勢で構える。


 つい口から意志が漏れ出る。


「ねえ! もう行ってもいいっ ?!」




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