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BROSレイ・メイに案内され再び隣国モイラへ。
交易が盛んで様々な物が揃う国として評判だ。彼らの信頼する行きつけの赤レンガ倉庫へと足を運ぶ。
ルナは入店早々その圧巻の品揃えに思わず『うわぁー』と声を上げた。
ここ、本当にアイテムが充実してるでしょ、と誇らしげにニコリとするレイ。
「スゴい数ですね~!これが全部魔法の力をサポートするアイテムなんですか……」
「うん、そう。でも本来サイキックを完全にこなせれば最強なんだ。何てったって精神をそのまま形にするのだから。
只それだけに完璧にこなすには神ほどの精神が必要」
「神ほどの精神……」
「でも人の精神なんて
「じゃあ、魔法は力を借りてくるって事?」
「そう。神はその力を魔や精霊という境地に与え、時に高め、破滅もさせて人類の成長を促した。
その力の根源へアクセスさせるスイッチ―――それが魔法さ。
で、それらをより確実に引き出す魔道具がこの店には充実してて、個人店では最大なんだ。更にマスタ―は凄い目利きなんだよ」
と、そこへ厳つい顔、筋肉質の荒くれ者風な武装男が現れた。
「いらっしゃい、おお、BROSか、元気だったか?
……ん? そこの子は?」
「あ、マスター! こちらはルーキーのルナちゃん」
「おぅ、随分と可愛らしいルーキーだな」
「こんにちは。スゴイ品揃えデスネ!」
厳つい店主も笑むと目が可愛い。
確かに剣だけで幾百もの品揃え。特設ブースに
「今日は何だい?」
「ええ、ジャミング対策に」
「なら、良い剣が入ってんぞ。ゆっくり見てきな」
「と、思って。じゃ、この子にも案内しますから勝手に見させて貰います」
そう言って通いなれた店内を回り始めるBROS。
物珍しそうにキョロキョロしてついて行くルナ。
すると魔法を阻止するジャミングマシンが展示されていた。 剣と魔法の世界をややこしくするゲームチェンジャーである。それは太くて大型の狙撃銃の様な形をしていた。
思わず足を止めるルナ……
案内しながら解説を始めるレイ。
「ジャミング装置は魔法のアクセスを妨害するノイズマシン。元々味方の軍が魔物から身を守るために開発し大量生産されて来た。
でも魔に取り込まれた者が横流しするせいで近頃は敵味方問わず濫用されてる」
「魔法使いには厄介なんですね一」
「でも一部の聖剣等は神や魔の精を直接宿す物があって、それを手にすれば直通だから殆ど邪魔できない。それが俺らのジャミング対策のひとつ」
「なるほどー、この剣なら邪魔されず凄いパワーで敵をなぎ倒せるのか、アニメとかで見た事あるな……
エクスなんとか――って叫んでた。やっぱ剣撃って人気あるもんな~」
どこを見て回っても弟・メイはルナとレイの間に嫉妬混じりの憮然とした表情で割り込んでくる。それを苦笑いで見守る店のマスター。
「でもまあ遠隔魔法に比べて攻撃範囲は狭いし、自分も敵の間合いに入ってリスキー。敵数が多いとメンドーだし、体力がものを言うからなるべくは避けたいね」
そこへ突如目に止まったひと山もある『それ』にルナの目がギラリと輝き釘付けに。ざっと百個以上は有ろうか。古真鍮色に鈍く光るそれはワゴンセールの様な雑な扱いだ。
「おお~! マスター、これはボクの大好きなヌンチャク?!」
「ああ……沢山有るでしょ、これは『かの伝説の勇者』が作り、使ったと言う武器。スゲーだろ」
早速手にするルナ。ズシッとくる金属製だ。
「《ロッドヌンチャク》 って言うんだ。
だけど全く人気が無いんだよね~、この店の
「えっ! なんで? そんなスゴい物なのに?」
「そりゃ当然だよ。どの地の伝説でもヌンチャクで戦った英雄の話しなんて聞いたことも無いでしょ。やっぱ剣は武人のロマンだからね!」
ま、オレも販売してやっと気付いたんだけどさ、と口先もスネたように尖っている。
「フ~ン、でもこの世界では伝説の勇者が使ったんでしょ? ボクはこっちがよっぽど……」
「ならお姉ちゃんに二束三文で売ってやるよ、どーせホコリ被ってるし」
「ええ?! ラッキー! ありがとう。でも何でそれ程の物が見向きもされないの?」
「だろ~っ、キミもそう思うよなぁ? オレもそう思って必死にかき集めたのよ、 何せ、あ・の! 伝説の! 勇者の使ってたプレミア付きだよ~?! なんで売れないのよっ!」
ムキになり近づいた店主の顔には血走る眼。
ツバも掛かりそうな勢いにのけ反りながらルナは苦笑しつつ
「……あの、ボクが聞いてるんデスガ……」
「おっと失礼、ついウラミ節が……理由はね、う~ん、一つには、誰も使いこなせなかったからかな。
その作者であり使ってた勇者は、何せ妖精界の天才的錬金術師にして天才魔道具師であり、更に天才戦士だったのだから。その秘めた力を人間じゃ引き出せなくてね」