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第26話 ボクはきっと、大丈夫……大丈夫……大丈夫……





 レイメイBROSから地下世界についてを教わるルナ。重要な地下世界を踏破した結果どうなったかを。



「踏破したのは単なる前線基地さ。犠牲も相当……結局、魔の本丸、超巨大ダンジョン『ギガ』、そこに囚われている」


「僅かに救出に行く者もいるが戻れるのは一握り。俺達も行ったけど……」


 その美顔に陰を落として少し口ごもるレイ。

 そこでのトラウマがそうさせていた。


 だがルナはその話に強く反応していた。

 その一言に少女誘拐やセイカ略奪の手掛かりを感じ身を乗り出すルナ。



「地下の敵は様々でしかも凄く強い。今の俺らじゃ到底深層までは無理だ。 いや、今はで、もう完全に中層にすら進めなくなってしまった……」


 この人達でも ?!―――とばかり政府御用達クラスでさえ歯が立たない事に驚く。


「取り戻せたのは百年前の伝説の勇者のパーティーだけ。だがその事で異様に守りを固くされて行き詰まった……だからその『中層への突破』 それが今の最大の目標なんだ」


「皆で力を合わせて何とかならないんですか」


「計画はあるらしいが戦力がまだ全然だ。力不足な状態で行っても逃げそびれて死ぬだけ。

 むしろ今地上に紛れて人拐いする魔の者は数万もいて、警戒しても日に数十人も拐われる。今出来る事はこれ以上被害者を増やさない為に地上の敵を少しでも減らす事さ」


「良い人ばっかり虐げられる……そんなの絶対に嫌だ……だったらやっぱりボクは……」


「うん。俺もだ。希望は有る。最も被害数が多かった地域を僅かこの2年程でほぼゼロに食い止めた国がある」


 ルナは自分のやるべき事の前例があると知りその話しにかぶりつく。


「最大国のラグレイシア。成し遂げたのは近年創設された王宮付きサイキック戦士隊。だから俺らも地上の敵の全掃討、せめて今はそれだけでも……

 だって俺は徳が評価される世界を選んで来たんだ。絶対に諦めちゃダメなんだ」


 信念をもった眼が光る。どうやらこのレイという人は本当に使命感のある人らしい。この人は信じられると思った。


「ルナちゃんもね。……哀しい顔してるけど負けないで。だってんだから」


「顔! ……バレちゃいましたか。うん、でも悲しむ人を減らせるならボクも頑張りたいです!」


「ああ、共に頑張ろう。敵はいくらでもいるからドンドンやっていいよ。そうすればステータスも上がるしね。そう、こないだの活躍で早速上げてたでしょ」


 分かるんですか! と瞳がキラリ、教えてオーラを全開にして身を乗り出す。


「サイの『心眼』を使えば見れるよ。初心者ならこう、対象を見ながら半眼にして、瞼の裏に相手を強く想うとレベルが浮かんでくる。……こんなカンジ」



 この超イケメンの長い睫毛の伏し目がちは、普通の女子なら誘惑以外何物でもない。


「キミは魔力が1、超能力サイキックが5、物理が10の基礎力で現れて、今は魔力が2になってる。

 徳の倍率だけで百倍もある。更に報奨倍率も掛けると魔力は今二千て事。ちょっとした攻撃魔法も出来るよ。

 だからヌンチャクの魔法のワイヤーを伸ばせた。

 極めつけは物理フィジカルが各倍率掛けると1万倍でステータスが十万ってこれチート過ぎ!

 あと別個に治癒魔法がMAXだって~?! 死人以外みんな治っちゃうんじゃない ?!……キミってかなり凄いよ!」


「でも全然敵わなかった……瞬間移動する敵にほぼ殺されてた……例の見えない攻撃に」


「え……あの残党か! 物理最速のキミが見切れないならその移動は超常現象系……

 しかもキミは既に魔力が千以上。『魔法の転移』なら魔界という亜空間を通って短絡ショートカットしてるだけだから出現前に気配に気づく筈……」


 でも気付けなかった、という事は―――

 少し強ばった面持ちになるレイ。


「つまりそれは超能力瞬間移動テレポーテーションの使い手だ!

 物質の直接転送……それが出来るのは相当なサイキック戦士だけだ……」


「けど助けてもらえたんです……ファスターっていう人に」


「えっファスターさん! 2~3年前に彗星の如く現れてラグレイシア王国の被害を皆無にした若き英雄!

 その第一級サイ戦士にしてこれからのリーダーだよ! ホント運が良かったね」


「前世の兄に凄く似てるんです……先立たれた……」


 物憂げな顔にワケありを感じ『何か話せなかったの?』と優しくすくい取るレイ


「話せたけど……人違いだっ……て……」


 僕はレイ兄さんに会えるよう神官に頼んで叶った、と弟分のメイ。


「キミは頼まなかったの? そうでもしなければ無数に存在するパラレルワールドで会える訳ないよ」


「お願いしようとしたら……兄が再会を望んでいないと言われて諦め……た?……ん? あれってどっちになったんだ? 良いともダメとも言われてないような……」


 レイがグラスを置いて微笑で頷き、そう信じてた方がこの世界に希望を持てるよ、とフォローする。


「そう……ですね……うん。どちらにしてもボクは今すぐに強くなる必要があって……」


「なら実戦だよ。この世界、人の役に立って徳を上げるのが一番。それに地上を半分もやられた今、奪還しながら同志が集結してかないと。

 彼は次代のリーダーとしてそれを実践している。でも増長した転生者も多くて一筋縄ではね。キミを助けたのも仲間にしたいからかも」


「一緒に戦えたらって……少し言われました」


「実はオレらも軽く誘われてる。こないだのフィロス戦の情報も実はファスターさんルートだった。彼は俺等を買ってくれている。ま、お互い見込み有るって事だよな。必要な時、パーティー仲間にならないか」


「ちょっ、兄さんっ! いつからロリコンに!」


「イヤ、違う! 純粋に戦闘力にホレたんだよ」

「ホ、ホレた~?!」

「いや、だ~か~ら~~っ!」


「クスッ、はい、喜んでロリ友になりマ~ス!!」

「何ちょっとアンタ! もうサイテーな子っ!!」


「フフフ……」

 僅かに顔から険が取れてきたルナ。



 お兄ちゃん……ちょっと元気、戻ってきた。



 きっと、大丈夫……大丈夫……大丈夫……






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