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第15話 ルナ、魔法攻撃との共闘






 煉獄界での回想から我に返るルナ。


 街中は安全なため、買い出し中は護衛不要と言われ、しばらく気の赴くままに散策する。賑わう商店街を物珍しそうにキョロリと見回していると


「キャ――ッ引ったくり~っ! だれかぁ―――!」


 バッグを引ったくられ、奇声を上げて助けを呼ぶ女の子。その声にルナが即座に反応。


『ドシュンッッ!』


 音速移動して軽く首元へ手刀をトンッ。犯人を気絶させた。息を切らせてやって来る被害者。


「瞬間移動スゴッ! しかもメチャ可愛い魔女っ子。転生者さん? いや助かりましたぁ!」


「魔女っ子じゃなくて、鉄腕転生者のルナです! はい、このバッグ、無事でしたよ」


「フフ、鉄腕ってその可愛い顔で~ ?! 面白い人! ケドありがと、メッチャ助かりましたぁ。 今日は親の用で預かった大事な物を持ち歩いてたもので……何かお礼でも」


 タイミング良く『グ~』と鳴り、頬を赤らめお腹に手を当てテレ顔で誤魔化すルナ。


「ンフッ、カッワイイ~! ではあちらのお店で何かおごらせて下さい」


 そう言うその子自身も中々に美形の女子。こんな可愛い人からの食事の誘いに遠慮などする筈もないルナ。


 もちろんホイホイとついて行く。




   * *




 そして食事と共に会話も弾み、良い雰囲気に。


 意気投合した所でカラテ以外の不器用ぶりをこの異世界でもモロに発揮するポンコツぶり。

 話題にこと欠いて普段の特訓の話などを延々と捲し立てていた。


「フフフ、あなた可愛いのにトレーニングのムチャぶりとかの話、超楽しかった~!」


「ホ、ホント?! ボク、キミの事ス、スキかも。つ、付き合ってくれる?……」


「え?………それトモダチとして……ですよね?」


「それ以上という事で……どうかな……ボクなら絶対退屈させないつもり! そう、筋トレデートとか楽しいよ、あと一緒に海とかもどう? 足腰鍛えられてきっと最高だよ!」


「筋トレ? デート? どっちもチョット……あっそう私、このあと用があるのでまた今度ね」


「チョ、チョット待って! 思ってるのと違ってボクは今、男の子の筈……あ……」



 去りゆく女子を諦め、しょげつつ胸元を確認するが二つの山。男子化の様子はない。



「ってアレ ?! 女子のままだ……う~ん、これは何かの間違い? ボク、想いが溢れてたから相手の好みのジェンダーになれたハズなのに、あの子、女子好きだったのかな? で、ボクが強かったから男だと思ったとか? 」


 微妙に納得行かない様子だが、集合の時間になってしまい、



「ん~ま、そう言うことなら次ガンバるか~」



 買出しの終わった一行と合流するルナ。

 帰途に就いて再び護衛を開始する。すると、



『ドッゴォォ―――――――ン……』

「ん!」



 爆音と大地の揺れ――――


 買い出しからの帰途、国境付近で一行が丘へ上がりきる辺りで魔に取り込まれた千人程の反乱部隊が正規軍に奇襲し、一気に戦場化。


 退きながら応戦する正規軍。だが敵は勢いよく追ってくる。ルナは村人を護衛しながら要所に移すと、まずは危険をやり過ごすまで様子を伺う。



 しばらく留まっていると、更に上方の崖に人影が。


 軍の応援要請で駆けつけた転生者の姿。

 『レイ・メイ兄弟(BROS)』が全景を見渡すその高台から援護を開始。遠隔魔法で猛威を振う。



火焔幕ファイアーカーテン! 〉



 追い討ちをかけて来る最前線に忽然とオーロラ状のブ厚い炎の境界線を発生させ、軌道上の敵兵のほとんどが業火に巻かれ引き返す。それだけでほぼ追撃が止まる。加えて、



アシッド・レイン! 〉



 立て続けに強烈な酸を広範囲に雨のように降らし、濡れたところから溶けて火傷状になっていく敵兵。

 大騒ぎとなり一部は戦意喪失、必死に雨から逃げ惑う。そこへ更に


氷結フローズン! 〉


 それでも前線に特攻する敵兵の足先を氷結させ動きを奪う。迫る敵の前半部隊はこれ等でほぼ機能不全におちいる。

 それを見たルナはオオ~と唸ってその魔法の力に色めく。


「くっ、ジャミングがひでぇ~、メイ、居所を特定された! 場所を移すか!」


 ヒョコッ、と高速移動で兄弟の背後から、妨害されてるの? と顔を出したルナ。ならこっちもジャマしてくるよ、と

 ドシュンッ。




 踏みしめた地がえぐれてカッ飛ぶ。


「あっキミッ、魔法使いは今、無効化されちゃうよ!……ぁ行っちゃった……変な子!」



「 じゃ、行っくよーっ」

 フフフ!……この力試すのに最高の場面じゃん!

 二百倍速でソニックブーム! 戦闘機並みのスピードで突っ込めっ



 キ―――――ン…… ドゴオオオオォォ―――――ン!!



 残りの部隊へと爆跳、そのソニック衝撃波だけで大半を吹っ飛ばして失神。




 勢いに乗り、更に『千倍速』で乱舞。

 すると数百箇所に寸秒で現れて残党をぎ倒し、誰一人殺さぬ様に制圧。



 同時多発に見え消えする異様な光景。



 それは突き・蹴りの『寸止め風圧』だけでの衝撃波アタックによる鎮圧劇であった。


 敵勢には何が起こっているのかすら分からぬその速さは、端から見ていた者たちから見れば正しく『超絶早回しのタイムラプス動画』 そのもの


 全くの無抵抗な敵を呆気なく全員昏倒させ、『あれ……これで終わり?……』と拍子抜けするルナ。

 その魔法とは違う異様な活躍ぶりに正規軍や遠巻きに見ていたその場全ての民衆にも


「何だアレは!」


 と衝撃を与え、直ぐに『国境の珍事』として多方への噂のタネとなる。


 う~んこれってチート超人? やっぱ神の子? 本当にこの世界救えるかも!


「キ、キミッ!……物理フィジカル攻撃でこんなの見たことないよ!……近年は対魔法妨害機ジャミンググマシンが出てきてからとかく面倒でね。


 我々にも対抗策は有るけどそんな時はキミ、最適解だね! これからお互い協力し合えたらいいね。ぜひヨロシク!」


 レイ・メイBROS兄は純粋に物理攻撃の才能に興味深々で近寄ってきた。握手を交わすレイとルナ。


「俺はレイ。政府御用達の魔法戦士。と言っても専属じゃなくフリーでね。こちらはかわいがってる弟分のメイ。今後お見知りおきを。キミ転生者だよね」


「はい、ルナって言いマス。つい最近、転送出現型フォアード召喚で来ました。まだ知らないことばかりなので色々教えて下さいね~」


「オーケー! にしてもキミの物理フィジカル特化のそれ、本当に体は何ともないんだよね?」


「はい! 速さやパワーに比例して、なんか耐性・強度もアップするんです! じゃなきゃ自分がバラバラですよ。……それにしてもレイさん、スッゴくイケメンですねっ!」


 年の頃は25才位、ややキレ長つり目、笑顔の燦めく美麗な顔立ちの紳士的な好青年。


「……兄さんの手、そろそろ離してもらっていいですか」


「あ、すいません。弟さんですか? あなたもメッチャイケメン……でも似てないかも」


「義兄弟です! ボク、美少女に興味ないですから」


「ナハハ……美少女かはともかくボクもイケメンには別に……」


 ムッ……


 なびいてこない所もしゃくさわるメイ。取り持つ様に笑んでレイが割って入る。


「そう、明日、魔法妨害対策も兼ねて武器商へ行くけどルナちゃんも一緒にどうかな」



「えっ! たのしそ~っ、(サスガ剣と魔法の世界!)ぜひぜひオネガイしまぁ~すっ!」











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